第六部 第二章 嫌われ者の流儀
「正直、ちゃんとキャンプがしたかったなぁ」
由宇が愚痴る。
「いや、ちゃんと解体とかやってんじゃん」
俺が突っ込んだ。
「バーベキューもやってるし」
雄二も続いて突っ込んだ。
「あれは私の場合、猟の延長だから。単なるいつもの話じゃ無いの」
由宇がグチグチ言う。
「ホラーはあっただろ」
俺が微笑んだ。
「ああ、家伝の毒の小瓶までパクられると思わなかった」
由宇が不貞腐れた。
「いやいや、倒すのあれしか無かったし」
「せめて貸してくれって言えば良いじゃん」
「言っても貸してくんないじゃん」
「緊急時はべつでしょ」
「そうか? 」
昔に緊急時でもケチってたと思うんだが。
「まあまあ、とりあえず、この世界を出るまではキャンプで楽しんだら良いじゃない」
和弘おじさんが笑った。
「楽しめますか? 」
雄二の突っ込みが痛い。
昨晩のが出てきたらしんどいな。
次は勝てるか分かんないし。
「まあ、木が密集して奴等が入れなさそうな森のような場所を移動するべきだな」
非常食さんが非常に素晴らしい提案をした。
「なるほど」
「あの様子だと、身体の頑丈さが邪魔して、木が密集してるところは出入りしにくいはず」
「良い手だね」
雄二も同意した。
「にしてもたいしたもんだね。確かに二階堂最強かもしんない」
和弘おじさんが俺を見て笑った。
一瞬、非常食さんの目がキラリとするから言わないで欲しいんだけど。
「でも、あんな戦い方は御剣流には無いですけどね」
雄二が苦笑した。
「いや、あるわけ無いだろ。あんなのと戦うのなんか想定してる格闘技なんか無いわ」
俺が突っ込んだ。
「いやいや、正直、御剣流皆伝だけど、あまり関節技も使ってるの見たこと無いしな」
「いや、それはいつも言ってるじゃん。由宇と違って俺は人体の構造じゃ無くて、技の種類と掛け方と解き方を知りたかっただけだし」
そうなのだ。
関節技や締め技など特に格闘技で実戦をやる場合、そういう技があると知ることが凄く大事だったりする。
知らないと外し方や防ぎ方が分からない。
特に御剣流は古流と言っても柳生神陰流の江戸時代の分派であるし、関節技は関口新心流の流れを組む流派だ。
ぶっちゃけ、尾張藩の御流儀の流れを汲んでいる。
だが、うちの曽祖父に先生の父親が負けた悔しさから、積極的に最近の柔術や総合格闘技の技も積極的に取り入れて近代的に変えたものだ。
昔は一つの技を習うのに飛んでもない高額なお金を払った。
それこそ、家一軒の世界だ。
だからこそ、昔はその技が知られておらず、やられた方は知らないから簡単にやられていた。
でも、今は違う。
技術書が出まわるくらい、技は皆が知るようになった。
だから、先生の家の方針は武術として考えるなら非常に正しい選択をしたと思う。
中国武術などが総合格闘技に出て厳しいのはその辺だろう。
昔はあんな技は秘伝で誰も知らなかったのだが、時代が変わって秘伝で無くなって、さらに総合格闘技側は試合で磨かれたせいで差が開き過ぎて、どうしょうも無くなったのでは無いかと思う。
もっとも、何故、俺が外し方や防ぎ方を知りたかったかと言うと、それだけあちこちで嫌われて喧嘩を売られたり、勝負を挑まれたりで仕方なしなんだけど。
しょぼん。




