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STAR SKY GUARDIANS  作者: 花海
第二章 幽閉心壊都市パチェリシカ 前編~暗夜に煌く雷閃~
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第2章38 牢獄への帰還、ありえざる再会

馬鹿面鳥は俺の顔を見つけるや否や、嬉しそうにドタバタと歩み寄ってきた。

その背中の上でリナは落ちまいと、なんとか手綱を握ってバランスを取っている。

その様子をハラハラしながら見守り、なんとか俺のところまで辿り着いた。


「ようやく見つけましたよ!苦労したんですから!」


久しぶりに向けられたリナの笑顔が、先程までの出来事が全部嘘だったんじゃないかと思わせるほどに眩しかった。

だが、それが嘘ではないと頭の存在が物語っている。


「なんだッピ!?この頭の悪そうな鳥!!」


開口一番、馬鹿面鳥に悪口をぶつけるぺピー。

お前は人のこと言えないだろう。いや、この場合は鳥って言うべきなのか?

悪口を言われた馬鹿面鳥は、ぺピーの言葉が癪に触ったのか俺の頭の上にいるぺピーを口で咥えると、勢いよく首を振って地面に叩きつけた。


「どぉあ!?このクソ鳥!!なにしやがるッピ!!」


「バーーーーーカ!!!!」


おもちゃを見つけたと言わんばかりに煽る馬鹿面鳥。

それに対抗しようと、短い手足をバタバタさせて歯向かおうとするぺピーを抱き抱え、俺は馬鹿面鳥に跨った。


「離せッピ!!こいつを一発ぶん殴らないと、僕の気がすまないんだッピ!!」


「はいはい、あとでなー」


あんなことがあったばかりだと言うのに、元気がありあまっているぺピー。

かつてないほどにジタバタと腕の中で暴れている。

これほどの状況を経験しておきながら、こんなバカができるのは大馬鹿者なのか、それとも肝が座っているのか。

……うん、前者だな。間違いない。

顔から知性のかけらもみあたらねぇや。

そんなペピーを見てリナはくすくすと笑っていた。


「騒がしいやつなんだ、気にしないでくれ」


「面白い鳥さんですね!もしかして……ひろお兄さんの召喚獣だっったりするんですか?」


「まぁ……そう言える……のか?」


実際セリナから託されたような形だし、そうなのかもしれない。

ペピーはついてくることを嫌がってはいたから、言うことを必ず聞いてくれるかと言うと違うと思う。


「それにしてもあんなことがあったあとだったので、もしかしたら皆さん攫われてしまったんじゃないかって心配していたんですよ。……皆さん無事で本当に良かったです」


「皆さん?ということは·····葵達は既に街に戻ってるのか!?」


「はい!今は私の家の空き部屋を皆さんに使っていただいています!ひろお兄さんのお部屋も空けてあるんですよ!」


「……それならなおのこと早く戻らないとな」


日はすでに海の向こうに沈み始めている。

急ごう。こんなところにまできて、呪いに殺されるなんてたまったもんじゃない。

リナから手綱を受け取り、沈みゆく太陽を追いかけるようにパチェリシカへと走った。


パチェリシカに辿り着く頃には、城門を管理している兵士が今にもそり立つほどの大きな門を閉じようとしている最中だった。

馬鹿面鳥が全速力で走ってくれたおかげもあって、滑り込むような形でなんとか街の中に入れてもらえることができた。

それと同時に、左手に浮かび上がっていた呪いのような紋様も消えてなくなった。


「なんとか……戻ってきたな」


門を潜り抜けて目に飛び込んできたのは、一週間前と変わらぬ活気と人口密度。

そして、訪れたばかりの時にはあまり意識していなかったが、街全体をよく見ると学園に近づくごとに足場が盛り上がっており、外周よりは小さいものの区画を分けるためか壁が造られていた。

