第21話
「……はぁ」
ほんの二十分前の出来事を思い返し、またため息が出た。
まぁ、パズルのピースと格好いい事を言っていたが、つまりは制服のことだ。
私は茶色の革のカバンを両手で持ち、太ももを隠した。
思ってみれば当たり前のことだ。この学園は、進学校であり、良家のお坊ちゃまやお嬢様が多く通っている。つまり育ちのいいお嬢様が……ミニスカートなんて履くはずがなかった。
そもそも響さんが用意した制服だ。疑うべきだった。
日向子さんの嫌らしい笑みを思い出す。
あの人、絶対に気づいていたな……。
校門に立った私は、制服は同じだというのに、好機の目で見られていた。
動物園のパンダになったような気分だ。
いや、男子生徒からは好機の目だが、女子生徒からは蔑んだ視線を送られている事を考えると、パンダではなくカバやブタとかの気分だろう。
あれっ?
動物園にブタっていたっけ?
「……早く中に入りたい……」
教室に入りさえすれば、生徒数も減り、こんなに見られることはないのに。
そんな思いが口から漏れた。
腕時計を見てみると、時刻は八時十五分を過ぎていた。
パンフレットには八時二十分からホームルームを行なうと書いてあったので、生徒達は足早に校門を通っていく。
私を見る視線の数もだんだん減っていった。
かく言う私はと言うと、校門すら通れないでいた。
八時には待っているはずのNESTの協力者がまだ来ていなかったからだ。
辺りを見回しても、まばらに生徒はいるが、みな私のスカートに視線を送るだけで、近づいてくる人はいなかった。
そもそも私はその協力者が、男なのか、女なのかすら知らなかった。
こんなことなら、日向子さんにお願いし、協力者と連絡が取れるようにしておけばよかった。
もう一度、時計を見てみる。八時十八分。
「……はぁ」
潜入捜査初日から遅刻しそうだと思うと、またため息が漏れた。
ミニスカートの遅刻してきた転校生。
目だってしょうがないな……。
「はぁ……」と、またため息を漏らすと、「ため息つくと幸せが逃げるっすよ」と、突如声をかけられた。
「……ッ!」
驚き、目を見開く。
突然話しかけられ、驚き目を見開いたわけではない。その声が、隣から聞えてきたから驚いたのだ。
私は勢いよく右に首を回す。
隣に……デート中のカップルのような、いつ手が触れ合っても可笑しくない距離に、声の主は立っていた。




