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呪いとアホと呼び出しと

 ミカの呪いの魔法の威力はなかなかだった。足を遅くする呪いに、眠たくなる呪い、笑うしかできない呪いなど様々だ。俺の癒しの魔法もそれに応じてレベルアップしていく。

 ミカは5歳児の中ではかなり別嬪さんなのだ。いや断じてロリコンではない。俺は光源氏になるつもりはない。だがこの子を笑顔にしてあげたいなぁというのはある。

 呪いという魔法のなかでも必要のない悪意にさらされる環境は前世のアニオタ、声豚の自分をいやでも思い出させてしまう。だから俺と一緒にいるときは笑顔でいさせてあげたいのだ。


 ロリコンじゃありません。断じてありません。


 だいたい2年くらいはミカとほぼ毎日のように遊んだ。ミヨーという街はもともと商業や海運で発達した地域でもあり、新興地域でもあるので、子供の数が少ない。同い年は町の中でもミカだけであった。すると二人の仲が親密になるのは理である。毎日のように会い、毎日のようにア遊ぶ。時にはイリナや神父様に一緒に叱られ、時には一緒に誉められる。その結果は……

「ジュンジュン、何ぼぉーとしてるの?」

「ああ、ミカか、いや本来あるべき未来を想像しててね」

「何よそれ? おいしいの?」

 ミカはまだ人見知りはするものの、かなり明るくなった。ただラブコメが発生する要素はない。だってアホの子だから。

 たとえば、魔法有のかくれんぼをしてる時に隠れている間になぜ隠れているのか忘れ、家に帰宅しちゃったり(なお、その時俺は必死に探し回った)、俺が癒しの魔法を使えるからと言って、笑顔でハチの巣に特攻したり(必死に癒しの魔法をかけました)など、とても女の子とは思えないアクティブさを発揮。完全に内弁慶ミカ状態である。まぁ7歳だから恋愛感情が湧かないのもあるのだろうが、さすがにこれはひどい。


 そんなアホの子ミカが覚醒しつつある春直前に、俺はアホの子の父神父様にお呼ばれしていた。

「ジュンくん、いらっしゃい」

「お邪魔します、神父様」

 きちんと一礼してから教会に入る。神父は教会の奥の部屋に住んでいるため、必然的に御呼ばれは教会となり、そこまで大した感覚ではないのだ。ゆえ、そこまで気にせずに中に入る。

前世なら女の子の父親ってだけで震えが走ったものだが、最近はなれたものだ。自分の進化が誇らしい。


「さて、ジュンくん。今日呼んだのはお話があるからなんだ」

 はて、お話とは何だろうか。俺はそこまで悪さをした覚えはないし、神父様を怒らせた記憶もない。もしや、これは許婚の話…… 俺にも春が…… って相手はミカになっちゃうから拒否だな

「ああ、気にしなくとも許嫁の話ではないぞ」

 完全に想像が表情にダダ漏れだったようだ。

「そろそろジュンくんもミカも7歳になる。7歳になるとミヨーでは無理だが、ここから北の町であるナガラという都市の学校に通うことができる。全寮制の由緒正しき学校だ。私はミカをそこに行かせようと思うのだが、君も行くかい?」

「学校ですか?」

 俺もこの世に学校が存在していることは知っていたし、そこでは礼儀作法から冒険者用の戦闘訓練まで様々なことが行われることも知っていた。だがミヨーにはそんな学校がある雰囲気でもなかったので諦めてはいたのだ。一応、前世でもそれなりの大学には通ったし、悪い思い出ばかりではない。行ってみたいのは山々だが、こればっかりは自分の一存だけでは厳しいだろう。

「母や父に聴いてみませんと……」

 とりあえず母や父の意見を聞かねば。ダイナとシャニーを本当の父母だと考えるようになった俺からしたら当然の判断だ。

「そうじゃろうと思って、すでにジュンくんの両親からは許可をもらったぞ」

「そうなんですか?」

「そうともさ、学費に関してもナガラの学校は割安だからの、ダイナもぜひ通わせたいと言っておった。もちろんジュンくん自身の判断が第一だがの」

 俺はこういう時はやはり商人でそれなりに稼ぎのあるダイナに感謝しないわけにはいかない。彼は確かにバカップルで親ばかだから子供としては恥ずかしい限りなのだが、親としての責務を精いっぱい果たそうとしている。帰ったら、感謝の言葉を言わなければ……

「それなら、行ってみたいです」

「きまりじゃな」

 神父様は隠れて見守っていたミカの方を向いて何かしたようだ。ミカは赤い顔をして奥の部屋に走っていった。何したんだろう……


「出発ってのはいつころでしょう?」

「だいたい2週間先かの、ナガラ来る交易商人であるボアラの帰りの馬車に同乗させてもらえるよう頼んでいる。ジュンくんはひと通りの衣服とかをカバンに詰め込んでおけばよいと思うぞ」

2週間あればいろんなところに伝えてお話しする時間もあるな。といってもそんなにしゃべる相手がいるわけではないけども。


「それじゃひとまずはお話おわりじゃ、ミカは奥にいるし、時間もちょっと遅くなっておる。早く帰るといい」

「はい、ありがとうございました」

俺は神父様に向かってまた一礼すると教会を出た。心の中ではワクワクを堪えながらであったので、出口の階段でこけてしまったことを記しておこう。

ありがとうございました

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