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青い夏  作者: 月丘 翠
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7/9

始まった!バンド大会へ①

「おはよう」

いつものスタジオに入ると、すでに陽樹と拓海も来ていた。

早めに来たつもりだったのに、どうやら考えていることは同じらしい。

「おはよ、風夏ちゃん」

陽樹はいつももの爽やかな笑顔を浮かべ、横で拓海は小さくペコっと頭を下げた。

いつもなら色々話したりするのだが、今日は言葉が少ない。

とりあえずと演奏の準備をしてみるが、なんとなく落ち着かない。

陽樹や拓海も同じよようで、チラチラ扉の方を見て心ここに在らずといった感じだ。

落ち着かないのも当然だ。

今日はバンド大会の予選の結果が出る日なのだ。

「まだかな…」

結果は洋人の家に郵便で届くことになっている。

ドキドキしながら待っているとバンとドアが開いて、洋人が入ってきた。

手には封筒を持っている。

「待たせたな」

ドキっと胸が跳ねる。

「お前ら結果が気になってんだろ?」

そう言って、洋人は封筒を差し出した。


「・・・開けるぞ」


洋人が封筒の上をびりびりと開けていく。

息を吸うのも忘れて、取り出された用紙に目をやった。


「第一次予選のお知らせ・・・」


「次の予選日が書いてあるってことは・・・」


「通過した!」

「っしゃああああ!」

洋人と陽樹が喜びを爆発させる中、私と拓海は緊張からの緩和でへたり込んだ。


「お前達、俺らが目指すのは優勝だ!こんなので満足するなよ!」

喜びを爆発させて飛び跳ねたくせに偉そうに洋人が言って、手を出した。

「もちろん、優勝しかありえないよ」

陽樹もそれに手を重ねた。

「僕も・・・頑張る」

拓海がさらに手を重ねる。

風夏がそれをぼんやり見ていると、「お前も」と洋人に促される。

「私も・・・優勝したい」

そっと手を重ねた。


「絶対優勝するぞ!!」

「オー!」


☀☀☀


第一次予選は、関東近郊のライブハウスで行われる。

演奏は一回のみ。15組が演奏し、その中の8組が決勝戦に出ることが出来る。


予選会場の前に行くと、ギターやキーボードを持った若者たちがたくさんいる。

「風夏ちゃん、キーボード持つよ」

陽樹がひょいとキーボードを持つ。

「ありがとう。そういや松崎君はどこだろ?」

拓海が無言で指さす方を見ると、洋人が歩いている。


白のTシャツの上から黒の半袖ジャケット、黒のパンツ姿で、いつも以上に気合の入った服装に髪形で、みんなの視線を集めている。

毎日にように会っているから忘れていたが、洋人はイケメンだ。

今日はある程度、服装を統一させるために白と黒をメインにと言われている。

陽樹は白のシャツに細いネクタイをつけ、黒のパンツ、拓海は白の半袖パーカーに黒のパンツだ。


「おい、お前なんで今日もジャージなんだよ」


風夏は白のTシャツに黒のジャージだ。

「白と黒だったらなんでもいいわけじゃねぇよ」

「まぁいいじゃない。いつもの服装の方がいつも通りの演奏ができるだろうし、風夏ちゃんはジャージでも可愛さは変わらないしね」

陽樹がにこっと笑いかけてくれる。


だが、この後会場に入っていくときに気づいた。

洋人と陽樹の顔立ちの良さでかなり目立つ。

みんながこちらを見ている。

拓海も可愛らしい顔立ちに身長が180㎝を超えてスタイルがいい。

毎日のように会っているうちにイケメンなのを忘れていた。


(それに比べて、私は―)


3人の後ろをジャージとTシャツで歩くマネージャーにしか見えない。

女子の視線が痛い。

風夏は憂鬱な気持ちになりつつ、予選会場の待合室に入った。

そこではそれぞれのバンドが最終打ち合わせをしている。

風夏たちのバンドの出番は9番目だ。


「今までの練習成果を出せれば、予選は絶対通る。で、風夏」

「はい?」

突然呼ばれてびっくりする。

「先に言っておくけど、他のバンドの演奏聞いて、例えすげぇと思ってもそれを超える演奏をしようなんて思うなよ。いつものままで演奏することを心掛けろ」

「あ、うん、わかった」

洋人はそういうと自分のギターの調整に入った。

「彼らは13番目か、ラッキーだね。彼らより後だと絶対緊張するから」

陽樹がそういうと拓海も頷いている。

「彼らって?」

「今回の優勝候補。Winter soulっていうバンドなんだけど、とにかく曲も歌も楽器も全部うまくてすごいんだよ。もうデビュー目前って聞いてる」

陽樹の視線の先には男性4人のバンドグループがいる。あれがWinter soulらしい。

「僕たちと同じ高校生バンドだけど、自分たちでYouTubeをやっていて、結構再生回数もいってるんだよね。今回の大会のポスターにもHPにも彼らが載ってて、知名度はそれなりにあるんだよ」

拓海もコクコクと頷いている。

「そんな人と戦って勝てるのかな」


「勝つ」


洋人の力強い声が待合室に響いた。

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