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カミラギ・ゼロ~神螺儀・零~  作者: Sin権現坂昇神
第三章 教師妖怪大決戦
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第CLxxxvii話 突破口 -九尾決戦・二拾六『千代攻略戦、三日月一閃、魔王初陣』-

過去は、蠢き、疼きだす

今を飲み込み、未来を踏みにじろうと・・・魔王の降臨を祝福するかの如く――

 太陽が燦然(さんぜん)と輝く下で、憎しみを植え付けられた人や妖怪者たちが今も(なお)、憎しみをぶつけあい戦い続けていた。そんな戦いの中心で、ゴツゴツした岩に座る【魔王ムジナ】は大きな欠伸(あくび)をした。眠たかったわけではない。ただ久しぶりに人の形で日光の光に触れたことで、体が過敏に反応しただけ。そう、これは――


(わらわ)の夜明けの欠伸ぞ……ん?」


 だが、そこには大きな題があった。手はごついし、どこか視界の高さが違う気がする……まあ、それは隕石(いんせき)と機械の残骸(ざんがい)の上に乗っかっているからだろうが、一番気になるものは……。


(また)の下に何かある」


 バッと(昔で言う)ズボンの(すそ)を広げてじっと確かめた。「うぉおい!」と近くの風使い女(新月(しんげつ))が叫んだが気にせず、その股にぶら下がっているぶつ(・・)を見た。


「……(ちち)(さま)よりも小さいな……ん? …………最初から童に付いてたっけ……?」

「戦のど真ん中で何脱いでんの、この馬鹿」


 魔王ムジナは風使いの女の(あき)れた(つぶや)きを無視して、そのぶら下がっているぶつを握って、千切(ちぎ)るようになげ――


「千切るな! 投げるなぁ!!」


 と、左肩から鼓膜(こまく)をふき飛ばさんほどの大声を出してきたことで、ぶつ(・・)をギリギリの所で守ることができた。ホッと一安心する左肩の黒い(けもの)


「ぞぞ!?」


 魔王ムジナが大目玉を食らったように驚いていると、左肩に黒い可愛げのないちびっ子マスコットが必死な形相(ぎょうそう)で物に手を伸ばしていた。短すぎる手だから届くことはないが、……そういえば童はさっきまでこんなちんちくりんの黒い物体の中に入っていたような気がしてきた。……いやよくよく考えると本当に入っていた。久しぶりに姿を変えたのでウッキウキで自分の体を触りまくった結果、おっさんの体だったことに絶望した所である。


「絶望ってなんだ! 絶望って!!」

「童の心の中覗(のぞ)き見するでない! おっさんが!」

「人の大事なものを引っこ抜く奴に言われたくない! 俺の名前は浩司(こうじ)だ! っていつの間にか入れ替わってる!?」

「……入れ替わってる!?」


 何故だか最後のセリフは声を合わせるようにしないといけないような気がした二人であった。(にら)み合うおっさん姿の中身が少女と黒い小動物に中身おっさん浩司(27歳)。その口火を切ったのは、近くで見学していた人間代表部隊隊長【龕之(こんの)新月(しんげつ)】であった。


(いくさ)のど真ん中で、堂々とち……あの、それを引っこ抜こうとするの辞めてくれない?」


 新月は正直すぐ気絶でもさせてどっかへ投げ捨てようかと思ったが、言葉で(さと)す道を選んだ。だが魔王ムジ……ムジナでいいか。ムジナは異物を徹底的に排除しようと(あらが)う。


「無理! 何か足と足の間にもう一本あるのがなんか嫌!」

「ちょっと待って! 俺の相棒を……!」


 新月の言葉はそよ風のごとくかき消され、一人と一匹の(せめ)ぎ合いが再開された。黒い獣がムジナの手を()みついたり、ムジナが黒い獣(浩司)を丸呑(まるの)みしようと(かぶ)り付いたり……仕方ない。無理やりにでもこの戦場から――と、新月がムジナの方へ近づこうとした、その時。


 ――ひゅっ


 と、ムジナの死角から、何かが向かってきた。よく見ると、九尾が放った自分の毛を何千本もの細矢として狙撃(そげき)してきたのだ。毛と言っても妖力で一本、一本を緻密(ちみつ)に編み込んで、何千もの細矢に狙われた者はその(ほとん)どが命中し、傷跡から壮絶(そうぜつ)な激痛の中で死に絶える、その名も『(はり)地獄(じごく)(いち)(せん)』。新月は咄嗟(とっさ)に「危ない!」と言おうとしたが間に合わない。そのままムジナの後頭部に直撃した――。






