表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜キヒロ鳥編〜  作者: na-ho
しろいつき
21/225

12 察知 ※

 ◯ 12 察知


 結局身分詐称は上手くいかずに振り出しに戻った。死神の僕を皆が認識したのだからしょうがない。街中の戦闘では多くの目撃とともに黒の神々の一人としてばっちり覚えられてしまったのだ。外を歩いたのなんてあんな一瞬だったのにおかしい。前ならそんな噂には決してならなかったのに、美人は注目度が半端ないのだと理解はした。悪い事出来ないって奴だ。


 被害者の女性は、好奇の目から逸らす為に、女性の為の町があると言うのでそこに連れて行かれる事になった。女性じゃない方々は他の町で別人として生きていける様に手配をして送り出すという。

 それまでにしっかりと僕が精神治療、というかぐっすりと眠って頂き、爽快な気分にして前向きになれる様に治療している。ただ、魂にまで食い込んだ傷は記憶を薄れさせてもぶり返す事があるので、その時は信頼出来る大神殿の神官に見て貰える様に、魔術用紙に書いた紹介状をしっかりと渡しておいた。信頼出来る神官なんて知らないけど、ラークさん宛にしといた。何か手を打ってくれるでしょ。


「家族ぐるみでの移動が実現出来そうでよかったわ。ここに残っている子達も独り立ちの準備を私の所でやらなければならないわね。ピピュアちゃんがいてくれて助かったわ。あの様な恐ろしい目に遭ったというのに皆が何とか前に進み出そうとしてくれたのだから」


 塔の崩壊から二日と半日、ネラーラさんは微笑んで満足そうだけど、何か腑に落ちない。僕の顔を見て首を傾げているネラーラさんに気になった事を聞いてみた。小さな事だけどスッキリさせたいのだ。


「彼らは神官候補だったはずですよね? 皆はもう神殿には行こうと思ってないんでしょうか……。彼らは信心する心を折ったのでしょうか?」


「そう、癒しの力を持っていたはずよね。集められていた子達はそのはず。何故か誰もその事に疑問を持たなかったわ。どういう事かしら……」


 僕の言葉にハッとして考える様に腕を組み始めた。


「送り出す前にもう一度、彼女達に聞いてみましょうか」


「ええ。おかしいわ。精神を操る者が紛れているかも」


 青ざめた顔でネラーラさんは解答に行き着いたみたいだった。言われたらその通りかも。それも街全体とかの規模な気がする。ゆっくりと時間を掛けて変えられている? 新参者の僕がまだそれに馴染めてないので気が付いたのかもしれない。


「それだと深刻ですよね。そうですね。ちゃんと見てみます」


 ぬけている僕が気が付いたのに、ネラーラさんが気が付かないなんて確実におかしい。影の精神支配が行われているとするなら……あ、西の塔はちゃんと見に行ったのだろうか? もう一度、ラークさんに連絡を取った。


「どうしたんだい、こんな時間に。ハニー、心配事かい?」


 それともベイビーと呼んだ方が良いかい? なんて言っている。呑気だ。


「あの、ラークさん。変なんです。さっきネラーラさんと話してて気が付いたんですけど、地下にいた人は神官候補だったのに誰も神殿に向かう事を言わないっていうか、気が付かなかったというか。西の塔についても誰も気が付かないから……」


 言っている間にラークさんの顔が厳しくなった。誰かに目配せしたのが分かった。


「妹達をそっちに送った。街全体に術が掛けられていると見ていい。集団意識への干渉だろう。頭から無かった事にされている。そこにこの術の主がいると見ていい。直ぐに警戒を取って隠れていなさい」


 言われた通りに僕はダラシィーを呼んで、テレサさんとネラーラさんと三人で隠れる相談をした。いつかのヴァリーの成人の祝いの時に使った広間で、ベールを広げて亜空間仕様の結界を作った。兵士達と使用人達を集め、広間の中央に集まる様に皆を誘導してもらい、悪意の有る無しを振り分けた。一人も該当者はいなかったので、そのままこの中で待機する事にした。

 ダラシィーは僕の隣で警戒をしている。死神達は町中の捜索と西の塔の偵察に向かった。守り神達は僕と一緒にベール内で報告待ちだ。


「加勢に来たわよ〜」


 マリーさんとビクトゥームがポースと一緒に転移装置をくぐって来た。


「今回は長く掛かるかもしれぬ。食料を確保しておくか? 地下に食料庫はあるのか?」


 何か勘が働いたのかネラーラさんが食料確保を言っている。


「はい。たいしてはございませんが、一通りはございます」


「これに入れてくるか」


 セーラさんは以前僕の渡した収納スペースを持ってきているので、今回はどうやらグリフォン達を連れてきていると見ていいかもしれない。


「あ、僕がいきます。調理用の鍋類とかも……」


「ピピュアちゃん、わたしと言うのよ」


 ここ最近はテレサさんに厳しく女の子指導をされているのだ。人差し指を立てて振りながらウインクしてくるテレサさんの注意に頷いて、言い直す事にした。


「うあ、わたしが行きます」


「いいえ、今回は料理長から使用人まで揃っていますからよろしいのですよ」


 僕達のやり取りを見て微笑んでいたネラーラさんには止められた。確かに料理人がいるのにしゃしゃり出るのは良くないか。ベールを何枚か渡して食料を調達に行ってもらった。死神達が深青のオアシスの周りを全部、町を守る為の結界で覆い尽くすのが感じられた。どうやら捜索の開始みたいだ。


