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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第181話 弱点がないならどうする?




 ここで暗黒魔術について、少しだけ説明したい。

 暗黒魔術は本来、基礎魔術の四種類の少し上に位置する魔術の扱いだ。



 今まではとりあえず目隠しとか、とりあえずダークゾーン作るとか、あとは宇宙的な理解力によって闇が足場になるみたいな使われ方しかしてこなかった。

 だが、それで暗黒魔術のポテンシャルをうまく引き出せていたかと言われると、非常に怪しい。


 暗黒魔術は、直接的な攻撃力こそ火炎魔術などに劣るが、より幅広い可能性を秘めた魔術だ。

 便宜上暗黒とは言っているが、そこは、闇、影、死、夜といった要素を内包している。

 聞けば聞くほど俺と相性が良さそうに聞こえるが、それは置いておいて。


 主な利用方法は、視界遮断、影の操作、隠密潜伏隠蔽、偽装工作、精神干渉、侵食、腐食、精神系状態異常、呪詛系状態異常などなどがあげられる。


 ただ、これは暗黒属性の素養があれば無条件で扱えるというわけではない。

 より魔術に精通し、CPを手足のように魔術に込められるようになって、初めてまともに扱えるようになる能力も多々あるという。

 その辺は、他の魔術でも変わらないところだな。うまく自分の中で飲み込めない事柄を魔術で扱うことはできない。


 実際、俺は視界遮断や隠密潜伏、影の操作なんかはなんとなく魔術でどうにでもできそうなイメージがあるが、反対に精神干渉や呪詛といったものを操れるイメージが湧かない。

 これはスケルトンの暗黒魔術の使い方にイメージを引っ張られたせいもあるだろうし、暗黒魔術の検証を行ってそれを実戦レベルにまで昇華している時間がなかったことも理由になる。


 だが、魔の女神様がわざわざクミンに習得をオススメした魔術なんだ。

 あの方がこのタイミングで、進化先のためだけにアドバイスをくれるとは思えない。

 というわけで、俺がゴーレムの検証を行っている傍、クミンにも暗黒魔術についての気づきを探してもらっていた。


 そしてクミンは、すでに暗黒魔術の扱いに関しても俺より少し上のところまで来てしまった。

 ……いやいいんだけどさ。

 なんていうか俺は、一点突破タイプっていうか? 闇と死にかけては絶対負けないと思うし?



