商人と移動と腰痛と
2週間と言うのは存外短いものだと感じた。
まず近所のおばちゃん達に学校に行くためにミヨーを出ることを伝えると、涙ながらに身の危険について諭され、そして大量の食糧を持たされた。なお、向こうでは全寮制だし、道中も1泊しか野宿しないので、それらは家で消費されることとなった。
またシャニーは学校できるための服や、身の回りの小物、そしてお守りを買ってくれた。
「このお守りは身内安全を祈るものなの、これを肌身離さず身につけておきなさい」
「はい、お母様、一生大事にします」
「もう…… ジュンったら、いつのまにか立派になって……」
「シャニー、別に一生の別れではないんだ、だから……な、泣くなッ」
なおシャニーとダイナではダイナの方がわんさか泣いています。昔泣き虫小僧と虐められていた話も旅立ち前日に言われた。このでせいでいじめに対する恐怖が出てきたので、とりあえずダイナを許さない。
ナガラまでの旅路は俺とミカ、商人のボアラさん、そしてボアラさんが雇っている護衛を兼ねた冒険者の4人組の計7人の集団だった。馬車は2つあるのでさほど狭さを感じたりはしていない。
「改めましてはじめまして。私がボアラ・マックスです。普段はナガラに集まった嗜好品をミヨーまで運んでいます」
ボアラさんは非常に丁寧な方であるようで、神父と別れた後すぐに自己紹介を改めてしてくれた。口調も丁寧でにこやかで非常に好感が持てる。
「はじめまして、ジュン・グリーンウェルズです」
「……ミカです」
ミカはやはり内弁慶だ。シャイガールへと変身していやがる。その状態が持続するならかわいいのだが……
「ミカさんの音尾様の神父様とは仲良くさせていただいております」
そんなミカに対してもボアラさんは親切なようだ。
ちなみに、この間冒険者らはしゃべっていない。周りに対して常に気を配っているようだ。
ボアラさんいわく、冒険者というものは、害獣を倒したり、戦争に参加して貢献したりするのが目立ちすぎてるとのこと。普通の冒険者は商隊の護衛などが精いっぱいの実力でしかなく、活躍できるのはごくごくわずかな冒険者だけらしい。今雇っている冒険者はボアラがいつも移動の際に護衛をお願いしている冒険者チームであるらしい。
書庫で読んだ冒険譚に心惹かれていた元中二病患者の俺にとっても耳の痛い話、前世でも今瀬でもどうやら現実は甘くないようだ。
さて、馬車の移動は快適か、と問われれば、それは否である、と答えざるを得ない。
「イテテテ……」
「ジュンジュン、大丈夫?」
「ジュンくん、大丈夫ですか?」
絶賛腰痛発症中である。
馬車の中で移動しながら眠っていたのだが、床は木製ゆえの堅さ、そして移動中ゆえの揺れで俺の背骨が悲鳴を上げてしまったのだ。ここまで身体が弱いとは。
なお、ミカも寝ていたはずなのだが何ともないらしい。さすがラスボスの娘。恐るべし。
「今日はここで野宿にしましょうか」
ボアラは、そんな俺の状態を慮ってか、予定より早い地点で休憩を入れてくれた。
「ありがとうございます、ボアラさん」
「いいんですよ、ジュンくんは子供なんですし、急ぎでもないですし」
ボアラは笑顔で俺の言葉に答えてくれる。本当にいい人で良かった。ラスボスの影におびえているとか出ないと信じたいなぁ……
初めての野宿はボアラさんが気を使ってくれて、たくさんのお話をしてくれた。
カフカス王国の王様の話、建国秘話や伝説、神話。また自分がどうして神父様と知り合ったかなどである。建国秘話や伝説に関しては書庫に本があるためたいていは知っていたが、やはり個人的なつながりに関する話という物は興味深いものである。前世でも大学の先輩で、自分と周りとの関係を面白おかしくお話してくれた人がいたのも思い出し、何となくノスタルジーを感じた。
なお、失礼なことにミカはうとうとしてました。アホの子はどうやら人の話を聞くのが苦手らしい。本当に神父様の娘だろうか。
ありがとうございました




