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カミラギ・ゼロ~神螺儀・零~  作者: Sin権現坂昇神
第三章 教師妖怪大決戦
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第CLxxxviii話 突破口 -九尾決戦・二拾七『千代攻略戦、三日月ノ咆哮』-

れいばゆきあつ。それが俺の名だ--

「お前は今この瞬間から【れいば ゆきあつ】だ」


 幼少期の記憶は(ほとん)どなかったが、父のあの目だけは覚えていた。あの野望に燃える眼。その目は父にいつから()りついたのだろう……。俺は幼少期から父から厳しい(しつけ)を受けてきた。初めは立つまで暴行と鞭打(むちう)ち。次は行儀(ぎょうぎ)よく食べなければ(おり)に閉じ込められ飯抜き。時には(たき)の上流から(なわ)で結ばれ、自らの手で魚を取ってこさせられた。なぜ俺は幼少期から命の危機に何度も(ひん)しながら生きてこれたのか……。


 ――生き続ければ、きっとまた母の胸に抱きしめてくれる……


 産まれて最初に母の胸に抱かれたあれ以来、母から引き離され、母のぬくもりを求めて父の厳しい教育に只管(ひたすら)()えてきた。……そして13歳の時、(ようや)く生まれて初めて父の教育その5001回目『高さ500メートルの滝から落ちてくる丸太を足場にして滝の上流まで登り切って、その場から父に(拾った丸太で)一太刀食らわせる』を成功させることができた。(うれ)しさのあまり父が許可を言う前に、母がいる一山上の家に走って抱きしめてもらおうとして、とを勢いよく引いた、その時――。


「……」


 一目見ただけで理解した。これは誰がどう見ても殺人だ。首を()っ切られ、半円を描くように壁や地面が真っ赤に染まり、こと切れた母がぐったりと後ろに(くず)れ落ちていた。


「……」


この場合どうしたらいいんだろう……。ずっと生きて母を抱きしめたいと思っていた。今目の前にいる母を自分はどうしたいんだろうと思い、考え――、そっと母の胸にしがみついた。


「冷たい……」


 心臓は微動(びどう)だにしない。(つい)に二度目の抱擁(ほうよう)は叶わなかった。なぜだか悲しいはずなのに涙がどうしても出ない。だから泣くまでじっと母の死体の感触を感じていると――、不意に視線が母の机の方に向いた。


「……」


何故か気になる……。母を優しく寝かせ、机の三つある中の一番上の(たな)に水色リボンが隙間(すきま)から飛び出していた。(これは……)と思った俺がその棚を引いてみると、そこには母の日記があった。使い古されているような汚れを見るとずっと何かを書き記していたんだろうか……。日記を適当にぺらりと(のぞ)いてみると、母が俺に会う時に残しておこうとした教育の数々が書いてあった。……そしてもう一つ。


「『父上が俺にしようとしている事』……?」


 ページが最後の方に差し掛かると、それが書かれていた。母は一体父の何を知って、俺に何を教えようとしているのか。俺は1ページをめくった瞬間、背後に父の気配がした。


 ……………………。

 ……………。

 ……。


「何をしている? 母の死体を見ていないのか?」


 父はじっと疑いの眼差(まなざ)しでこちらを見ている。それはそうだ。母が死んでいるのなら、母に抱き着いて泣きじゃくるはず……俺だってそう動くと思っていた。……だが、全く感情が()いてこないのだからしょうがない。ただ、これ以上の沈黙は身の危険だ。どう切り抜けよう……。

父の雰囲気や言葉からどことなくこの殺人現場の粗筋(あらすじ)が分かった。そしてこの日記を読ませるわけにはいかないことも……。俺は父に見えないように、引き出しから日記を(ふところ)の中へそーっと移動した。その間、何を言うかを選択し――。


