第78話 悪あがき
汗だくのバートンは、自分の両足に雷撃を打ち込む。
そうすることで精霊の力を破壊し、腐蝕を止めてみせた。
(悪くない判断だ。でも対処が遅すぎる)
私は鎖を使って精霊刀を振り回し、バートンを狙って投げつける。
追撃を察知したバートンは瞬間移動で消えた。
その直後、頭上から悲鳴が聞こえてくる。
なぜか落下してきたバートンは床に激突して倒れた。
両足が太腿の半ばほどで千切れており、焼け焦げた断面が露出している。
それを見たバートンはまた絶叫する。
「うおあああっ、そんな、おい! こんなまさかッ!?」
「憐れだなぁ。当主が情けない声を出すなよ」
私はニタニタと笑ってバートンに歩み寄る。
瞬間移動は雷魔術の応用だ。
あまりにも優秀な術ではあるが、繊細な魔力操作が必須なのはずっと感じ取っていた。
つまり発動難度が非常に高く、ちょっとした変化に影響されやすいのである。
そんな能力を狼狽した精神状態で両足を溶かしながら使ったのだ。
悲惨な失敗に至るのは当然の話だろう。
脚を失ったバートンは床を這って進む。
少しでも私から離れようと懸命に進んでいた。
そんな彼の背中を踏み付ける。
触れた瞬間に雷撃を食らったがもちろん効かない。
「慌てるなよ。私を妻にするんだろ? 楽しませてくれ」
私は精霊刀を逆手に握り、バートンの腰に突き立てた。
バートンは掠れた悲鳴を上げる。
手足を必死に動かすが貧弱で、私を押し退けられるほどではなかった。
ここまでの戦闘で、バートンの能力は見抜いている。
雷魔術は確かに強力だが、身体強化はそこまで練度が高くない。
魔力量と術の出力に任せた戦法は、一旦崩れると持ち直すのは困難だった。
私は適当に歌いながらバートンを切り刻む。
なるべく死なないように急所を避けるように心がけた。
傷口が焼けて腐っていく。
その苦しみにバートンは気絶と覚醒を繰り返した。
ひとしきり満足したところで、私はバートンの髪を鷲掴みにして持ち上げる。
そして首筋に精霊刀を当てた。
私はとびきりの笑顔で優しく囁いてやる。
「うん、よし。飽きたからそろそろ死んでくれ」
「嫌だ。リア、君は僕の――」
私は精霊刀に力を込めて腕を動かし、バートンの首を切り離した。
その際、暴発した雷魔術が彼の頭部を炭化させた。




