歴史に名を残す者 後
「聖徳太子には、全てを分かる、という能力があります。」
聖徳太子は、それ故に、歴史に名を残す者の総代である。
「ですが、私には、聖徳太子が干渉できない空間を作ることができます。」
それは、それで、すごい能力である。
「聖徳太子は、全ての歴史に名を残す者に監視を付けているでしょう。」
聖徳太子は、用心深く、思慮深い。
「今の聖徳太子には、全員がお見舞いに来ている様にしか見えていない。」
既に、紫式部の能力で、
「今、私たちは現実世界とは別の異世界にいます。」
異世界空間の中にいるという。
「ここは、源氏物語の世界です。」
紫式部の歌の世界である。
「病室に入った時点で、みなさんに異物がついていないか確認済みです。」
体内に聖徳太子の息の掛かった異物は無いことはスキャン済みである。
「もうついていけません!?」
卑弥呼は、パニクリ、
「すごい~♪」
源頼朝は、感激し、
「俺の戦いは何だったの?」
ヤマトタケルは、すねてしまい、
「zzz。」
藤原くんは、グッスリ眠っている。
「私は知ってましたよ~♪」
清少納言は、共犯者である。
「どうして、こんな手の込んだことを?」
ヤマトタケルは、率直に尋ねる。
「それは、」
紫式部は、一瞬、躊躇するが、
「生き方の問題です。」
紫式部は正直な心で冷たく言葉を出すが、本心である。
「恐らく、私たちを呼びだしたのは、」
話の本題に入る。
「陰陽師か、霊媒師。」
呼び出したであろう者を告げる。
「霊力の強い高僧ということも考えられる。」
日本なので。ズドン! それを聞いた、他の者はドキッとする。
「一部に強力な戦国武将、武田や上杉という者もいるが、」
いつの時代も武田・上杉は強かった。
「言霊など、扱うことができない。」
紫式部は、戦国武将の仕業ではないと言う。
「何者が我々を甦らせ、どういう方法を用いらせたのかは、わからない。」
死者を魂を現世に呼び戻した者・方法は、まだ未定であった。
「だが、甦った足利尊氏が、京で殿の護衛についていることから・・・。」
歴史に名を残す者の6人目、足利尊氏である。
「殿は、足利家だろう。」
遂に殿の名が宣言される。
「足利家というと、室町幕府の足利家か?」
意外に、ヤマトタケルは博識だった。
「そうだ。」
紫式部は、殿については認める。
「各地の戦国武将に攻められ、脅され、弱っていたのだろう。」
室町幕府は、滅亡寸前であった。
「そこを誰かに付け込まれ、そそのかされた。」
紫式部の推理・推測は、
「どうして、そんなことが分かるんです?」
源頼朝は、質問する。
「そんなことも分からないのか?」
紫式部は、源頼朝を冷たい目でさげすむ様に見る。
「バカ! 答えのない質問をするな!」
ヤマトタケルが次の展開を察知して止めるが、
「あほう。」
遅かった。グサ。
「ギャア!」
全員の心に冷たい棘が刺さり、熱を奪っていく。
「私の結論は外れない。」
紫式部の推理力は、推理を超えた思考であり、結論を導き出す。
「所詮、言霊の私たちは、その霊媒師に逆らうことはできない。」
所詮は、歴史に名を残す者は霊なのである。
「洗脳ちょんまげを作って、各地の大名を処分していく。」
特に卑弥呼と藤原道長が担当している。
「それが殿を介して、今、我々に出ている、霊媒師の命令だ。」
黒幕の正体は、まだ不明である。
「バカバカしいと思わないか!?」
紫式部の問いかけに、
「おもちゃ遊び楽しいよ~♪」
卑弥呼が笑顔で無邪気に言うと、
「あほう、あほう、あほう。」
紫式部の冷たい棘が、グサ! グサ! グサ!