「はい。母上が(のこ)したものはないかと探していましたが、ありませんでした」

「……………そうか」


 父の重苦しい視線が行篤(おれ)の全身を(くま)なく探して、何かを隠しているかを探して――、


「その胸元にある紙のようなものはなんだ?」


 行篤はぎょっとした。が、大人しくその紙を父に見えるように取り出してこう言った。


「母が遺した手紙でございます」

「なぜ嘘をついた?」


 父は更に眼光を広げて行篤を責め立てるが、行篤も負けずに返した。


「私の手元に遺して後で何度も読み返し――」

「いらん、渡せ」

「……はい」


 父は、なぜこれほどまでに母の私物を渡したくないのだろうか。だが母の日記を開いた時に(こぼ)れ出た手紙のお(かげ)で何とか切り抜けた。まさか母はこうなることを知っていたのだろうか……。そして父は、おそらく……自分の支配下に置きたいのだろう。自分のために動き、自分の目指す夢を代わりに俺に叶えさせようとするために……。さっき母に書いてあった日記を少し見た。始めのページにはこう書いてあった。


“あなたの父は元貴族でした。しかし貴族のルールを破り、庶民(しょみん)()ちた。恐らく今も尚貴族に返り咲こうと、あなたを第二の父として利用しようとしているのです”


 母の書いてある通り。父の目はずっと俺を見てはいない気がした。俺を見ながらも、ずっと貴族として輝く自分と俺の姿を重ね続けているようだ。……もう、父のいた冷罵(れいば)貴族(きぞく)はとっくの昔に(ほろ)んで()くなったというのに――。






 父は、(はる)かに強い。


――ガンッ! ドンッ! ゴッ!!


幾度(いくど)となく襲い来る父の7つの武器を二本の拳で迎撃(げいげき)する行篤。行篤の拳は謎の女【夕斴(ゆうりん)今宵(こよい)】に教えられた呪文で力が段違いに強くなったお陰で、何とか父の攻撃を防ぐことができている。(おの)で俺の防御を壊し、日本刀で俺の型を崩し、俺が武器を奪おうとすると鎖鎌(くさりかま)で俺の手を避けながら距離を取り、空いた距離から長銃で射殺。左足を一気に後ろに下げそれを避け、射殺できなければ……、


「っ……! (からくり(ばち)!?)」


 背後から迫る父特製の人造蜂が自爆狙いで襲い来る。父は細かい作業が得意で、色んなからくり動物を作って金にしていた……。武器に使ってくるとは――、って前の記憶にもあっただろう。思い出せ、斧、日本刀、鎖鎌、長銃、からくり動物……あと二つは何だ! 行篤の思考をさせまいと攻撃の隙を与えない父に、行篤は思わずこう思った。


(今更子供の頃の記憶を思い出すか――、確かに。今度こそ、最期の父との邂逅(かいこう)になるのだろう……)


 この戦いで父との因縁が終わる。未来の記憶がある行篤だから当然だ。ただ、それは行篤のピンチを新月(しんげつ)が助ける形で終わるのだが……、同じ結末で本当にいいのか……?


(俺の力は、他人が介入しなければ父に負ける程度の力だというのなら、今ここであの夕斴今宵(おんな)の力を使い(こな)せばいい……。新月を犠牲にして生き残ったこの命で、今悔い晴さん……!)

 

 行篤の想いと合わさるように闘志が燃え上がり、それと同時に二つの拳が燃え上がる。熊の手と融合した行篤の手がの灼熱が限界値を超えた時、ある一転をめがけて、己の指と指を絡ませ合体した両手が勢いよく、父の顔面に向かっていく。


「過去を変えろ、今を超えろ、母の仇を討つ――!」


振り上げた行篤の拳は、言葉に呼応するように黄金に輝き始めた。


――がおおおぉん!


 シンクロ80パーセント。行篤と融合しているツキノワグマのモモちゃんもそれに呼応するように咆哮(ほうこう)し、それによりさらに行篤の拳が(まばゆ)い光に満ち(あふ)れ、父がその光に(ひる)んだその時を見逃さず、行篤の拳の怒涛(どとう)の100連撃は更に一つのどでかい拳となって、父の顔面に命中した。


 その名も【三日月流奥義 (われ)一手(いって)-(くま)一手(いって)-我熊(われぐま)豪力(ごうりき)両手(りょうて)團餔覇(だんくうは)】。






ここは誰の目にも届かない場所。ある妖怪を食い、人の心の中に閉じ籠ることができる妖術『無見心邪(むげんここしま)』を手にした千代はその中で、娘(道具)の動向を長い間監視していた。そして今は、順調に育った【新月(しんげつ)】と【鬼奈(きな)(づき)】の憎しみを更に、周囲の人間と妖怪に憎しみを感染させ、互いに殺し合わせようとしている所であった。今までずっと、思い通りだった。娘を自分に化けさせ、新月と鬼奈月を(おとしい)れ、人間と妖怪の憎しみを極限まで高めて殺し合い、自分がその最期を見届け自殺する【全生物集団自殺計画】を達成させようとした。

