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殺戮令嬢リア・エルスワーズの華麗なる侵略史  作者: 結城 からく


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第40話 一騎打ち

「私も活躍しないとな」


 腕に傷を付けて血を出す。

 それを鉈に塗りたくり、勢いよく投擲した。


 鉈が近くを飛んでいた竜の尻に突き刺さる。

 飛び散った血の軌跡が再生し、鉈から私の手までを繋ぐ縄になった。


 私はその縄を一気によじ登り、竜の背中に這い上がる。

 そして騎手の肩に手を置いた。


「おい、ちょっと降りろ」


「いやいや、何言って」


「さっさとしろ」


 戸惑う騎手を引きずり落として竜を奪う。

 すぐに竜が暴れ出したので、鉈を片目に刺しながら脅す。


「言うこと聞かねえと殺すぞ」


 言葉は理解できずとも意志は伝わったらしく、竜は大人しくなった。

 私は鉈を引き抜いて頭を撫でてやる。


「よし、いい子だ」


 反撃の準備はできた。

 私は血の縄に繋いだ鉈を全力で振り回すと、目に付いた盗賊に投げる。

 魔力で切れ味が増した鉈は、軌道上にいる竜と人間を平等に解体していく。


 飛んでくるブレスは、竜が勝手に回避してくれた。

 こいつだって死にたくないから必死に動く。

 振り落とされないように注意さえすれば、私は攻撃に専念することができた。


 間合いに入った奴を片っ端から殺すうちに、誰も近寄ってこなくなった。

 残った奴らはシェリー、ノルフ、バジルの対処に追われている。

 まだ太刀打ちできそうな三人に狙いを絞ったということか。


(或いはボスを信頼しているか……)


 私は前方を睨む。

 腕組みをして堂々と竜にまたがるのはレグゥだ。

 レグゥはニヤけた顔で私を観察している。

 私は率直に尋ねた。


「仲間が死んでるのに静観するのか」


「簡単に死ぬ軟弱者はいらねえよ」


「薄情だな」


「実力主義と言ってくれ」


 態度を崩さないレグゥに向かって血の縄付きの鉈を飛ばす。

 不意を突いたつもりだったが、レグゥは片腕で難なく弾いてみせた。


「面白い魔術を使うじゃねえか。血を操っているのか?」


「教えねえよ」


 私は鉈を引き戻して掴む。

 同じ攻撃をしても通用しないだろう。

 直接ぶっ叩くしかなさそうだ。


(鉈を防御したのは魔術じゃない……魔力の鎧か?)


 すなわちレグゥの単純な防御力は竜よりも上ということだ。

 馬鹿げた練度と出力である。

 基礎能力の高さに驚いた私は、素直な感想を洩らす。


「とんでもない奴だ。確かに騎士の器じゃ勿体ないな」


「ん? そいつはバジルの意見か?」


「そうだよ。お前を天才だと言ってた」


 レグゥは大笑いした。

 それから自分を指差して誇らしげに言う。


「過小評価だな! 俺様はバジルより遥かに強いぞ」


「じゃあ私より強いのか?」


「ああ、間違いない!」


「なら証明してみろ」


 レグゥの挑発を受けて、私は竜を蹴って突進させた。

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