第13話 水責め
気を失って横たわるノルフを一瞥する。
八年が経っても彼の優れた戦闘能力は健在だ。
魔力で強化された肉体は、若者と比較しても強靭だろう。
ただ、精神面で脆くなった気がする。
今のノルフには心の迷いがある。
それが私に後れを取るほど致命的な隙となっていた。
ノルフには、私が成人の儀に乱入することは伝えていなかった。
殺戮を見た時はさぞ驚いたことだろう。
会話から推測するに、意図も読めなかったに違いない。
いつか私が反旗を翻すことは察していたはずだが、まさかここまで過激だとは考えていなかったと思う。
様々な要因が重なり、ノルフは本来の実力を発揮できなかったわけである。
私は放置していたシェリーを見る。
シェリーは腰を抜かしたまま、私に向けて両手をかざした。
魔術の水が発生して私の全身を包み込む。
動きを止めつつ窒息させる魂胆らしい。
(小賢しい……)
私は斧から魔力を放出して振るう。
纏わりついていた水が弾けて飛び散った。
自分の術が破られたことにシェリーは愕然とする。
「え……ええっ!?」
シェリーはすぐさま同じ魔術をかけてくる。
私は同じやり方で防ぎながら歩く。
(水魔術……鍛えれば強いのになぁ)
シェリーは強力な魔術を習得することを優先し、基礎を怠ってきた。
対する私の魔力操作は、本職の魔術師と比べても遜色ない練度に達している。
肉体が再生する際、魔力の流れを意識するように教え込まれたのだ。
通常では不可能な鍛錬法により、今では完璧に魔力を制御できるようになった。
だから半端な魔術など容易に破壊できる。
追い詰められたシェリーは手のひらに魔力を圧縮し始めた。
何か大技を使うつもりらしい。
私は棒立ちで見守ることにした。
「こ、来ないでっ!」
シェリーが水の刃を飛ばしてきた。
私は斧の一閃で粉砕する。
想像よりも弱い魔術だった。
動揺しすぎて複雑な術を使えなかったのだろう。
私はシェリーを蹴倒し、その腹を踏み付けた。
徐々に力を込めながら見下ろす。
「いつも私を溺れさせるよな。どんな気持ちか教えてやるよ」
私はシェリーの手を掴み、彼女自身の口に無理やり突っ込んだ。
そのまま固定して命じる。
「水を出せ。ありったけだ」
「……っ!」
涙を流すシェリーは首を横に振った。
ため息を吐いた私は、斧で彼女の横腹を浅く切る。
衣服に血が僅かに滲み出した。
シェリーは半狂乱になって暴れるも、身体強化を使う私を引き剥がすことはできない。
私は低い声で脅しにかかる。
「早くやれ。内臓をぶちまけたいのか?」
結局、シェリーは自分の口に放水を始めた。
苦しくなって術を止めるたびに斧で切りつけて強行させる。
暴れながら溺れるシェリーはやがて気を失った。
腹が大きく膨れているが、死ぬことはなさそうだ。




