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一般人の集い  作者: 伊藤テル


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【タレント政治家の炎上】

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・【タレント政治家の炎上】

・


 元々は僕も嫌いでは無かった。

 面白いわけじゃないけども、それなりに人と会話ができるような文化人タレント枠あがりの政治家で、時折鋭いツッコミにも似た指摘を国会答弁で披露して、テレビに映し出されることもある。

 本人が新興政党を選んだ時には叩く人もいたけども、信念があれば別に良いし、その後もすぐに与党に鞍替えしているわけでもないので、僕にとっては普通の政治家だ。

 そんな彼がSNSの発言で炎上した。

 これはどうやら文化人タレント時代からの持論だったらしいけども、政治家になって広く知れ渡るようになり、初めて強く炎上しているようだった。

 その発言は、

「一般人がSNSをするな」

 だった。

 炎上とは別に批判だけで広まるわけではない。

 その言葉に賛同者が一定数いて、その賛同者にも批判の声が投稿されることにより、炎上すると僕は思っている。

 つまりは賛同者の居ない言葉はただの暴言としてバカにされるだけで終わるということだ。

 さて、今回のこの『一般人がSNSをするな』に対して、一般人が賛同していることが僕には理解ができなかった。

 それとも自分のことを特別だと思っているのだろうか。SNS論客くらいには思っているのかもしれない。

 その感覚がまず分からない上に、一般人がSNSをするなって相当の暴論だと思う。

 元々SNSは一般人の物だった。そこに有名人が参入してきたという歴史がある。

 いわゆる言論の自由という法律もある。

 勿論、このタレント政治家がそう言っているバックボーンは知っている。

 SNSは誹謗中傷が多いということだ。

 確かにそれは問題だ。だからって全員が全員誹謗中傷をしているわけではない。要は主語が大きいというヤツだ。

 一般人全体の問題にされることは誠に遺憾で、なんというか、旅行中に家族が買った甘いだけのデカいパンが腐りやすかったため、みんなで食べないといけなかった結果、旅先の郷土料理が食べられなかったみたいな話……ではない、これは完全に例え間違えた。

 僕は脳内で例える癖がある。というよりも自分を鼓舞するように笑いを足さなければ人生をやっていけない状態だ。

 それでいて実際に人生自体は別にやっていけていないので、こういう例え間違えが頻繁に起こる。もうバグっているというわけだ。

 何でバグっているってそれは勿論、引きこもりだからだ。

 学生時代のイジメ、それに伴う人間の機微により、完全に社会が怖くなってしまい、家からの一歩が出られなくなってしまったのだ。

 この『一般人がSNSをするな』という言葉はきっと略されている。

 本当は『暇な一般人がSNSをするな』という言葉が本来の形だと思われる。

 例えば夢に向かって創作活動をしている人やスポーツ選手を目指すため日々の行動を記録している人などは本当は”一般人”には含まれていないと思う。

 そりゃセンセーショナルに、甘いだけのデカいパンが何故か腐りやすいと驚くように、できるだけセンセーショナルにするため、主語を大きくしているわけだけども、本当は暇な一般人を対象にしていると思われる。

 暇な一般人、それは引きこもりをしているような僕や僕や僕など、つまり僕だ。

 僕にとってSNSは時間を潰せる夢のようなアイテムであり、今を生きるための情報収集ツールでもあるので、取り上げないでほしいと思っている。

 炎上はどんどん大きくなっていく。

 炎上すればするほど、SNS論客として仕事をしているのか、ただの逆張りなのかは分からないけども、賛同の声も増えていく。

 そうなってくると、僕もその『一般人がSNSをするな』に反発したくなっていく。要は反論を書き込みたくなるわけだけども、それはしないようにする。

 僕はSNSで悪口となる物は書かないようにしている。明るい世界を目指しているわけではないけども、いや若干はその気はあるけども、そういうことじゃない。

 単純にお金が無いからだ。引きこもりだから。

 開示請求されてしまったら、払うお金が無いのだ。

 よく開示請求された人は大体、生活保護などでお金が無い連中ばかりと言う。

 それはバカにするためにそう言っているのかと思ったけども、どうやらそういう側面が本当にあるみたいで。

 それと同じになることが嫌という、これは単なる差別意識だ。貴方とは違うんです、と昔に某首相が言ったような気持ち。

 僕は今日も自分のベッドからトイレ以外は動かず、ずっと充電コードを差したままのスマホで、昨日から飲んでいるお茶をチビチビ飲んでいる。

 終わり、終わり。

 最終盤の人間だ。

 自分のオナラしか不意の音が聞こえない状態。自分のオナラも実際には自分で出しているのに、それを不意と感じてしまうくらいに。

 僕は引きこもりとして一生を終える覚悟は多少なりにはできている。

 まあ生活保護という制度もあるので、使わせてもらうことになるんだろうなぁ。

 最近の唯一の生きる楽しみは、一般人の人たちがやっているラジオ配信をアプリで聴くこと。

 今は東京でアイドルをしている、唯一の友人・ハイシーからオススメしてもらって、僕もハイシーも”長谷川ブックス”のヘビーリスナーだ。

 ハイシーには僕が引きこもりということは言っていない。単純に恥ずかしいからだ。腹踊りしていたら、へそのゴマばかり見られたくらい恥ずかしい。腹踊り自体も若干恥ずかしいのに、だ。