そのはず……。

――人間((かわ)志野(しの)浩司(こうじ))一人程度なら変わらなかった。だがもう一人、【龕之桃之(こんのももの)(すけ)】が突然自宅に引き返しあの刀を使うことになり、【冷罵(れいば)(ゆき)(あつ)】までもが未来予知を違う行動をとり続けている。たった二人の人間の行動が【花園(はなぞの)千代(ちよ)】の未来予知の妖術を霧散(むさん)させた。千代が何度未来予知を使っても、霧散した未来予知は二度と力を発動することはなかった。


「何でだ……。なぜ未来が見えなくなった……? 二匹の人間ごときが俺の未来を変えようとしているのか……?」


 千代は混乱を始めたが、落ち着くのにそう時間はかからなかった。


「まあいい。こいつらの始末は他の奴らに任せる……。もしヤバくなれば千代子(娘)を呼べば――」


 千代はそう言うと、心の中で信号を送りたい相手の脳に送れる【(よう)電波(でんぱ)】(妖怪の初歩妖術)で、脳内からある妖怪数匹に信号を送った。


「……ああ、お前たちが頼りだ。その巨体でアリ共を踏みつぶせ――!」


 千代が脳内で声を送ると、その声が綿となって相手の耳元に瞬時に移動する仕組みで通話ができる(数秒の間はある)。千代が通話する相手の耳元に小さな綿が現れ弾けて消えた。そこからあの愛おしい声が響き渡る。脳が暑さでアイスが解けるように(とろ)けて何も考えられなくなる。……まあそんな脳みそはもうないけれど……。あ、いけない、いけない。早く返事を返さないと……。


《はぁ~い❤ 千代様の頼みならいっくらっでも~❤》

《おい! 俺様にいったんたぞこら!》

《は? あんた何よ! あたしの千代様よ!》


 そういえばこいつ隣にいたんだった。はあ……、苛立(いらだ)ちながら横目で毛嫌いする相手を見る骸骨(がいこつ)巨人(きょじん)餓者(がしゃ)髑髏(どくろ)】。夜中2時まで起きている人間をガシャガシャ音を立てながら食いまくるらしい。そして餓者髑髏に嫌われている妖怪は……。


《ふん! 千代様の右腕は(わし)やぞこんべらぼう!》


創造する妖怪【だいだらぼっち】。山や湖を作るのが上手いらしい(マイ〇ク〇フト遊んだらどうなるんだろ)。千代に助けられてからすっかり千代の相棒気取りになっているが、ずっと千代に引っ付いている餓者髑髏と毎回喧嘩している。そんな二人が(にら)む先にいるのは――。


「おー、おー、見られておるぞー、バカジ」

「誰がバカジだ、(かわ)志野(しの)浩司(こうじ)だ! ……ってかあれって、もしかして……」


 相対する二人、鬼奈(きな)(づき)新月(しんげつ)の間に割って入っている浩司(の体を乗っ取っているムジナ)であった。先ほどまで鬼奈月の毛攻撃を黒い野球ボールくらいの球体に吸収したことで、鬼奈月がムジナの能力を(はか)ろうとしている。一方新月はどこか体に異変を感じていた。


(なんかおかしい……さっきまで憎しみが私の体を動かしていたはずなのに、金髪の少年(?)が現れてから、憎しみの力が弱まったような……)


 新月は胸の方に、ぎゅっと握り拳を作って触れた。もしかしたらこの少年が何かを変えるきっかけになるかもしれない……そう思った。


クマの毛皮を可覆いかぶさったおっさん、それが行篤とツキノワグマのメタモルフォーゼ【三日月】です。つまり行篤はツキノワグマの手も合わさってすっごい強くなりました。ですがシンクロ率を高めればもっと強くなるかもしれません。がんばれ行篤とツキノワグマのモモちゃん!

そして浩司とムジナの方も二体の巨人が向かっているようなので、早く続きを書かなくては……では遅れすぎたので、これにて構想しながらまた次回。

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