 そんなこんなで、俺たちはいまようやく、初めてゴーレムとガチンコでやりあうスタートラインに立ったのだ。






「ゴーレムは壁役! クミン、頼んだぞ!」


『了解!』



 俺の声を合図に、すでに装甲を身に纏っていた敵のゴーレムが動き出す。

 挨拶がわりのロケットパンチを、俺とクミンは散開しながら避け、空いた時間でサモンしたゴーレムを突撃させる。

 クミンはちょうどゴーレムの影に隠れるように動き、反対に俺はゴーレムへと身を晒すように走った。


 俺たちが現在戦っているのは、曲がり角のすぐ近くに陣取ることで俺たちの探索を妨げていたうちの一体。

 素材的に言えば石のゴーレム。ストーンゴーレムあたりだろう。


 俺がサモンしたのも同じストーンゴーレム。

 一応ちょっとしたCPは込めて素材的にはこちらが優位のはずだが、それだけで簡単に勝てる相手でもない。

 泥仕合になれば分からないが、時間がかかりすぎると、ゴーレムを稼働しているCPが切れて最悪素材もろとも喪失する。


 アイアンゴーレムとの戦いも視野に入れて、俺たちが挑むのは短期決戦だ。



「『夜のカーテン』」



 まず、このフィールドを包むように俺が暗闇を展開する。

 とはいえ、これはただの前準備だ。


 そもそもゴーレムは、視界に頼った索敵を行っていない。

 それがなんなのかと言われるとハッキリとは分からないのだが、温度や振動、それに魔力的な存在を感知して攻撃を仕掛けているふしがある。

 だから『夜のカーテン』による視覚封じが意味をなさず、これは一見CPの無駄とも取れる行動だろう。


 現に、世界が闇で包まれた後も、目の前のゴーレムたちは元気にガコンガコンとやりあっている。

 正確には、敵ゴーレムが術者である俺を狙おうとして、それを必死にサモンゴーレムが防いでいる形だ。

 今は余裕かましていられるが、アイアンゴーレム相手だったら普通に突破されるかも。


「まぁ、本番は2体使うしな、っと」


 相手の攻撃がうっかりこちらに飛んでくるのを警戒しながら、俺は闇に意識を向ける。

 実のところこの魔法──スケルトンからパクった魔法は、実は暗黒魔術を使う上での下地作り程度のものだった。

 つまり俺は今まで、ゲームを始める前、ゲーム機に電源をつけたところで満足していたようなものだったのだ。


 俺は検証したクミンから教わった通り、その闇の中に『偏り』を作る。


 例えば、影と一口に言っても濃い影と薄い影があるように。

 闇にもまた、濃い闇と薄い闇は存在しうる。

 そのイメージを持つことで、闇は均一な状態から、変化に富んだ混沌の闇へと変わる。


 するとどうなるか。

 その偏りや揺らぎがゴーレムの知覚に影響を与え、こちらの隠密性能が格段に向上するのだ。


 これに関してはゴーレム以外のモンスターにも有効だろう。

 より進歩すれば、闇の中に人間型の塊をわざと作ってデコイにすることもできるだろうが、あいにく俺はそこまで操作性に長けていない。

 だが、この場の撹乱は、現在別行動をしているクミンを助けることになる。


 俺の命令を受けたクミンは、壁伝いにゴーレムへと近づき、闇の中で完璧にその姿を溶かしていた。

 俺が作った闇といえど、クミンは俺のテイムモンスター。

 その闇の性質に合わせることはできた。


 闇の性質によって彼女が行っているのは、隠密と隠蔽。

 端的に言うと、足音を消し、気配を溶かし、闇と一体化するようにゴーレムへと近づいているのだ。


 普段だったら気づかれそうな状況でも、混沌とした闇の中でなら話は変わる。

 悠々とゴーレムに近づいたクミンは、天井からさらなる暗黒魔術を行使した。


 それに合わせるように、俺もまた闇を偏らせる。

 クミンの仕掛けに気づかれないように、ゴーレムに闇をまとわせ、知覚を鈍らせる。

 しばらくしたら、クミンの魔術が完成。

 そろそろ夜のカーテンの効果も切れそうだが、もう必要ないだろう。


 魔術を発動させたクミンは、役目を終えたようにこちらに戻ってきて、サモンしたゴーレムの背後に隠れるように潜む。

 今回は、現在発動中の魔術の維持に専念してもらう予定である。

 ここでようやく、俺は敵ゴーレムへと攻撃を開始する。


「──シッ!」


 細く息を吐き、土石魔術で作った棒手裏剣をゴーレムへと打つ。


 棒手裏剣は石製で、敵のゴーレムも石。

 本来であれば、この攻撃は軽く敵の装甲に弾かれ、微かに相手のHPを削っただけの結果を生むだろう。


 そうならないための、クミンの仕掛けだ。