「少し時間が空いたから逃げられているかもしれない。それでも痕跡を掴むくらいは出来よう」


「全く、死神達も何故悪神達の取り調べでこの報告をして来ぬのだ?」


「膿みは取れたはずだが、何かおかしい」


「まだ溝があるようだの」


「また違う勢力がここを狙っているのか……」


「分からぬ。いっそ、死神の巣と縁を切ってはどうかの。最低限とした方が良いやもしれぬ」


「兄上に進言してみるか。しかし、集団催眠か精神干渉となると大物の気配だの。外に被害を伝えぬ為にした術を考えればこの前の罰も考えねばならぬ」


「確かにの。厄介だぞ今回は」


 そんな話を聞きながら、僕は意識を外へと向けていた。ベールの外に微かに何かが動く気配がする。世界と繋いでいる今の僕なら分かる。魔術で誤摩化した得体の知れない者達が屋敷の中を通って行くのを感じた。ダラシィーにそれを告げて生態端末の映像を可視化して大きくした。

 三つの気配が中庭を横切っていて、更に二つの気配が転移装置に近寄っている事を守り神に教える。フィトォラに頼んでいた事を、自分で侵入者の場所を示す必要があるので手間だ。直接の念を飛ばせば良いのだと気が付いたので、今度、ダラシィーに練習をさせてもらう事にした。

 ビクトゥームと料理長達はまだ地下にいるので、セーラさんがベール越しに指示を出してそのままそこに留まる様に指示を出した。

 少しの間動きを追い、様子を窺い目的を探った。転移装置の先は、僕も利用した大神殿の下の牢の中に一直線になっているので問題は無い。

 ネラーラさんとテレサさんの部屋に迷わず進んで行く三人組の様子は、内部の構造を把握しているのが丸分かりだった。直ぐにここに残っていた死神達と守り神は彼らを捕まえに向かった。


 宮殿が戦場になった頃、外でも動きがあったらしく、西の塔が爆発した。死神達の連絡では悪神どころか悪魔が潜んでいたらしい。既に隠れる気が無くなったのか全く存在を誤摩化していないのを感じる。それも三体もいる。

 人々に影響が及ばない様に張った死神の結界も、役に立つかどうか分からないくらいに酷い瘴気をまき散らし出した。


「なんて事!」


「上級悪魔か! この人数で行けるか?」


「結界の維持が持てば良いが」


「ギダ達をガーラジーク神に付けたからそっちは大丈夫よ〜」


「ありがたい。目の前の敵に集中するぞ!」


 まずは宮殿内の者を捕まえ、捉えて行く。彼らを探れば元死神候補達だった。まだ充分なマントを作れないでいた者を集めて悪神として育てていたみたいだ。闇を扱うなら同じだと洗脳し、優秀な悪魔の手下としての役割を与えられていたみたいだ。知識も持っていない者達で、闇の力を忌避された世界での溢れた人々だった。死神の中に真偽者がいたのでそんな事が大体が分かった。

 そして、嫌な事に三度目に死んだ時の暗殺者が使っていた気配を消し、魔法探査も出来ない様な魔術だのが掛かった装備を着込んでいたのだ。しかもあの警戒を呼びかけていた武器までご丁寧に持っていた。

 この武器の作り方が分かった。霊気を生む力を魂から剥がして邪気に染め上げて悪魔の力を込めている物だったのだ。恐ろしい……。ダラシィーとビクトゥームが分析をして、そんな答えを出していた。さすがマシュさんの弟子だけあると思う。


「つまり神官候補を狙って集め続けた理由はそれか……」


「これだけ慎重に隠していたのはその情報か! 他の街も調べねばならないな」


 ギリギリと歯ぎしりしている守り神は怒りで顔を赤くしている。外では戦いは続いている。腕に傷を負ったネリートさんと足に邪気での火傷をしたセーラさんの手当をしている。今はマリーさんとダラシィーが悪魔と戦っている。死神達の手当をし続け、何とか長期戦に耐えている。既に三日は経っているけど、悪魔達の力は衰える事を知らないかのようで、戦闘は続いている。


「僕の収納スペースも持ってくるんだった。あれに一杯薬があったのに」


 フィトォラに渡していた薬類を全部、フォーニに取られそうになったあの収納スペースに入れてあったのだ。豆のお酒も全部だ。今回は要らないと思っていた僕の考えは甘かった。


「何、これだけ再生も扱えてれば問題ない。勝機が見えて来た」


「手下はほぼ押さえた故、後は奴らだけだ」


 不敵な笑みを浮かべて二人がそう宣言した後は、僕の眠りの魔法でしばしの休みを取ってもらった。他の宮殿の人達も何とか皆で励まし合いながら嵐が去るのを待っている。ネラーラさんに状況を少し伝えつつ、使用人達にも同じ様に落ち着かせる為に眠りの魔法を時々掛けている。

 僕のベールは見通しが良いので外の様子がわかるのだ。透明ドームで一日が過ぎた後は、セーラさんの持っている収納スペースを使って移動している。

 透明ドームで治療をし、砂漠との境目で野営をしたりと目まぐるしく移動している。何せ悪魔達が僕達の拠点を躍起になって探すのに広範囲に攻撃を飛ばすのだ。かなり苛ついているのが分かる。死神達の結界も既に限界に来ていて穴が空いたりしている。外の結界を維持している人達にも限界が来ているのかもしれない。それでも何とか状態は維持されている。

 僕のベールの中はビアラマ隊がその可愛さで皆を和ませているし、ベリィーヌーヴは傷ついた死神達を運んで来てくれていて、バッタ部隊と紀夜媛はべールの補助をやってくれている。

 守り神のグリフォンは、移動をする度に死神達への連絡網をやっていて、時折ビアラマ隊とべリィーヌーヴもそれに参加している。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