第67話 盛大な歓迎
私達が屋敷に入った途端、グールが押し寄せるように接近してくる。
装備している鎧を見るに、彼らはエルスワーズ兵だ。
屋敷の奥から続々と現れるグールの大群を前に、私は眉間に皺を寄せる。
(滅茶苦茶だな。配下すらも使い捨ての実験体にしているのか)
領民も兵士もグールにして、化け物みたいな強化兵まで街に放っている。
たとえ私達に勝ったとしても、そこに残るのは凄惨な光景だけだ。
何も得るものはなく、すべて破綻するのではないか。
一連の暴挙を見た上で、私にはその目的がまったく理解できなかった。
そんなことを考えつつ、私は鎖を大きく振り回す。
先端に取り付けた精霊刀が、グールを鎧ごと真っ二つに切断していった。
そこに水魔術の追撃を浴びせたシェリーは、凛々しい面持ちで私に告げる。
「お姉様。ここはわたくしが引き受けますわ。お姉様は先へお進みください」
「大丈夫なのか?」
「ええ、まだお姉様の魔力を感じます。これならグールの影響も受けにくいでしょう。すぐに倒して援護に向かいますわ」
答えるシェリーの顔は自信に満ち溢れていた。
満身創痍から復活したばかりだというのに元気なものだ。
実際、強がりからの発言ではないようで、彼女の魔力はこれまで以上に研ぎ澄まされている。
ラインとの死闘を経て、さらに実力を上げたらしい。
これならば大量のグールが相手でもやられることはないだろう。
私は身構えるシェリーの肩を叩く。
「死ぬなよ」
「当然ですわ!」
張り切るシェリーが圧縮した水を連射し、私が通り抜けるための道を作った。
私は身体強化でグールの肉壁を一気に突破する。
追いかけてきそうな個体がいたが、水の拘束に包まれて妨害されていた。
その隙に私は屋敷の奥へと進む。
荒れ果てた廊下は、先ほどまでとは打って変わって静かだ。
近くにグールの気配はない。
ただし、強大な魔力反応はひしひしと感じる。
この騒動の黒幕達が、私の到来を待っているようだった。
私は最寄りの魔力反応のもとへ向かい、そいつがいる部屋の前に立つ。
扉を開けようとした瞬間、室内から風の刃が飛んできた。
分厚い扉を貫く一撃を精霊刀で相殺する。
扉がバラバラになったことで室内の様子が明らかとなる。
血みどろの部屋の中央に佇むのは、死人のような顔をしたマーサ・エルスワーズだった。
赤黒いローブを着込むマーサは、私を睨んで命じる。
「感謝の言葉を述べなさい」
「うるせえ、クソババア」
私は舌を出しながら中指を立てた。




