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世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しろいつき
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 チャーリーのお仕事 5

 ◯ ケース5


 緊急事態が発生いたしました。ナリシニアデレート世界に悪魔が出たというのです。冥界の奥地、死神の巣の向こう側にあると言う地獄の住民が悪魔です。そんなものがこちらの世界に紛れ込んでいるなんて恐ろしい事です。

 ガリェンツリー世界にも潜んでいましたが、既にそんなものはいません。瘴気どころか地獄の気をまき散らす様な存在は今はいません。最も、隠れているのなら別ですが今の所は見つけていません。

 私はマリーの命令でナリシニアデレート世界の神官達と、外の結界の装置の場所にいます。神官達の護衛を仰せつかっています。マリーとビクトゥームがダラシィーとピピュアと合流し、中で戦っているはずですが、とんでもない邪気が充満しています。

 結界装置は何十にも張り巡らされ、穴が空く度に張り直しています。ですが、外にも邪気が溢れる程の状態。とても人が生きていられるものではありません。最悪の事態を避ける為に人が多い地区はなるべく結界を厚く張り巡らし、さらに霊力を送り続けるしかありません。

 二日目以降から、死神達は神殿の神官達が次々と応援にやってくるのを見て、ホッとしています。彼らだけでは到底持たなかったでしょうから……。順番に結界の維持を交代で始め、連携が取られる事になりました。後は中の守り神お二人と死神達との連携が上手くいくことを願うばかりです。ビクトゥームは悪魔戦はこなした事は無いですが、浄化が得意なのでこの中でも活躍をしている事でしょう。



「深青の宮が落ちたぞ!」


「結界にまた穴が?」


「張り直せ!」


「くそ!」


 五日目の朝、慌てている周りの様子から、宮殿が破壊されたようです。連絡と状況を見ようとする人が行き交い混乱した状況がしばらく続きましたが、戦いは激しさを増しているのが結界の外からでも分かります。

 宮殿は崩れ落ちましたが悪魔の一体が消えました。後二体です。


「どうやら上級悪魔が、残っている下級の悪魔を吸収しているようだ」


 その情報に中を映しているモニターを確かめれば、二体だった悪魔が一体になる所でした。闘争部隊の死神も疲弊が目立ちます。

 が、ここまで戦えているのは回復役がいるお陰でしょう。拠点となる基地(透明ドーム)があるのも大きいはずです。死神でもこの邪気の中ではマントの善し悪しがはっきり出ます。遮断する力も瘴気や邪気の侵蝕の強さに負けていては、中ではひとたまりもありません。私もこの中で何日も戦うのは無理でしょう。ピピュアの透明ドームが無くてはとても保ちません。


「サヴァンさん、死神の組合は何故応援を送ってこないのでしょうか?」


 私はこの作戦の間に知り合った方に話し掛けてみました。


「そ、それは……その、すいません」


 申し訳なさそうな顔で、自分では分からないと謝られてしまいました。新米の死神に聞いても答えは得られないようです。彼は最近中級に上がったばかりだとか。スクロールに書かれた魔法陣を魔結晶のはめ込まれた結界装置にセットしています。これも悪魔が出たにしては数が少ない様に思います。

 どうもやる気を感じません。三日目以降は殆どが神官達の持ち込んだものでまかなっています。


「派閥としては何処に所属しているのですか?」


「あー、ブラッディローズです……」


「トップのお名前は?」


「アルフレッド様です」


「そうですか。ありがとうございます」


 私は玄然神に連絡を入れました。ここまで応援が送り込まれない理由を聞いてみました。


「他の所が出るには報酬の関係で新しく契約をしないとならなん。途中からというのは入りにくい。そこの派閥が力を持ってないと人数が回らんから、アルフレッドとやらが応援を他の所に言わないとならないのだが……何処に掛け合っているのやらわからん。それとも、三日分しか用意してないなら、最初から悪魔の事は見逃す気だったかだ」


「そちらでお調べをお願いします。闘争を担当している死神も少ないようですし、悪魔に立ち向かうには少々頼りないようです。それに、回復がいなければ回っていた様には見えません」


