第八部 第六章 オオカミ
「温泉でまったりしてたり、本当に使命感が無いんだな」
いきなり、目の前に犬が現れて、俺達に話しかけて来た。
「「「犬がしゃべったっ! 」」」
俺達が衝撃のあまりに叫んだ。
「犬じゃねぇよ。オオカミだよ」
その犬が不貞腐れたように呟いた。
ニホンオオカミは柴犬サイズの茶色で、ぱっと見て犬にも見える。
「だが、しかし。カワユス」
由宇がそのオオカミに抱き着いた。
ちなみに俺も抱き着いた。
俺も由宇も犬好きである。
由宇は猟師で、俺は犬が好きなのに、親父のマーライオンで犬が可哀そうになるから飼えなくて、犬に飢えてた男だ。
「いや、犬じゃねぇから」
オオカミが困ったような顔をしている。
「いやいや、まずは何故喋るんだ? からでは無いのかな? 」
和弘おじさんはそう言うが、俺達は止まらない。
早速、由宇も首の下をなでなでするし、俺も同じだ。
「相変わらず、犬好きだな」
雄二が呆れて見てる。
「いやいや、犬では無いと言うのに」
オオカミさんが激怒している。
「いや、でもぉぉぉ」
「柴犬に見えるよな」
俺と由宇がすりすりしたままだ。
だって、可愛いんだもの。
「やれやれ、お前、本当に二階堂かよ」
オオカミさんが困ったように呟く。
「喋ると言う事は狼男さんなのかな? 」
和弘おじさんがじっとオオカミさんを見た。
オオカミがじっと見返した。
そのつぶらな瞳がたまらない。
「あーあーあーモフモフ」
「モフモフだぁぁぁあ」
俺と由宇が止まらない。
可愛すぎる。
「あのな。俺はお前達がいつまでたっても行動しないから業を煮やした御方から言われて来ただけだ。後、狼男ってなんだ? 」
オオカミが困った顔で和弘おじさんに聞いた。
「いや、人間だけど、満月になるとオオカミの姿の人間になって人を襲うって奴だよ」
和弘おじさんがそう説明した。
「あれは、中世ヨーロッパで墓荒らしや魔術をやったものが<狼>と呼ばれて共同体から追放された名残ですよ。特にフランスなんかは何でか知らんけど、カトリック教会に<狼>と認定されたら7年くらい罰として月明かりの夜に狼のような耳をつけて毛皮をまとって吠え続けないといけないって訳の分かんない罰もあったそうですし」
俺が説明した。
「出た、また無価値の蘊蓄」
由宇が横で突っ込んできた。
「無価値って何だよ」
俺がムカッとして言い返す。
「そんなの知ってても意味無いし」
「そんなの分かんないでしょうが」
俺と由宇が言い合いを始めたんで、オオカミと和弘おじさんがため息をついた。