 黒い(ひとみ)に変色した(かわ)志野(しの)浩司(こうじ)(に入ったムジナ)が狙撃される数分前のこと。新月の父【龕之桃之(こんのももの)(すけ)】は、妻を殺された憎しみに駆られて九尾の復讐相手の生き残りを根絶やしにするため、鬼奈(きな)(づき)の気配を追って走っていた。赤の他人ではあっても、妻を殺した妖怪の娘。そいつも親子の情があるなら、母親を殺した俺に復讐したいだろう。だったらその前に殺すまでだ。桃之助はそんなことを考えながら武器を背中に(たずさ)え走っていた――が。【浩司】の体を乗っ取った【ムジナ】が攻撃を受けたその時、桃之助の脳にある衝撃が走った。






 龕之(こんの)屋敷(やしき)の桃之助の部屋にて、一人の忍者がごそごそと手を動かしながら、ただ無音に動いて――、そして止めた。


(あるじ)(さま)……、罠の設置終わりました」

《そうか――、すぐに戻れ》

「はっ……」


 【()馬氏謀屠(ましぼうど)】(主)の命令は絶対。桃之助の命を奪い、龕之家を乗っ取る計画の元、忍者【()(ぜん)(まる)】は桃之助の部屋中に罠を張っていた。罠は十、いや十五。ここまでやれば、少しでも桃之助を弱らせることができる。罠はあくまで弱体か足止め用。妖怪退治屋の頭なら手強いのは確実。何重にも張り(めぐ)らされた罠で弱らせた上で、この俺の手で命を頂く……。鬼禅丸は、最後に罠が完全に隠されているかの最終確認をして、ようやく主【阿馬氏謀屠】の元に戻ろうとした。


 ――その時。


「まだ足りないじゃないか?」

「!?」


 背後から聞こえた声に、鬼禅丸の全毛が逆立った。声の主は桃之助。頭首【龕之桃之助】である。数十分前にこの部屋を出て行って、まだ妖怪たちと戦っているはずだ。緊張が限界突破の鬼禅丸を背中に向けて桃之助は続けてこう言った。


「罠の数は最低でも30,……いや50は欲しい所だ」

「……」


 振り向けば殺される。鬼禅丸はそう直感した。出入り口は桃之助のいる出入り口付近だけ。桃之助を振り切って逃げるか、桃之助を殺すか、大けがを負わせて逃げ切るか……。誤解だったで帰してもらうことは絶対にないだろう。……いや、桃之助を倒して逃げ切る方が不可能だ。この間、十秒。桃之助の目は鬼禅丸の全身を(くま)なく凝視(ぎょうし)している。次の行動が鬼禅丸にとっての命の分岐点(ぶんきてん)となった。

 鬼禅丸は慎重(しんちょう)に言葉を選び、桃之助にこう問いかけた。


「こ、これは――、そうです。あの最奥の刀が見とうございまして……我慢ができずについ部屋に入ってしまいましてたいっへん! 申し訳ない!」


 鬼禅丸は振り向きざまに素早く土下座した。最奥の刀。その名は【業魔(ごうま)塵鏖丸(じんおうまる)】、桃之助が妻の(かたき)のためだけに造ってもらった最初で最後の武器だ。仇を取った後すぐに廃棄(はいき)しようとしたが、(つか)を握る度に思い出す妻との思い出の数々であり、桃之助は忘れ形見(がたみ)として(のこ)すことにした。ただ使わなければ(いず)()びると思い、時折(ときおり)(さび)()きをしていたことで、今でも()こぼれ無しの(つや)のある刀身を拝むことができる。電気が付いていない薄暗(うすぐら)いこの部屋でも、その美しさは健在だ。鬼禅丸は桃之助の身辺を調べ上げ、業魔・塵鏖丸のことまで調べ尽くしていた。

 桃之助は業魔・塵鏖丸に目を移すと、(こぼ)れるように言った。


「そうか……あれが見たいのか……」


 そして桃之助がその刀を見るその間は、唯一桃之助に(すき)が生まれる……! 鬼禅丸はうっとりと昔の女を思い出す桃之助を横目で確かめると、桃之助の視界からゆっくりと離れていき、桃之助の様子を(うかが)いながら静~かに後ろ歩きながら出入り口を出て行った―――。


「――――あ……れ?」


 (まばた)きした瞬間、鬼禅丸の視界が(なな)めになる。桃之助に何かされたかと思い、桃之助の手元を凝視するが、少しも変わってはいない。……ん? いや、よくよくよく見れば……桃之助が(たずさ)えている刀の尻の位置が数ミリ上がっている。まさか――、


