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Who is witch?  作者: 鈴乃屋
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プロローグ

プロローグ

どんよりとした曇り空の下。古びた教会の一室に、2人の男女が居た。女はまだ若干の幼さを残しており、修道服の裾を必死に握り締め、ベッドに横たわる1人の老人を見ていた。老人は穏やかな笑顔で女の方を見ていた。


「……泣くな……ソフィー」

「だって……だって……」


ソフィーと呼ばれた女は、頬に滴る涙を拭っていた。


「神父様が居なくなったら……私は……また、独りぼっちに……」

「本当に済まない……君を独りにさせるのはとても辛い……そうだ……」


ベッドに横たわる神父は、ゆっくりと体を起こした。ソフィーは体を支えようとしたが、その手は神父によって遮られた。神父は立ち上がり、本棚から1冊の分厚い本を取り出した。埃を被っている様で、ページを開く度に埃が舞う。


「それは……?」

「ソフィーにいつか渡そうと思っていた本だ。これをずっと持っていなさい」

「これを……?って重っ」

「かなり分厚いからな?気を付けて持つんだよ」


神父は、幼子をあやす様にゆっくりと話す。その言葉を聞くだけで、ソフィーの心は落ち着いていく。


「ゲボッ!ゲボッ!」

「神父様!?」


ソフィーが手を差し出そうとしたのを、神父はやんわりと窘めた。


「な……んで……」

「もう、私の命は尽きる……こんな老いぼれの元にいるよりも、早く此処を出て行きなさい……」

「っ!!そんなの絶対に嫌です!せめて……せめて貴方の死ぬ時まで、ここに居させて下さい……」


ソフィーの必死の願いに耳を傾けていた神父は、何も言わずただソフィーの頭を撫でた。


「私は、幸せ者だ……こんな私を慕っている者がいるとはね……ありがとう」

「……?神父?お願い!目を覚まして!」


だんだんと冷たくなっていく神父の体を抱きしめ、必死に叫ぶソフィーの声をかき消すかの様に、外には雨が降り注いだ。













「辰……?何やってるの?」

「……彩織か。大した事は無い、次の仕事の調べだ」

「そっか……無理しないでね」


とある雑居ビルの一室、事務所らしき部屋で2人の男女が向かい合って座っていた。1人は明らかに未成年の少女で、もう1人はヤクザ風の男がサングラスを弄っていた。


「今度の仕事も、大変そうだな……」

「そんなに?いつも簡単にこなしてるのに?」

「そう見えているだけだ。俺はいつも苦労している」

「ふーん……前から思ってたんだけど」


彩織は立ち上がると、本棚から1冊の分厚い本を取り出した。古い本の様で、彩織はそれを軽々と持ち上げ、辰の前に置いた。


「この本、一体何なの?持っとけって言われてるけど、何が書いてあるの?良く分からない言語で書かれてるし……読めるの?」


彩織は次々と質問を投げつけ、辰はそれをじっと聴いていた。


「……まだ、教えてなかったな。読み方も、意味も」

「え……?」


辰は立ち上がり、本を持つとページを幾つか捲った。そして閉じると、彩織に渡した。


「これは決して人に渡してはならない。揶揄すれば、これは破滅を呼ぶ書だ」

「は、破滅って……自分自身が?」

「軽ければそれで済むが、1歩使い方を間違えれば、世界すらも滅ぼす」

「せ、世界!?そんな大袈裟な……」

「俺が大袈裟な事を言った事があるか?」

「……」

「これはマジの話だ。あいつらも薄々知っている」

「……じゃあ何で、私には言ってくれなかったの?同じ仕事仲間じゃない!」

「お前をこれ以上裏の世界に足突っ込ませる訳にはいかねぇ」

「私は平気よ!充分私だってやれるわよ」

「これは生半可な気持ちじゃ、危険だ。でも……もう隠し切る事は出来ない……」

「何よ……どういう事なの……」


彩織は、辰に掴みかかろうとしたが、辰の悲痛な顔を見て言葉を失った。


「すまねぇ……」


辰の微かな声がした。

















「こっちに行ったぞ!追えー!」

「決して逃すな!あの本を取り返せ!」


男達の大声が居住地区の辺り一体に響く。その路地裏を1人の青年が走っていた。


