第三部 第七章 ドラゴン対山王(さんのう)
「危ない」
その時、雄二が殺気を感じたらしくて叫ぶ。
俺が雄二の見ている先を見るとドラゴンが俺達に炎を吐こうとしている。
この間のドラゴンのようだ。
このままだと山王がやられると俺はとっさに思って、小内刈りの形で渾身の力で押した。
山王もドラゴンを振り向いて体勢が崩れていたのが良かったのだろう。
綺麗に倒れて、ドラゴンの炎を浴びなかった。
雄二と由宇は一目散に岩の影に隠れてた。
「お前、なんで」
「いや、クニハタさんの集落を守ってんでしょうが」
「そうか……」
山王が立ち上がると俺を岩の影に隠れるように指差した。
相変わらず指とかいろいろ器用だ。
しかし、いくら何でも全長が五倍近いドラゴンと戦うとは……。
「借りは返す! ドラゴンは俺が撃退する! 」
山王が叫ぶとその頭の一本角が伸びだ。
そして物凄い球雷が発生して、ドラゴンに向かった。
ドラゴンがさしもの球雷で焦げる。
「すげぇ」
「あんな技を持ってたんだ」
俺と雄二が感心している。
ドラゴンの炎が再度、山王を掠めた。
一瞬に焦げた匂いがあたりにした。
左肩あたりを少し焼かれたようだ。
「良い匂い」
由宇がその匂いを嗅いで呟いた。
「いやいや、俺達の為に戦ってもらってるのに」
「そもそも、あのドラゴンはお前の罠のせいだろうが……」
雄二と俺が囁いて注意した。
「でも、熊ってうまく血抜きすると、牛より美味しいのもあるんだよ」
由宇が囁く。
「「「ごくり」」」
俺達全員が喉を鳴らした。
そうか、美味いのか。
知らなんだ。
「言われてみれば、焼き肉の匂いだな」
雄二も囁いた。
「山王が負けたら熊肉のバーベキューだね」
由宇が囁いて笑う。
恐ろしや。
でも美味しそう。
山王とドラゴンの激しい戦いの影で俺達はお腹を鳴らしていた。
だが、残念な事に、山王はインファイトが凄く強かった。
何度も、ドラゴンの懐に入り込むと、球雷で焦げた場所に執拗に爪で攻撃を加えたと同時に再度の球雷をその場所に加えた。
「ギィィィィッ! 」
流石のドラゴンも身の危険を感じたのだろう撤退していく。
あれほどのサイズの違うドラゴンを撃退するとは。
「バーベキュー……」
由宇が物悲しい声を呟く。
俺達はがっかりしていた。
俺が山王を助けたのが間違いだったような気がしてくるから不思議だ。




