第72話 当主の告白
バートンは不敵な笑みを浮かべて私に問う。
「あの二人……ラインとマーサはどうだった。少しは障害になったかね」
「ラインとは戦っていない。シェリーが殺した。割と互角の勝負だったな。マーサはかなり強かったけど、別に本気を出すほどじゃなかった」
「ふむ、そうかそうか……概ね予想通りの結果だ」
頷くバートンに動揺は見られなかった。
それどころか怒りや悲しみもない。
気になった私は尋ねる。
「妻と息子が殺されたのに、何も感じないのか?」
「冗談はよしてくれ。あの二人は失敗作だった。人体改造に耐え切れず、半端な段階で満足したんだ。そんな欠陥品に情などない」
「……変わったな。昔は家族愛があったと思ったんだが」
「もし変わったのだとすれば、君が原因だよ」
バートンがまた一歩近づいてきた。
彼は熱を込めて語る。
「エルスワーズ家は身の丈にあった歴史を歩んでいた。先代の仕切る全盛期に比べれば多少は力を落としたものの、それでも我々は豊かな暮らしを謳歌していた。安穏を打ち壊したのは君を拾った時……あそこで運命が歪んだのだろう」
「被害者面すんなよ。私を拉致して奴隷同然の手駒にしたのはお前らだ。憂さ晴らしに使ったのもお前らだ。新薬の実験体にしたのもお前らだ。すべてお前らの責任だ」
「すまない。別に君を糾弾しているわけではないんだ。むしろ心の底から感謝している。おかげで目覚めることができた。早い話がリアの力に触発されたんだ」
その時、落雷が部屋の天井を消し飛ばした。
落ちてくる木材を雷魔術の結界で砕きつつ、バートンは嬉しそうに言う。
「私の才覚は、田舎の悪徳貴族で留まるものではない。己の力を過信し、もっと飛躍を試みるべきだった」
バートンが一瞬で私の背後に回った。
雷魔術を使った高速移動だ。
「諸外国や違法勢力と接触し、莫大な技術提供を受けた。領民と私兵で実験を繰り返しながら、自分の肉体にも改良を加えた。この世のものとは思えない苦痛を味わったが、私は人間という種を超越した」
バートンの気配が消え、今度は壊れた屋根の上に腰かける。
(こいつ……一体何をしたらここまでの力を……)
私は警戒心を高めながらバートンを睨んだ。




