第七部 第二章 方向
平野に降りると、変な話だが湿原では無く、普通の平野だった。
昨日はあった崖の岩肌も植物が生えている。
地形が変わるだけで無く、植物も変わっていると言う事か。
ますます訳が分かんない。
正直、磁石も無いし、北極星と北斗七星が夜に見える訳でも無く、地形だけが頼りなんだけど、その地形が動くんで全くあてにならない。
果たして、まっすぐ向こうに向かっていけるのか。
非常に不安だ。
「何となく考えてる事は分かるけど。多分、草で目印作っても無駄だぞ。コブリンの居る湿地の時も目印が良く分かんなくなったし、この分だと意味が無いと思うわ」
雄二が俺の懸念を察して答えた。
この辺りは流石の幼馴染だ。
家族みたいなもんだから良く分かる。
「そう言うのはわしに任せろ」
自信満々で非常食さんが笑う。
いやいや、信じられねぇんだが。
「どうやって方向が分かるのよ」
由宇が突っ込んだ。
「勘だな」
非常食さんがキラリと答える。
何だろう。
うちの親父に似ているような気がする。
「兄貴に似てるんだけど……」
和弘おじさんも同意見らしい。
やっぱり、そう思うよな。
俺も、そう思うし。
と言う事はあまりあてにならないと言う事か。
「とりあえず、安心するがいい。だてに山王と呼ばれてはおらん」
非常食さんが胸を張って答えた。
「いやいや、それって自信があるだけだよね」
由宇が呆れて突っ込んだ。
「あぁあああぁぁぁぁあああぁあああ! 」
非常食さんが叫んで、肉の袋を放り出すと追っかけて行った。
「は? 」
「ああ、ストーカーさんだと思う」
俺がびっくりしてたら、雄二が苦笑した。
「え? 追いかけて来てたの? 」
「多分」
「参るな。ほっといて先に行くわけにも行かないし、ここで待たないといけないじゃん」
俺がうんざりした顔で呟く。
「流石に、この肉の袋は重くて持ってけないしねぇ。それと背負子とか水筒とか作って時間を消費したから、ここで一旦夜を過ごした方が良いかもしんないね」
和弘おじさんが苦笑した。
確かにすでにそろそろ夕方である。
「ちっとも先に進めないんだけど」
由宇もご立腹だ。
「まあ、でも、この平原は怪しいから用心して早めに焚火とかするのも良いかもね」
雄二が早速竹の杖で、屋根が作れるようにツタを使って組み始めた。
「しゃあないな。とりあえず、薪になりそうなもの探してくるわ」
俺も同意した。
平原だけに低木しか無いから、薪の不安は確かにあったからだ。
全然、進んでないけど、大丈夫なのか不安になる。
変な事が起きないと良いけど。




