異世界からのラブコール
「はぁ……、聞いてた話と違う……」
昨今、日本では高齢化が進み、介護施設の手も足りず、また経済的な面から介護施設に入れないような高齢者が増えている。
そこで、今はよくある《なんでも屋》が大流行りなようだ。介護施設のようにまとまった資金も必要なく、頼みたいことだけを安価で頼み、また頼みたいことがあればお金を払うというシステムだ。
それだけではない。ドアの建てつけが悪い、犬の散歩に行けないなど本当になんでもやるのがなんでも屋だ。
まあ、このへんの説明はいらないだろう。
そして、その需要はとてつもなく、今開業すれば大儲けと話を聞き、リストラされた退職金のほとんどをつぎ込み、開業してみたのだが……。
「……やっぱ、場所なのかな……」
俺は高齢者が多い方が儲かると思い、生まれ故郷の上八一色村に開業した。
たしかに需要はある。依頼が入り仕事に行くととても喜ばれてるが、いかんせん人口が少なすぎる。
1週間に1件、それも数千円ではとてもじゃないが食っていけない。
最低でも1日1件、月の半分は1日2件はないとローンも払えない。
なんとかしなくては…………。
リリリリリリリリ、リリリリリリリリ。
電話が鳴る。黒電話ではない。こう言う音に設定しているだけだ。
俺はスマホを握り電話に出る。
「はい、なんでも屋の斉藤です」
「もしもしぃ」
珍しく若い女の声だ。
この村に若い女なんていないはず。鈴木さんちに、都会から孫でも来たのだろうか。
「なんでも屋の斉藤さんですか?」
「はいー、なんでも屋の斉藤です」
「斉藤 仁さんですか?」
「……は?……、ええ、斉藤仁ですけど……」
おかしい。鈴木のばあさんは俺のフルネームなんて知らないはずだ。
……なら、吉岡さんとこか?あそこも大阪に親戚がいたっけ。
「斉藤仁さん、31歳。結婚歴なし、彼女なし。身長175cm、体重65kg。若くして大手商社をリストラされて、去年東京から上八一色村に引っ越し、なんでも屋を開業した斉藤仁さんですか?」
「……」
なんだ?普通じゃない。俺のことを調べ上げてる?
「……あんた、誰だ」
「あはっ、そんな警戒しないで下さいよ。お仕事を頼みたくてお電話したんですから」
「……うちは違法な仕事はしねえぞ」
怪しさマックスだ。確かに仕事には飢えている。だが、こんな普通じゃないやつの依頼なんてのは絶対合法なわけがない。そう言うなんでも屋じゃねーから。
「もっちろん違法なことではないですよ?それに報酬は出来高制です。頑張り次第では数百万円にもなるかもしれませんよ?」
「はあ?!」
そんな仕事あるわけない。
「……なるほど詐欺か。悪いがこんな詐欺に引っかかるほど耄碌は────」
「あはははははは!貯金なし、担保に入れられるほどの資産もなし、両親も既に他界してる人を詐欺して、こっちになんのメリットがあるんですか。そう言うのはお金を持ってる人が心配してくださいよっ!」
「……」
確かにそうだ。払えるものは何もない。ここの土地を買ったが、わざわざ俺を詐欺に嵌めてまで奪うほどの土地価値はない。
「詳しいことは今は言えません。こちらに来てもらえたら説明しますので一度来てもらえませんか?」
「……怪しすぎるだろ」
「確かに怪しすぎますね。でもお金に困ってて、仕事も欲しい。しかも違法なことでもない。斉藤さんからしたら、飛びつきたい内容じゃないんですか?」
「…………」
飛びつきたい。数百万円?99.99%詐欺だと思うのに、思考を鈍らせるほど魅力的な響きだ。
それにすぐにでも金が欲しいのも事実。もう、ローンの返済期日まであと1週間しかない。
『万が一、本当だったら……』
この言葉が頭から離れない。
「とりあえずメールでこちらの地図を送ります。ちょっと辺鄙なところで怪しく思えますけど、本当にそこにありますから。もしお話だけでも聞いてもらえるなら、明日の午前9時にこちらに来てください。それでは」
「あっ!」
電話が切れた。
そしてすぐにメールで地図が送られてきた。