「切られ……」


 ドサっ……。鬼禅丸の頭部を横から一線、その外の部位をいろんな角度で何百、何千もの一線を(あた)えていた。鬼禅丸が己の死を知った瞬間、体は切り身魚のようにドサドサと(くず)れ落ちた。大量の血は噴き出すことなく、吸い込まれるように地面に(したた)り落ちた。

 刀音を立てずに収めた桃之助は鬼禅丸の最期を看取(みと)ることなく、ただ業魔・塵鏖丸の所まで近づき、業魔・塵鏖丸を両の手でゆっくりと優しく握りながら、こう言った。


無月(むげつ)。なぜ私は忘れていたのだろう……今まで長い、長い重石(おもし)を頭に()き詰められて生きていた気がする……無月。この“憎しみ”は一体誰のものだ?」


 桃之助の頬に一筋の涙が零れ落ちる。【無月】とは桃之助の妻。無月が死んで以降、初めての涙はひんやり冷たく、どこか温かい。ふと天井を見上げ目を閉じる。(いま)だに思い出す。無月との記憶。新月が生まれてからの記憶。


「いいのか? もう一度、私にこの刀と共に戦うことを……?」


 刀に問いかけるように(つぶや)く桃之助、数秒して刀に言葉を返されたように、桃之助は思わず刀を強く握り、答えた。その際、刀身の方を握った左手から血が(にじ)み出る。だがそれは痛みなどではない。それはきっと――。


「無月、今まで(おろ)かな私で本当にすまない。新月にも(つら)い思いをさせた。もう、憎しみのままに動かない。必ず……この手で守りたいものを……(まも)るために握ろう!」


 桃之助は静かに、そして強い意志を込めて業魔塵鏖丸(無月)に(ちか)った。






 まさか……! 桃之助が……未来を変えた!?

 浩司とムジナが本戦に巻き込まれる中、行篤はその戦の片隅(かたすみ)で父と殺し合っていた。ただ、行篤にはこの世界の未来を知っている。

――桃之助がこの戦を()らし周り、更に人と妖怪との憎しみを拡散させる立役者になる未来……だったはず。だがしかし、一向に桃之助がこの戦に参戦しない。もうとっくの昔に辿り着いてもいいはずなのに……。


(これも……浩司(あいつ)の仕業だというのか……?)


 正しくはムジナの仕業(しわざ)なのだが……行篤は柄を握り直して、息を再度整えた。父と私、この戦いの行く末は……『私が死にかけ、その私を守るために新月が(たて)になる。その傷が原因で新月は……一年後に死ぬ』。


 その未来を前に、行篤は迷ってしまった。戦いの最中で、一瞬一秒も油断できない敵の前で……。その(すき)を、行篤の父は見逃さなかった。刀を天に(かざ)し、そのまま振り下ろす。一瞬の隙が敵の攻撃を生んだのだ。






 一方ムジナのいる合戦上では、鬼奈月は細目でムジナの頭を注視していた。


(鬼奈月の攻撃は見事命中……していない?)


 鬼奈月は目を疑った。ただの人間がこの攻撃を防げるわけがないと思っていた。だが、どうだろう。そいつは右肩の上で右手を後ろの方に持っていく形で、何かを掴んでいた。黒い、とても黒いが、何か見てはいけない身震(みぶる)いするほどの丸い球体。大きさは人の頭程度なのに、その黒い球体が、……間違いない。


「私の攻撃全てを吸収した――?」

「何を言っておる?」


 ぐらりとムジナは自分の首を鬼奈月の方に(かたむ)ける。黒い眼差しが鬼奈月体を金縛(かなしば)りのように動けなくする。


「もっとどす黒いもんも吸収しといたぞ。童に感謝せえ」

「……は?」


 鬼奈月はムジナの言っている意味が分からなかった。ムジナは黒い球体を鬼奈月に見えるように握ったまま、不敵な笑みを浮かべた。

 いや~ルリドラゴンアニメ化しましたね……ワールドトリガーもリブートするし! 最っ高のお知らせで今年を迎えることができました。私は去年の末からポケモンZAをやってまして……、まあ気づいたら来年になっていたというわけです。言い訳はここまで。とにかくあるキャラに言いたいことが一つ。行篤ごめん! めっちゃ行篤とモモちゃんで『三日月』に変身したのに、活躍を描けていない。次話こそは書くぞー! 一月の遊戯王のパックも気になる所ですが、あかね噺も順調にアニメ情報が発信される中、ワンチャン自分の大好きな打ち切り漫画もアニメ化こないかな……と謎の期待をしながら、次話を描いていくので、今年もよろしくお願いします。

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