見捨てられた世界
俺は卵になった。
神様は卵細胞と言った。
「異能に、世界に復讐したくないか?」
そう聞かれた時、断ったんだ。
「誰にも復讐したくない」って。
銀色の異能たちは、俺の感情に同化した。
「そう」
神様の返事はそっけなかった。
しかし、諦めてくれたわけでもなかった。
「じゃあ、もう一つ身体を作ろうか。ずっと考えていたんだ。この身体のスペアを作っておくのも悪くないってね。そこに丁度良く、キミが現れた。こんなにたくさんの、同じ種類の強い細胞がね。浄化をしようとも考えたけど、これこそチャンスじゃないか」
少し鼓動を早まらせて、神様が言った。
今、俺はどんな外見をしているんだろう。
ふと、気になって聞いてみた。
「君の姿? 卵だよ。わたしの卵細胞だ」
気が付くと、もう蝶の姿もない。
俺は顔どころか、身体も失くしたということか。
「これからどうなる?」
薄々わかっていることを聞く。
「お前を利用した、トモくんとやっくん……あいつらにはこの世界をくれてやる。代わりに、お前の卵の中に新しい世界を創造する。異能が育む世界。お前はわたしと並んで、新しい世界の創造主となる」
もの凄いスケールの大きなことを、日曜大工のような気軽さで話す神様。
「あの二人が望んでも叶わなかった、異能の支配する世界だよ。わたしの気持ちはもう、次に生まれる新世界に向いている。こっちの世界はもう、終わるに任せよう。もう一つの身体から、この世界の滅亡を、自分の古い身体が朽ちるのを見てみたい」
神様はサディストだな。
この人が一番の異能だ。
トモくんとやっくん、そして俺の知るみんなは、終わるのを待つだけの世界で生きているんだ。
本当に終わってしまうのか?
神様に見捨てられた宇宙で、大人しく終わってくれるのかな?
やっくんという異能を残しているあの身体。
俺の顔で生きているやっくん。
トモくんとやっくんの愛は、神様なんかを必要としないで、存在し続けるのではないか。
その時、神様が囁いた。
「二つ目のわたしの身体。わたしは今、お前の方に心惹かれている。この感情が何かわからない。ずきっと心臓が痛んだ。まだ、お前に付けられた傷が癒えていないのかな」
なんの話をしているのだろう。
俺の中で、最初の世界の鼓動が響いた。
この音、聞いたことがある。
鳥の鳴き声。
……トモくんの泣き声。
終了と開始のサイレンに耳を澄ませろ。
ミンナ、死ネナインダヨ!!
作中に登場する植物、鉱物、鳥類、医療的な背景について、2026年5月中まで連日Xにポストしております。
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万が一ご興味があれば覗いてみてください。
ここまで本当にありがとうございました。目に止めていただいただけで感謝です!




