第十四章 査問の日(時間庁)
査問の朝。時間庁の石の階段は冷たく、天井は高い。雪巴は手引きの薄冊子と、板の写し(中断・再作業・事前相談)を持って入った。机の向こうに、灰色の帽子の監督官が三人。書記が紙を配り、十の質問が読み上げられる。
「第一、三分会議の定義」
「止めない三分=点検三分。目と耳だけを使い、一行で記す。次の一手を一つ決めます」
「第二、停止条件と権限」
「赤いもどる矢印の地点で一時退避。合図は誰でも出せます。危険は最優先」
「第三、数字の扱い」
「午前・午後で板に○△×を付け、日ごとに写しを提出。事前相談は増えれば○、中断と再作業は減れば○です」
「第四、掲示物の寸法と時間」「第五、訓練方法」「第六、苦情の窓口」――雪巴は手引きの該当頁を開き、短く示す。
監督官の一人が言った。「第七、三分が作業を遅らせる恐れは?」
「遅く見えても、やり直しが減るぶん全体が速くなります。数字はここに」雪巴は写しを示す。〈中断 17→13/再作業 10%→8%/事前相談 15→19〉。
「第八、色砂は?」
「使いません。呼吸で三分を取ります」
「第九、事故時の扱い」
「点検三分を飛ばし、即時停止。責任者が記録します」
「第十、私的利用の防止」
「日誌と板を併記し、誰でも見える所に」
しばらくの沈黙のあと、判が押された。「暫定許可。二週間の査察を経て、申請を更新する」
さらに、別の紙にも判が打たれた。監督官が短く告げる。「本日付で、ルクスナ綴じ工の見習いとして登録する。工人名簿に記載、工人証を交付する」 書記が薄い板札を差し出した。小さく金の縁取りがあり、所属と名前が刻まれている。雪巴は深く礼をして受け取った。胸の奥で、長い夜が少しほどけた。
庁舎を出ると、風が白く冷たい。雪巴はノートに一行で書く。〈問われても、答えは短く。数字と一行で道は開く〉。
・査問の日……時間庁で質問に答える場。数字と手順で説明する。
・暫定許可……条件つきで実行を続けられる許可。二週間の査察つき。
・見習い登録/工人証……公的に職人として認められた証しの札。




