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練習と夢と感覚と

それからの俺はハードな生活をこなすこととなる。

朝起きてルームメイトのエルと食事をする。

その時は必ず「エルくんってやっぱり素敵ね」っていう視線を浴びまくっていたたまれなくなる。

その後、たいていは礼儀の授業があり、優等生な俺は劣等生なミカに対して、先生が板書して示した礼儀作法について、簡単な言葉で解説、補足しミカと一緒に授業を乗り切る。

ちなみに、神父の娘であっても、礼儀知らずな子は意外と多いようで、ミカ以外にも同じクラスに先生から「○○神父の娘として恥ずかしくないの!!」という、前世ではハラスメント扱いの言葉攻めを受けていた。

字を書く練習の時は、プラハなどと一緒に図書館で本を読み漁る。科学系統が一切と言ってもいいほど発達していないが、錬金術などが存在しないのは一致しており、鉱物の取り扱いなどは前世とそこまで変わらないことが分かった。特に、製鉄の過程は高校の授業通りの方法で、むしろ俺の方が少し詳しいくらいだ。

この世界に化学式の概念を広めたら、俺は偉大な科学者になれるかもしれない。

体育の授業では期末に行われる学年別競技の練習が始まった。

俺は学年対抗リレーである。前世では足がそこまで速くなかったが、この世界に転生してから野山で遊ぶことが多かった…… いや、他に娯楽が無かったため、駆け回る機会が多くあり、また深夜の校長との特訓で、空気の扱いになれたこともあって、かなり空気抵抗を減らして走ることができたから、相当に足が速かった。それは同年代ならもちろん、この学校のほとんどの人に勝つことができる速さになる。

唯一勝てないのはこの体育の先生である。

「おれだって、昔は陸上競技の選手だったからな」という先生の足の筋肉は無駄なものではなかったらしい。リバースして本当に申し訳ない。

体育以外にも普通の教養科目が存在するが、その辺は校長が前世の記憶を持つということで気を利かせてくれたのか、基本的に参加は自由だった。頭の弱いミカなどは露骨の悔しがっていたが、まぁ俺が優秀なのは知っていたのだろう、とぼとぼと教室へ歩いていくのだった。

なおミカはなぜかプラハの隣で授業を受けていることが多いようだった。彼は基本的に生物系統の理科が得意科目のようで、理科系が壊滅的なミカのサポートにはうってつけであったからだろうと俺は推測している。

きっとそれ以上はない……


さて一日のメインは寝てからやってくる。だいたい睡魔に誘われて2時間後くらいにいつも校長は夢の中にあらわれて、強制的に見ている夢を上書きしてくる。

「さてさて、今日も楽しく練習といこうかの」

「はい、よろしくお願いします。校長先生」

「うむ、良い返事じゃ」

「返事だけ、ですかね」

最近の俺は自信喪失気味。全然うまくいかないのだ。

「なに、心配するでない。普通の人間はまず魔法が使えないし、魔法が使える人の中でも、相手の妨害ができる奴は少ない。それ以上に相手の妨害を妨害することのできる人は少ないのじゃ」

「それってこの世にいるんですかね……」

「わしとか? かの」

まじで語尾に草が生えそうな勢いでそう言われましても、反応できないですよ校長……

時々校長はお茶目なことをするのだが、一生徒、しかも7歳児に何を求めているのか、さっぱりと分からない。

まぁ考えても仕方のないことだ。俺は諦めて空気中に足場を作り、その上に乗る。

「じゃあ妨害を始めるから、耐えてみせるのじゃな」

そういうと校長は俺の足場に魔力を送り始める。

最初の内は魔力が送られているという感覚しか分からなかったが、最近は近くに自分の魔力を置くことで、相手の魔力の位置をつかめるようになった。

しかし、相手の魔力の路が分かったとしても、それを邪魔する算段が建てられない。

邪魔するための魔法を使用しようにも、それも邪魔されてうまく構築できない。

「こう魔法を作り出す時に校長の魔力が勝手に入り込むような気がするんですよね」

「そうか…… それはよい感覚をしておると思うぞ」

「え? そうなんですか?」

「そうじゃ、確かにわしはさっき君の妨害魔法を妨害するための魔法に自分の魔力をもぐりこませることでその威力を低減させるように仕組もうとしたの」

そう言うと笑う校長。

となると、校長は時と場合によって、その妨害の方法を変えているということなのかな…… 何それ難易度高くね?

基礎問題の前に演習問題しているようなものだよね? これがこの世界流なんですかね……

「さて、もう一度頑張ってみようか」

「はい、校長先生」

このやり取りもここ最近で毎日のように繰り返している。正直、校長の「こ」の字すら見たくない…… 

「思念が揺れておるぞ、すぐに妨害されてしまう」

「すいません……」

「疲れておるのかのう…… 明日は少し休憩かねて別のことをしようか」

「別のこと……ですか?」

別段、尊敬していないわけではないのだが、あんまりいい思い出が無いのも事実なのである。

「大丈夫じゃ、大変なことにもならん、はずじゃ」

「不安しか感じないのですが……」

「若いのじゃから気にするでない」

「え、それって……」

「もうわしは眠い。おやすみ」

そう言うと、校長はまたもや夢をかき消すように消えていく。

俺もまた「ああ、こうやって眠ってしまうのね……」と感じながら安眠落ち着くのであった。


ありがとうございます

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