「うわぁ!?」
卑弥呼の心に刺さりまくる。
「我々、歴史に名を残す者は、過去の偉業を称えられている存在だぞ!」
紫式部は、プライドが高いようだ。
「それなのに、どこの馬の骨かも分からない者に、好きに扱われるんだぞ!」
馬の骨は、霊媒師のことを指す。
「私には、我慢できない!」
紫式部のプライドが許さない。
「おまえたちも、自分の意志で、自由に生きたいと思わないか?」
紫式部の願いはここにある。
「おもちゃで遊びたい。」
卑弥呼の希望、
「僕は、気楽に生きたいな~♪」
源頼朝の希望、
「俺は、強い奴と戦いたい。」
ヤマトタケルの希望。
「紫式部さまと、ずっと一緒にいたいです~♪」
清少納言はの希望、
「zzz。」
藤原くんは、まだ寝ている。
「例え、霊であっても、誰だって望みはあるのだ。」
紫式部は、落ち着きを取り戻し言う。
「私の結論だが、9人もの歴史に名を残す者を拘束することは不可能。」
歴史に名を残す者は、全員で9人いる。
「おそらく、何らかの方法、何らかの道具を使っているはず。」
死者を甦らせる、方法と道具があると言う。
「それさえ分かり何とかすれば、霊媒師の思い通りに動かなくて良くなる。」
紫式部は、自由になるための方法を言う。
「もしかしたら、現世に肉体を伴って、生き返ることも可能かもしれない。」
霊だけの歴史に名を残す者が、自分の肉体を伴って生き返ることができると言う。ドキン。生き返ると聞いて、歴史に名を残す者たちの顔色が前向きに変わる。
「私の結論は外れない。」
紫式部は、冷たいが視線を他の歴史に名を残す者と見つめ合う。
「話は分かったが、俺たちなんぞに話をしてよかったのか?」
ヤマトタケルは、
「僕!?」
愉快な傍観者の源頼朝の方を目を細めながら見る。
「大丈夫。平家と源氏は、私には、歯向かうことはできない。」
紫式部は、自分の外れることのない結論に自信を持っている。
「僕は、そんなに口は軽くありませんよ~だ~♪」
源頼朝は言うが、ジーッ。全員の冷たい目線が、源頼朝が信頼されてないことをものがたっている。
「卑弥呼も、脅されたら口を割るぜ。」
ヤマトタケルは、次におもちゃ大好きドジっ子の心配をする。
「僕は、知りません! 見てません! 無関係です!」
卑弥呼は、必死に抵抗するが、
「それも大丈夫。卑弥呼の心に何重にもカバーをつけた。」
紫式部は、結論だけを言っていく。
「ふう~、よかった。」
卑弥呼は、息を吹き安心する。
「すごいね~、じゃあ俺には?」
ヤマトタケルは、自分にも何かしたのかと聞いている。
「おまえには何もしていない。」
紫式部は、
「清少納言にも勝てる者に、何の細工もいらないだろ。」
冷たい空気をかもしながらも、信頼していると言っている。
「あ~ああ、紫式部さまには敵いません。」
ヤマトタケルは、完全に戦意を喪失した。
「で、俺は何をすればいい?」
ふざけた顔から、真面目な顔になる。
「今は特にありません。目立たないでいてください。」
紫式部は、外れない結論だけをいうので冷たく感じる。
「それだけ?」
ヤマトタケルは、面白くなると思ったのに、意外だった。
「壇ノ浦に平清盛を迎えに行って来る。」
もちろん、清少納言も一緒である。
「私が帰ってくるまで、動くな。」
紫式部は、クーデターがバレるのを心配している。
「へい、へい、分かりました。」
ひょうひょうと従うという素振りをしているが、
(悪いが、俺は待つのが嫌いでね。黒幕の正体を探ってやる。)
ヤマトタケルは、野心と探求心に燃えていた。
「黒幕の正体を暴いてやる!」
ヤマトタケルは、怪しそうな京の屋敷に忍び込んだ。
「とはいうモノの、当ては無いのよね。」
夜遅く月と星と庭の篝火が照らすだけである。ピカーン。その時、ヤマトタケルの草薙の剣こと天叢雲剣が輝いた。
「俺を導いてくれるのか?」
剣先から光が出て、光の方へ進めと言っているみたいだ。
「行ってみるか。」
ヤマトタケルは、剣が光指す方向へ進むことにした。
「なんだ? 地下室か?」
光りに導かれ、屋敷の中心にある地下室を見つける。
「おもしろくなってきたな~♪」
階段を降りて、地下室に向かう。
「明るくなってきた。」
地下室には祭壇があり、火が焚いてあり明るかった。
「あれは!?」
ヤマトタケルは、見てしまった。
「八尺瓊勾玉と八咫鏡!?」
自分の持つ天叢雲剣と共に、八尺瓊勾玉と八咫鏡を併せて、三種の神器という。
「どうして、こんなところに・・・。」
ヤマトタケルは、思わず揃ってしまった神器の謎に、ただただ驚くのであった。
ピカーン。
天叢雲剣、八尺瓊勾玉、八咫鏡の3種の神器が神々しく輝きだした。
「共鳴しているのか?」
ヤマトタケルは、3種の神器が揃った所を見て、興奮しているのと、怖さも感じている。動こうとしても動けないのである。
「見たな。」
そこに、2人の男が現れる。
「おまえは、足利尊氏!」
歴史に名を残す者、未登場の最後の6番目、足利尊氏が現れた。
「それと・・・誰だ? その陰陽師のおっさんは?」
(なんだ!? このマガマガしい妖気は!? )
その横に、陰陽師らしき人の形をした男がいる。その男を見ているヤマトタケルの頬に冷や汗が流れてくる。
「貴様、布瑠の言を調べにきたな?」
「布瑠の言?」
布瑠の言とは、死者蘇生の言霊といわれる。
「そういうことか、こいつは、いいことを聞かせてもらったぜ!」
(なんとか、このことを、他の連中にも知らせないとな・・・)
「足利尊氏! ヤマトタケルを生かして返すな!」
「はは!」
京の空に暗雲が立ち込めた。
つづく。




