第一部 第十二章 ワーム
「こっちのも同じ所にあるよ。肝臓のあたりかな? 」
由宇がもう一体のゴブリンの内臓を探って見つけたようだ。
「調べてみないと分からないけど、金だと思う」
俺が水洗いしたそれをしげしげと眺めた。
「まさか、二階堂家の金山って……」
雄二が真顔で突っ込んできた。
「可能性があるな。昔、祖父が二階堂家の金だって木箱を開けて見せた時、こんな感じのボコボコした金の塊が木箱に入ってた」
「マジかよ! 」
「凄いわね! 」
雄二と由宇の目がきらきらしている。
嫌な予感がした。
二人の目が金の塊の形をしている。
その時、さらに叢が動いて、そこからゴブリンが五匹現れた。
「ギヒヒヒヒヒ」
「クケケケケケ」
仲間の死体を見て怒りに燃えるよりも、俺達のような獲物がいるのが嬉しいらしい。
舌なめずりをして棍棒を構えて来た。
まあ、普通の奴なら悲鳴を上げるよな。
でも、目が金の塊の形になった雄二と由宇には通用しなかった。
雄二が次々とゴブリンの頭を斬り落としていく。
鮮やかなもんだ。
そして、由宇はゴブリンの頭を鉈で勝ち割ってた。
あーあーあー、絶対彼氏なんか出来ねぇよ。
断言してやる。
嬉しそうに鉈でゴブリンの頭を何度もカチ割ってるのを見て、怯えない男はいないだろう。
駄目だ、こりゃ。
しかも、雄二も由宇から使い捨ての薄いゴム手袋を貰うと刀で裂いて肝臓のあたりをほじくっている。
由宇も同じだ。
まあ、ドン引きするわな。
「あったあった」
「やった。すげぇぇぇ」
由宇と雄二の喜びの声が響く。
と、その時、嫌な予感がした。
雄二も由宇も気が付いたみたい。
ゴブリンの死体が下から出て来たものにぶち抜かれる。
「ワーム? 」
「それっぽいよね」
俺の言葉に由宇が返す。
どうも、ゴブリンの死体を土から出てきて食い漁っているようだ。
こちらに来られたら困るので、焚火の薪を蹴りあげてあたりにばら撒いた。
「ギギギギィィィ! 」
土を掘りぬいたのに、焚火の燃えた薪に当たったワームが呻いた。
焚火の燃えた薪が拡がってるせいで、俺達には寄ってこない。
と言うか、ゴブリンの血に反応しているのかもしれない。
ピンポイントでゴブリンの死体を食べに来ている。
「とりあえず、早く動けるみたいでないから、移動しよう」
俺が荷物を纏めると二人に言った。
三人で走りながら、その場を離れた。
ひょっとしたら、木の上で暮らした方が良いかも。
どえらいとこに来てしまったようだ。