少々怒りが声に乗った気がしますがそれは仕方ないでしょう。玄然神に罪はないと分かっていますが、それでもその組織の一員として、この事には注意をしてもらわないとこちらも困ります。


「うむ、まだ巣の中に膿みが残っておるか……マントでの秘匿は死神の得意だ。プライバシー侵害はうるさいし、みんな嫌がる。が、悪魔戦をそのように軽んじられては破綻は免れん。スッキリとさせるしかあるまい」


 画面の向こうで不機嫌顔を貼付けた玄然神が重い腰を上げるようです。


「よろしくお願いします」


 しっかりとお願いしておきました。


 六日目の朝には悪魔は影に入ったまましばらく出てきませんでした。下級悪魔を吸収したせいか安定しない攻撃力にいらだっているようでしたから、しばらく潜んでやり過ごす作戦かと思われます。

 このまま戦いを諦め、影から紛れて外に出られても困るのでここの大神殿にある温泉に使われている霊泉水の霧を結界内部に送り込み、邪気を弱めて行っています。死神の結界装置も少しこのうちに調べて見ました。

 どうやら瘴気……陰の気を纏った魂を通さない様にした結界のようです。無理矢理通ろうとすると一時的に意識体と魂が分解をしてしまう様なそんなものです。攻撃で穴をあけて逃げるしか無いようです。蜘蛛の巣のように魂を絡めとる様なものもありました。どれも物騒なものばかりですが、死神のマントを元に作られた結界ならそんなものでしょう。それがメインの装置で他は人間の霊魂を邪気から護るものやら物理結界にとお馴染みのものが並んでいます。神官達は主にこの街の住民用の結界をずっと維持しています。

 ですが、これを維持するのは並大抵では無理です。使い古された装置から見ても随分長く使い込んでいるのが分かります。この装置を多く持つ者が派閥の長となれる様な事をサヴァンさんが後ろから仰っています。

 これを仕入れれるものが戦いを制する様な事を言ってますが、逆にガーディアンのマントならこの装置無しでも良い様な事を言っています。しかし、ガーディアンは数が少ない為に装置頼りなのだとか……。これは少しお話を聞いてみるべきですね。


「顔を見せない奴らを信用は出来ないから、誰もガーディアンを呼ばなくなってる」


 サヴァンさんは溜息と共にそんな事を仰っています。


「そうなのですか? 昔に悪神や邪神に新人を狙い撃ちにされたらしいですよ?」


「それは知らない。知り合いがいるのか?」


「……」


 徐に結界の中を見ました。今は何処にいるのか分からないピピュアのベールは貴重なはずです。


「あ、中の可愛い娘か……見習いだったな。あの仕様のは(透明ドーム)見た事ないから本当に見習いだな」


「本当に見習いとは?」


 どういう意味でしょうか? 彼の顔を見れば少し困った顔をしました。


「あー、まあ俺達は色々あるんだよ……」


 説明しにくいという顔をしているので、無理には聞き出せそうにありません。それに、日が沈んでから悪魔が暴れ始めました。守り神のお二方のグリフォンが空で、悪魔の執拗な攻撃から逃げています。彼らが見つけたのでしょう。グリフォンも空を駆ける為のリストバンドをしていますので華麗に避け、翼を翻しつつ、空を蹴って方向転換しています。


「引きずり出せたか。良かった。これ以上は結界も持たないからな……」


 ホッとしたのかサヴァンさんが笑みを見せています。


「さっきから煙が上がっていますね」


 装置から変な色の煙が上がっています。


「スクロールが焼けてるんだ。また交換だが、こいつが高いんだよ……でもこの旧型装置が一番多いから」


 泣きそうな顔をしながら新しいスクロールを広げ出しました。また長い戦いが始まりました。魔法攻撃が減ってお互いのエネルギーをぶつけ合う様な戦いになっています。魔力素が減って魔法が成立しないのでしょう。閉じられた空間内には外のエネルギーが入っていっていません。遮断する死神のマントの力を改めて認識致しました。



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