第六部 第六章 追跡者
それは夜になって姿を現した。
最初に気が付いたのは、雄二でなく由宇だった。
それは木の影からちらちらと黒いものが見えてるので気が付いたのだ。
「あれ……」
由宇がひそひそと俺達に囁いた。
黒いものを目で追っている。
「ああああああああああああ! 」
非常食さんが気がついて追っかけて行った。
ぶっちゃけ、角熊さんだった。
しかも、一部焦げている。
「帰ったんじゃ無かったのか? 」
雄二が呆れたように呟いた。
「仲間に入りたいんじゃ無いの? 」
由宇も呆れている。
結局、山王2号さんだった。
「何やってんだか……」
俺がため息をついた。
「ストーカーって奴ね。こっちでもいるなんて」
由宇が愚痴る。
大学行って、女性の一人暮らしだと、まれにこういうのが湧くらしい。
何だか知らんが、アパートのまわりをウロウロするそうな。
由宇は、結局うじうじして気持ち悪かったので相手はしなかったが、チャラ男さんと付き合いだしてから、積極的に声をかけて来たりしたらしい。
猫被りまくりの可愛い子ぶりっ子してたらしいから、関節外しで君がそんな人だと思わなかったとか言われて由宇がブチ切れたら逃げたらしい。
本人曰く、そんな漫画みたいな女の子なんか居ねえよとか言うんだけど、俺からしたら居て欲しい。
雄二も何処かにいるんじゃ無いかなぁなんて悲しい事を呟いてた。
「くそぅ! 逃げられた! 」
非常食さんが吐き捨てた。
「何がしたいんだろうな? 」
和弘おじさんが不思議がる。
「まるで、森のくまさんの歌みたい」
由宇が呟く。
「あれ、アメリカの民謡の和訳ミスだけどな。お逃げなさいで無くて、銃を持ってない人間が逃げないから不思議に思ったって歌らしい」
「え? そうなの? 」
「英国の歌詞が、He says to me, Why don’t you run? Cause I can see, you have no gun.だぞ」
「相変わらず、つまんない事は良く知ってるのね」
由宇が感心してる。
むかつくわぁぁ!
「まあまあ、何を思ってるか分かるが、諦めろ。あれはああ言う生き物だから」
雄二が笑いながら俺の肩を叩く。
「仲が良いよね」
和弘おじさんが笑った。
いやいや、忍耐の賜物ですよ。




