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殺戮令嬢リア・エルスワーズの華麗なる侵略史  作者: 結城 からく


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第79話 当主の置き土産

 私はバートンの頭部の残骸を投げ捨てる。

 頭部は床に落ちた衝撃で砕けて割れてしまった。


「意外とあっけなかったな」


 バートンは間違いなく強かった。

 雷魔術はもはや人間の領域を超越しており、私でなければ絶対に勝てなかっただろう。

 実際、耐性を獲得するまでは太刀打ちできる気がしなかった。

 仮にバートンが鍛錬を積んで戦闘技術を上げていたら、もっと手を付けられないことになっていたと思う。


(これだけの能力があれば、真面目な貴族として大成したのに……)


 いや、そもそも外法に手を染めたからこんなことになったのか。

 もし真面目にやっていたとしても、私にエルスワーズ家を乗っ取られていたに違いない。

 色々と手遅れだったわけである。


 そんなことを考えていると、バートンの死体から強烈な魔力が噴き上がった。

 煙のように膨らんだ魔力は人型に変わり、青い肌の屈強な男になる。

 男は気さくな調子で話しかけてきた。


「よう」


「なんだお前。バートンか?」


「おいおい、こんなクソ貴族と間違えるなよ」


 男は大げさに呆れてみせた。

 それから堂々とした口調で名乗る。


「俺は雷神ソヂナ。禁術で召喚された挙句、こんなゲス野郎の肉体に閉じ込められたかわいそうな神だ」


「神……本物か?」


「まあ、厳密にはちょっとばかし違うんだけどな。精霊の最上位種って感じだ」


 とにかくソヂナは特殊な存在らしい。

 彼の言葉を信じるなら、禁術に囚われた被害者のようだった。


 ソヂナは私に顔を寄せると、じっと見つめてくる。

 全身を観察した後、彼は笑みを深めた。


「——良いな」


「あ?」


「お前さんを気に入ったって言ってるんだよ、リア・エルスワーズ」


 私の肩に手を置いたソヂナは楽しそうに宣言した。


「自由にしてくれた礼だ。しばらく力を貸してやろう」


 ソヂナの全身が煙に戻り、精霊刀に吸い込まれるように浸透した。

 予想外の現象に私は驚く。


「おいっ、勝手に何してんだ!?」


「心配すんな。お前さんの武器に憑いただけだ。試しに振ってみろ。驚くぞ?」


 精霊刀からソヂナの声がした。

 私は言われるままに軽く振ってみる。

 特大の風の刃が飛び出し、屋敷の壁を切断して少し先の部屋まで倒壊させた。

 凄まじい威力に私は感心する。


「おお……」


「元から宿っていた精霊の力を俺が強化した。風も火も闇も絶好調だ! ついでに雷も打てるぜ」


 私は再び精霊刀を振るう。

 切っ先からバートンの術を彷彿とさせる雷撃が放たれ、轟音を立てて壁や床を滅茶苦茶にぶち抜いた。


「俺の魔力も貸せるから、お前さんの消費量は大幅に減るはずだ。どうだ、すげえだろ?」


「……最高だ。でも本当にいいのか? 私だけが得をしている状態だけど」


 精霊刀から煙が漏れて、小さなソヂナに変わった

 ソヂナは得意げな表情で語る。


「無理やり肉体に縛られるのと、自分の意志で協力するのは大違いだ。俺は俺が納得してお前さんを手助けするのさ」


「それはありがたいな」


「もし気遣ってくれるなら、この武器をたくさん使ってくれよ。俺は戦いが大好きなんだ」


「心配しないでくれ。出番はこれから腐るほどある」


 私が自信満々に言うと、ソヂナは狂暴な笑みを見せた。

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