1-2 誤った説明が、問題を見えなくする
少子化について語られる説明の多くは、原因を個人に帰属させる。
若者の結婚意欲が低下したから。
価値観が多様化したから。
女性の社会進出が進んだから。
これらは、説明の形をしているが、因果としては成立していない。
結婚しない、子どもを持たないという行動は、選択の結果である。
しかし、その選択がどのような条件下で行われているかが語られない限り、
行動だけを取り出して原因とすることはできない。
価値観は、制度と無関係に形成されるものではない。
人は、置かれた条件の中で合理的に判断する。
不安定な雇用、予測できない将来、失敗の回復が困難な環境において、
長期的な責任を伴う選択が避けられるのは、特別な現象ではない。
「選ばれなかった」という結果を見て、
「選ぶ意欲がなかった」と結論づけるのは、因果の取り違えである。
少子化を価値観の問題として説明することは、
問題を単純化するように見えて、実際には原因から目を逸らしている。
それは説明ではなく、整理の放棄に近い。
本書は、個人の動機を掘り下げない。
なぜなら、動機は条件の後に現れるものだからである。
先に見るべきは、条件そのものだ。
少子化を理解するために必要なのは、
「なぜそう考えたか」ではなく、
「そう考えざるを得なかった環境」である。