『──────??』



 世界に満ちていた暗闇が解けていく。

 途端、この場所に光と色が戻る。

 そのタイミング、ゴーレムにもし視界があれば驚いたことだろう。


 自分の体の所々に、まだら模様のような黒い闇がこびりついていることに。



『────!?』



 俺の棒手裏剣が、ゴーレムの脚部へと刺さった。

 狙った場所は当然、黒い闇の部分。

 本来は装甲に弾かれるはずのその攻撃が、確かにその場所をわずかに穿つ。


「本命はここからだ!」


 ゴーレムがその棒手裏剣をどうにかする前に、俺はゴーレムへと迫る。

 当然、ゴーレムは急に接近してきた俺を排除せんと、その巨腕を振り上げ、まっすぐに振り下ろした。


 こいつらの攻撃力と防御力は驚異だが、スピードそれ自体は、そこそこ止まり。

 集中力を切らさなければ、今の俺に対応できないレベルではない。


 急速に接近した俺を跳ね除けようとする巨大な腕を紙一重で躱す。

 叩きつけられた地面から強烈な振動が伝わるが、俺は軽く浮き上がって逃れる。

 直後、サモンゴーレムが相手の腕を押さえて動きをわずかに止めた。


 その隙を逃しはしない。

 地面を蹴って、俺はゴーレムに肉薄した。


 俺は手に衝風魔術をまとわせる。

 選ぶのは当然、風を排除した衝撃の魔術。

 今まで散々、銃弾を打ち出してきた得意の魔術。


 俺はそいつを、黒く変色した脚部に刺さったままの棒手裏剣へと叩きつけた。



『────ッッッッッ!! ────!?』



 効果はてきめん。

 衝撃が棒手裏剣を通してゴーレムの体へと突き刺さる。

 そして、頑丈だったはずのゴーレムの体は、黒い部分を中心に、抉れて砕け散った。


 ボロボロになった足では己の体を支え切れず、敵ゴーレムはそのまま前のめりに倒れこむ。

 その様子を確認して、俺は回り込むように走りながらCP回復薬を呷る。


 ここで攻撃の手を緩めてはいけない。

 闇に侵食されながらも、ゴーレムは欠損した右足を修復しようと動き出している。


 俺は、ゴーレムが再び動き出す前に次々と棒手裏剣を打つ。

 そして二度、三度、四度とゴーレムの手足を同じように抉り、ついにはゴーレムを行動不能に近い状態まで押しやった。

 相手の修復が行われなくなったということは、HPが尽きたと見ていいだろう。


「クミン、ご苦労様。トドメと行こう」


『……はぃ!』


 クミンに声をかけると、彼女は行使し続けていた暗黒魔術をゴーレムの胸部へと集中させる。

 その闇の奥に、確かに赤い輝きを見た。


 ゴーレムは尚も手足を再生させようともがいているようだが、ここまでの攻防で奴のHPも消し飛んでいる。

 無駄なあがきというやつだ。

 俺は、胸部の暗闇に棒手裏剣ではなく鉄杭を打ち込み、距離を取る。



「最後はお願い」


『────』



 ほとんど大丈夫だとは思うが、発狂モードに備えて念のため離れた俺とクミン。

 そんな俺たちに背を向けて、サモンしたゴーレムがのしのしと歩く。

 そして、腕を思い切り振り上げ、餅つきの要領で鉄杭を打ち込んだ。



『──────………………』



 その鉄杭がコアを穿ったのだろう。

 敵ゴーレムは物言わぬまま、サラサラと崩れていき最後には光の粒子となって俺へと吸い込まれて消えた。

 最後に、コアを穿った鉄杭が、ガランガランと大きな音を立てた。



「とりあえず、勝てたな……」


『まだ課題は残りますけどね。CP消費とか』



 俺はふぅー、と大きく息を吐き、クミンも少し疲れた声を出した。

 それでも、ゴーレム2体に任せたときにかかった時間を大幅に更新し、五分程度でゴーレムの排除ができた。



 そう。

 暗黒魔術の使い方として、一番ゴーレム戦で役に立つのはこの能力。

 暗黒魔術は敵へと干渉して、その防御力を下げるような効果があるのだ。

 まさしく、俺たちが求めていたデバフ効果である。


 理屈としては、闇の侵食や腐食といった性質を概念として、CPで無理やり相手に押し付けるようなイメージ。

 敵の体に脆い部分を無理やり作って、そこを強引に突いていくという、どう擁護しても褒められる感じのしない能力だ。


 だが、有用だ。

 少なくとも、俺たちの攻撃力で相手のHPを削るには。


 直接的な攻撃力が低めの俺たちにとって、暗黒魔術はアイアンゴーレム戦の最後のピースを埋めてくれるものに思えたのだった。




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