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第0話
地方都市の片隅に住む主婦のスマホが、着信を知らせる。登録されていない番号からだった。
普段なら取らないそれを取ったのは、嫌な予感があったからだ。
友人の強い勧めでオカルト研究部に入部した息子――どちらかと言えば暗い性格で、これまで部活など入ったことがなかった――が部員とハイキングに行くと怠そうに家を出て、まだ帰っていないのだ。
相手は警察官だと言って名乗ってから、電話した経緯を話し始める。
少し突飛な内容――遭難者と思しき人物を助けたら、地図にない集落が発見されたというもの――であまり理解はできなかった。
呆然とした頭で、息子や一緒に出掛けた部員の無事を確認して電話を切った。
後にその一件は新聞に載ったが、主婦はその記事を敢えて読まなかった。情報番組でも取り上げられるが、そうするとチャンネルを変える。
ふと時計を見ると、短針が七を指している。ケトルのスイッチを入れたタイミングで、二階からドアが閉まる音が聞こえた。
おおよそいつも通りの時間に、リビングのドアが開く。現れた相手にいつも通り微笑むと、朝の挨拶をした。