リナの家に行く時にはこの壁を超えた記憶はない。


「……どうかしたんですか?」


急に動きを止めた俺を見て、リナが不安そうに俺を見る。


「街中にある壁が気になってな」


「あれは……階級ごとに街を区画しているんです。上部にいるほど何かあった時に助けが来やすい作りになっているみたいです」


身分ごとの壁の象徴……か。

きっとそれだけじゃないだろう。

街の中に防壁をさらに設けることで、守りを更に固めているというのもあるのだろう。

学園に近づくにつれて勾配が上がっているのも、何かあったときに守り側が確実に有利になるための設計だ。

……なるほど。

これがパチェリシカが攻めにくい理由か。

城壁を突破するだけでも困難なのに加えて、突破しても第2、第3の壁が立ちはだかる。

それらを超えて親玉の前に無事で立っていられるのが、果たして何人になるのか。

……考えたくもないな。

日も落ちて暗くなった学園までの道のりを見上げる。

街灯に照らされて、不気味なほどに周囲よりも明るく。

その光の先で、学園の正門は口を開けていた。

早くこいと。

お前を飲み込んでやるぞと言わんばかりに。


「リナ、ここまでありがとう。ここからは1人で行くよ。一応試験だし、何よりも……」


試験の始まり方について。

何より、命を命と思っていないやり方について、文句を言わなければならない。

……ここまで戻ってきたものとして、言わなければならないんだ。

俺の顔を見て何か感じたのか、聞き分けよくリナは応じてくれた。


「では、お部屋を準備してお待ちしていますね!」


馬鹿面鳥から降り、リナと別れて道を進んでいく。

1つ、壁を越える。

それは、階級と格差の壁である。

2つ、壁を越える。

それは、秘密と策謀の壁である。

3つ、門の前に立つ。

それは罠であり、絡み合う糸であり……。

救いのない混沌への入り口だ。




わぁ!とあたり一体から歓迎の声が上がる。

帰還おめでとう!!

合格おめでとう!!

端々からおめでとうと祝福される。

だがその言葉に中身はなかった。

気持ちが悪いほどに狂気的な祝福を受ける道のその先に、奴はいた。


「お待ちしておりましたよ。D()()()()()()()()


「……招待状を寄越した方直々に出迎えてもらえるとは、光栄だな」


「もちろんですとも。君には期待していましたからね。……死の森へ送り出したとしても、必ず帰還するはずだと。私の期待通りになってくれて、非常に満足しています」


……今、こいつは何と言った。

死の森へ送り出したとしても?

あそこまで馬車で運んだことが、意図的だと言いたいのか?

あれほど危険な場所を、意図的に選んだというのか!?


「改めて自己紹介を。私の名前はエロヒム。未来ある有望な若者たちへ知恵と力を提供するため、この学園を開校し運営するただのしがないおじさんです」


にこりと俺に向かって微笑んだエロヒムと名乗ったそいつは、まだ遠くにいるのにも関わらず捕まえられたと錯覚するほどのネットリとした気持ちの悪い眼差しをこちらに向けていた。

こいつとは関わってはいけない。

本能が警鐘を鳴らす。

だが、ここで怖気付いてしまっていいのか?

例え、対立することが避けられない人たちであったとしても、目の前で死んでいった命のために立ち向かわなくていいのか?

……立ち向かうべきだ。

平気で兵士を犬死にさせるような選択をとる奴が、まともであるはずがない。

だから、1つだけ。

これだけは、答えてもらう。

気持ち悪さを堪えながら、エロヒムへと近づきその正面へと立ち、啖呵を切った。


「エロヒムさん。1つだけ聞かせてほしい。……ここで学ぶ学生はあなたにとって何なんだ?」


その質問にエロヒムは顔を近づけ、笑いながら答えた。


「決まっているでしょう?……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ」


気がつけば、刀を鞘から引き抜いていた。

こいつは、ここで、殺さなければならない。

だが、その刃が奴に届くことはなかった。

特別な力が働いたわけじゃない。

ただ、どこからともなく現れた奴を守る人の手によって、受け止められていた。

止められること自体は想定していたことだ。特に問題はない。

問題は、俺の攻撃を受け止めたのが……ここにいるはずのない死んだ人だってことだ。


「紫雷……さん!?」


目の前にいるのは、かつて共に背中を預け戦った恩人で。

グレゴリアス襲撃の際に亡くなったはずの人だった。

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