第43話 精霊魔術の穴
レグゥの乗る竜が、ブレスで私を消し飛ばそうとする。
しかし、絡み付いた手足が首を曲げることで妨げた。
暴発したブレスは無関係な方向に噴き出し、残る盗賊を何人か焼き払う。
「倒し方その一。ブレスを妨害する」
呟いた私は血の翼で上昇し、真正面からレグゥに接近する。
増殖する手足に苦戦しつつも、レグゥは風の刃と火炎で迎撃してきた。
二属性攻撃を受けた私は、血飛沫をレグゥの竜に浴びせて凝固させる。
翼を血で固められた竜は飛行できず、回転しながら落ちていく。
「倒し方その二。翼を攻撃して機動力を奪う」
レグゥは墜落する竜を見放し、風と炎による自力飛行に切り替えた。
纏わりつく手足は炎で焼き切り、黒煙で腐らせることで残らず剥がしている。
その迅速な対処からも高い実力が窺えた。
私は鉈を弄びつつ舌なめずりする。
「倒し方その三。攻撃より回避を優先……は無視していいか。さっさとぶっ殺してやる」
私はまた接近して鉈で斬りかかる。
風と炎と闇が直撃するも、再生力を上げることで無理やり攻め続ける。
慣れれば大したものではなかった。
とにかく距離を取られないように意識して執拗に仕掛けていく。
レグゥの顔からだんだんと余裕が無くなりつつあった。
三種類の属性を巧みに操っているが、攻防が間に合わない場面が目立ってくる。
微笑む私は鉈の刺突を繰り出しながら尋ねる。
「どうした? もう息切れかよ」
「ハッ……舐めんな! 美女との殺し合いは、何日でも大歓迎だぜ!」
刺突を肩に受けたレグゥは、傷口を焼くことで止血し、私の血が付着していないかも確認している。
威勢の良い言葉とは裏腹に、レグゥの動きは明らかに鈍っていた。
当初は頑強だった魔力の鎧も常時展開できず、全身各所に傷を負っている。
(やはり接近戦に弱かったか)
ここまでのやり取りから、私は精霊魔術の弱点に気付いていた。
まず精霊を使役するという特性上、攻撃速度が他の魔術に劣る。
レグゥの場合は戦闘の展開を先読みし、無駄なく命令することで補っているが、それだって完璧じゃない。
不意を突かれると脆く、魔術が本来の力を発揮できなくなる。
以上の弱点をまとめると、レグゥは接近戦が苦手と言える。
自慢の先読みや戦闘経験も、絶えず殴り合う間合いだと精度は下がる。
魔力の消費ペースも馬鹿にならない。
私の血の一滴すら警戒しなければならない状態は、間違いなく苦しいだろう。




