第22話 試し斬り
隣を歩くシェリーが心配そうな顔をする。
「本当によろしかったのですか? もっと高品質なものがありましたのに……」
「どうせなら面白そうな武器がいいだろ。駄目だったら新しいのを用意するだけだ」
「確かにそうですわね!」
「さっそく試し斬りでもするかー」
「それならこの私を使ってくださいまし……!」
興奮するシェリーがいきなり縋り付いてきた。
目の焦点が合っておらず、半開きの口から涎を垂らしている。
周囲がぎょっとしているのも気にせず、欲望を全開にして密着してきた。
私はシェリーを無理やり剥がして告げる。
「落ち着けって。ちょうどいいのがあるんだ」
「……?」
首を傾げるシェリーと一緒に近くの路地に入る。
狭い路地は昼間なのに薄暗く、ゴミだらけで見通しが悪い。
貧民街で暮らしていた私にとっては懐かしさを覚える光景だ。
少し進むと、前方に刃物を持った男達が現れた。
振り返ると同じような風貌の人間が道を塞いでいる。
前後から挟まれたことに気付いたシェリーが驚愕する。
「尾行……!?」
「武具屋に入る前から監視されてたぞ」
「えっ」
戸惑うシェリーを無視し、私は前方に立つ白髪の男に注目する。
年齢は四十から五十くらいか。
やや細身だが貧弱な感じはなく、全身を余さず鍛えているのが分かる。
昏い双眸は、じっとりとした嫌な殺意を湛えている。
白髪の男は静かに発言する。
「リア・エルスワーズだな」
「そっちはメリッサ・ルードンの手先か。依頼は拉致か、それとも暗殺か?」
「…………」
男は沈黙した。
それが答えだった。
決闘を控えるルードン家は、事前に私を潰すという手段に出たらしい。
まあ、予想の範疇なので驚きはなかった。
実に合理的な作戦じゃないか。
絶対に失敗するという点さえ除けば完璧であった。
私は鉈を手に歩き出す。
湧き上がる衝動を自覚し、歓喜を押し殺して忠告する。
「試し斬りの時間だ。シェリー、手を出すなよ。こいつらの逃げ場だけ塞いでおけ」
「かしこまりました!」
シェリーが即座に魔術を発動した。
地面から滲み出した水が分厚い壁となり、前後の男達の退路を塞ぐ。
水の防御はなかなかに強力だ。
ただの力押しでは突破するのが難しい。
シェリーの魔力制御は粗いが、男達の逃走を妨害することくらいはできるだろう。
水の壁を見た男達は悪態をつく。
「チッ、面倒な……」
「ちょこまかと逃げられるより楽だろ。さっさと始末するぞ」
そう呟いた白髪の男が霞む。
次の瞬間、男は私の眼前まで迫っていた。