「はぁ……はぁ……くそっ!一体何時になったら諦めてくれるんだ!」


青年は、腕に抱き抱えた分厚い本を見つめながら息を整えた。


「そこまでだ、李亂」


後ろから男の声がし、振り返るとそこにはスーツを着こなした男が立っていた。後ろには武器を持った男が数人。


「李亂、早くその本を渡せ。今なら許してやっても良い」

「……ここまで来てみすみす渡すとでも?それに、渡した瞬間僕は殺されるでしょう?後ろの狂信者共に」

「口が悪いぞ、こんな悪ガキに育てた覚えはないぞ」

「あんたに育てられた覚えもありませんが」

「生意気な口聞きやがって……もう良い、殺せ」

「良いの?ボスから言われてるんでしょう?殺すなって」

「偽装なんていくらでも可能だ。例えば……」


男は持っていた銃を李亂に向けた。それに倣うように、後ろの男達も李亂に武器を向けた。


「敵グループの抗争に巻き込まれ、流れ弾に当たって死亡……他にも色んなシナリオがある」

「……卑怯者」

「かははははぁ!卑怯者?そんな言葉がこの居住地区で通用すると思うか?!お前こそ同じ穴のムジナだろ?さぁ!殺せ!惨めったらしくなぁ!?」


ここまでか……李亂がそう思った時だった。


「どいて下さる?私の目の前に立たないでちょうだい」


伸びやかな女の声がしたと思った瞬間、銃声が辺りに響き渡った。男達は呻き声を上げる暇無く、倒れ込んでいった。そして、李亂と女だけが残った。


「貴女は……?」

「取引しましょう?貴方を保護して上げましょう。その代わり、貴方にやってもらいたい仕事があるんです」

「仕事……?」

「その本で、世界をめちゃくちゃにして欲しいんです」

「えっ……」


李亂が見た女の顔は、とても清々しい笑顔だった。















とある教会のお御堂に、2人の男が居た。1人はボロボロの布を纏い、もう1人は聖職者の様な格好をしていた。


「貴様が盗んだのか……この本を」

「結構良い本だったから、金になると思って……つーか、階段に置いてあるのが悪いんだ!怒られるなんて理不尽だ!俺は悪くない!」

「言い訳は聞かん。この俺の所有物を盗んだ罪は重いぞ。罪は貴様の命で償って貰おう」

「この野郎……」


ボロボロの布を纏った少年は、唇を噛み締めて怒りを必死に抑えていた。一方聖職者の男は、余裕の笑みを浮かべながら、少年に銃を向けた。


「さぁ!貴様をこの俺が断罪してやろう!恨むなら、過ちを犯した自分を恨むんだな!」

「ま、まって!」


聖職者の男が引き金をひこうとした瞬間、入口から幼い少女の声が響いた。


「お兄ちゃん!良かった、ここに居たんだ!」

「オリビア!こっちに来んな!」


少女がこっちに向かおうとすると、少年は怒鳴る様に叫んだ。少年が一瞬目を逸らした隙に、聖職者の男は少女の方に向かって銃を放った。


「きゃああ!?」

「何しやがるんだてめぇ!」


少女は銃声に驚き尻餅をついた。聖職者の男は掴みかかろうとする少年を突き飛ばし、少女の腕を引っ張り、こめかみに銃を突きつけた。少女は必死にもがくが、腕を強く握られ呻き声を上げた。


「どういうつもりだ……」

「ほう……この子どもは貴様の妹か……ならば話は早い。この妹に風穴開けたくなければこの俺に従え」

「誰がてめぇなんかに!」

「死なせたいのか?」

「……分かった。従おう」

「お兄ちゃん!駄目だよ!この人悪い人だよ!」

「大丈夫だ。お前が無事なら、罪人にだってなってやる」

「なかなかの兄弟愛だな……これでまた、世界の掌握に1歩近づく……ククク」

「せかい……」


少女は、男の言った言葉に違和感を覚えた。























世界は近づく。破滅への道を。着実に。

魔術……それはこの現代には存在しないと言われていた。しかし、裏社会においては、魔術は存在しそれを使う魔術師も存在した。彼らは世界の掌握の為に禁断の魔術が記された書、そしてそれを読む事が出来る人間 通称「魔女」を探していた。

ある日、書を持つ少女が組織と出会った事で、世界は動き始めていった。少女は彼らと出会い、何を思い、何へと成っていくのか?そして魔女は誰なのか?

世界は1歩、また1歩、確実に世界の破滅へと近づいていった。

最期に笑うのは誰なのか?

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