第12話 果たすべき誓い
コツコツと歩く音が良く響く。
ここは洞窟。あの後、アタシが三人に「何があったか知りたい。」と申し出た結果、フセと三人。その過去を知るために来ている。並びはギユウを先頭に、アタシと栞、テイちゃんにチュウギという順番だった。
ふと後ろを見るとチュウギだけがやや下を向いてうつむいて歩いていた。
ゆらゆらと松明の灯りが揺れる。前方にいたギユウが足を止めると、灯りを目の前の空間に向けた。
すると、そこには歴史の教科書に乗っているような壁画があった。色がほんのり落ちていたが、鳳凰のような鳥が描かれているのがわかった。これはもしかして太陽の神なのか…と思う一方、気になる事がひとつ。
それは壁や地面に点々と赤黒いものがついていた。
「ねぇ、ここって一体どういう所なの?」
「ここはかつて祭壇として使った場であり、フセが殺すよう指示し、死んだ場だ。」
ギユウがそう答えた。そうなのか。だから赤黒いものが…
「フセは俺が殺した。」
突然チュウギが口を開いた。
「え?」
「信乃、本当の事だ。頼まれたのはチュウギなんだ。」
そうギユウに言われた。そう思うと、さっきうつむいていたのは、きっとここであった出来事を思い出したからだろう。相当辛かったんじゃないかな。
「昔、俺を地獄のような生活から救ってくれたのがフセだった。出会って俺が恩返しとして尽くそうと思ったんだ。だが俺はそんな事が出来なかった。主を殺した。救えなかったんだ。」
「チュウギ…」
「なんだか主ら二人、良く似ていてな。それでここに連れてきたんだ。」
テイちゃんがそう言った。だけど、すかさずチュウギが声を出した。
「けどな、いくらなんでも、あの少女を殺すってな…」
「少女?まさかフセの…」
「そうだ。どう考えてもフセの生まれ変わりだ。」
驚いた。まさかフセが生まれ変わっていたなんて。
「えっ、どこに?」
栞が聞いた。それについてギユウが答えた。
「秋津洲だ。何度か調査に行ったが、遂に見つけたんだ。」
そう言うと、玉を出し、ホログラムのようなものを出現させた。
ホログラムに写された映像には、その少女がいた。長い黒髪にくりくりした瞳、そして赤いランドセルを背負っていた。そう、明らかに小学生だった。
「ええええ!?」
アタシは思わず声を上げた。こんな幼い子に運命を全て背負わせなければならないのかと。
「チュウギ、この子はフセだ。何度も口煩くなるが、あまり情をうつすな。」
「なんだよ…またか…でも俺は俺たち島人より寿命が短いからどうせ早い内にこっちに来る。そう言ってさっさと殺してこっちに送るのはどうかと思ってる。この子はまだ幼い。」
「でも決めただろ…仕方ない事だ。諦めろ。」
「そう言われるとそうだがな、俺達に巻き込まれたとも同然だ。ならまだそっちで幸せに暮らしていた方が良い。」
チュウギとギユウがひそひそと話していた。チュウギの言葉を聞いて、アタシはこの男には似たようなものがあるかもしれない。そう思った。
そうだ。それはきっと…
アタシは、いつの間にかそっとチュウギの手を包んでいた。
「後悔の念…アタシもそうだった。凄く、凄く悔やんだ。世界規模、アタシにはあっちに置いてきた両親や仕事仲間、それに、ここには栞がいる。あの子も救いたい。この戦いを終えたら、幸せに過ごして欲しい。だから、アタシは…」
「信乃ちゃん?」
ハッと目を覚ました。
「あっ、おはよ。庵ちゃん。ちょっと夢見てた…」
「おはよう。ねぇ、さっきまでどんな夢見てたの?」
「んー。ちょっとこっちに来た時の夢!!」
アタシはそう答えた。そして立ち上がり、歩みを進めた。この世界と大切な人を救う、そう決めたから、今日も旅をするのだ。