 ハイシーは中学卒業でそのまま上京した。中学三年生の時に、修学旅行で僕と東京観光中にスカウトされた。

 僕は怪しいと思ったけども、ハイシーはやる気満々で、僕は通信制の高校へ、ハイシーは東京へ行き、中卒でアイドルをやっているらしい。

 僕のほうはなんとか通信制ということもあり、高校は卒業できたんだけども、そのまま引きこもりだし、ハイシーの事務所は高校に通わせないとか、かなりブラックそうだ。

 とは言え、本人からはいつも明るいLINEが届くし、元気にやっているみたいなので、それはまあ良いんだろうなぁ……と思いつつも、心残りというか、心の残尿感は常にある。

 僕とハイシーは中学生時代に漫才コンビを組んでいた。学校内と路上と後は一回だけ町内会のイベントでしか漫才をしなかったけども、あの頃は一番生き生きとしていたと思う。

 だからハイシーは上京する時に僕も誘って「俺はアイドルしながら、ベイルと漫才コンビもやりたい!」と拳を天に突きあげて言ってきたわけだけども、うちは一人暮らしできるようなお金も無かったので、東京行きは断り、そのまま漫才コンビは自然消滅した。

 今日もスマホを掴んでSNSを見ている。

 ふと、思い出したことがある。

 あの文化人タレント枠あがりの政治家についてだ。

 元々、あの人って確か結構言いたいこと言うみたいなキャラで、毒舌とはちょっと違うけども、歯に衣着せぬ発言で人気だったから、何なら若干誹謗中傷する側の人だったような。

 改めて経歴をウィキペディアで確認すると、驚愕してしまった。何故なら元々はネット上のまとめブロガーで人気を博していた人だったからだ。

 まとめブログって下世話なニュースをまとめて面白がってアフェリエイトで稼ぐ人のことでしょ? うん、実際そうだ。でも政治家になった時にブログは全削除したらしい。

 勿論、ネット上に魚拓は残っている。まあ違法な形で見ることは嫌なので見ないけど、そんなヤツがそんな発言を? というか元々の持論?

 まさしく『一般人がSNSをするな』の典型だった人間がそんなこと言うなんて……と思うが、でも人って往々にしてそういうところがある。

 というかほとんどの人間が自分がしているダメな行動を律したがる。浮気はダメと言う人は浮気をしているし、トレースでイラスト描くことはあまりしないと言う人ほどトレースをしている。

 自分で自分のことを優しいと言う人は間違いなく優しくないし、私ってサバサバしているんですと言う人は粘着質だ。人間はチグハグなモノなのだ。

 だからって、だからって、だ、この為田仁というタレント政治家は。通称はダメニン? ダメ人間の略でもある? まず元々オマエがSNSをするなよ。

 なんなんだよ、自分が一般人じゃなくなったから、そう言っているわけか。元々由緒ある家系とかじゃないのに、元は一般人なのに。

 急に特権意識が芽生えたというわけか、そんなたいしたもんなのか、政治家って。まあ政治家は多少偉いというものだけども。

 このタレント政治家がタレントのままなら、きっともっと炎上していただろうな。多分。

 いやこんな攻撃的な気持ちでいることは良くない。ちょっと冷まさなければ、と思いながら、無料なだけのスマホゲームをする。勿論課金はしない。ダメニンって僕の通称?

 現実逃避のため、昔のことを考えてしまう。

 僕とハイシーは漫才コンビを組んでいて、その時だけは人気者みたいなツラして、全てハイシーの人気だけなのに。

 いやいややっぱり過去の話は自己嫌悪に陥る。未来のこと、というより一般人たちのラジオ配信、長谷川ブックスの配信が今日の夜ということを考えよう。

 遼太朗、翔也、圭の三人組で、遼太朗が東京の大型書店で働き、翔也が地元の本屋で働き、圭がフリーター。

 三人の関係性は元々漫才トリオを高校時代に組んでいて、その時の仲でずっと仲が良いということ。

 ネットを通じて喋っているのにも関わらず、聞きやすくて、三人のやり取りは本当に漫才みたいで、僕は勿論ハイシーも、なんとなくあったかもしれない漫才コンビの世界線として聞いてしまっているところもある。ここはハイシーのほうからそんなことをLINEで言い出したので合っている。僕もそうだよと同調する形で返信した。

 引きこもりの僕はもう親からは何も言われない。もう二十三歳になり、完全に諦められたみたいだ。

 ハイシーからは毎日のように今日のスケジュールが送られてくる。逆マネージャー? まあそんなことはいつものことだし、と、鼓舞するLINEをハイシーに送る。

 いつもこんな感じの関係性、ハイシーとの繋がりが僕の唯一の救いなのかもしれないけども、新潟と東京と遠距離なので、物理的には何の助けにはなっていない。

 ご飯のために、菓子パンを一階のキッチンに取りに行く。

 できるだけ家族が外へ仕事や買い物に出掛けたタイミングで行きたいのに、今日はイレギュラーな空想というか、調べ物をしていたせいで、感覚がおかしくなり、母親がいるタイミングでやってきてしまった。

 気まずい空気が流れつつも、適当に菓子パンを選んで、自分の部屋へ逃げ帰ってきた。

 もう挨拶だって言われない。だからって挨拶を言われたとて無視してしまいそうな自分がいる。いや無視するだろう。岩ごとき無視。

 でも毎日菓子パンを買ってきてくれているし、別にギリ何か大丈夫なんだろう、ギリ何か大丈夫とマインドすることにした。僕は人間の形をしているゴミのようだ。ゴミなのに菓子パンを食べるって偉そうだな。まとめブログ出身の政治家が『一般人がSNSをするな』と言うことよりも全然偉そうだな。


・

・【長谷川ブックス】

・


 やっと夜になり、長谷川ブックスのラジオ配信時間になった。

 僕の部屋は夜になると、赤信号が異様に光って見え、雨の日になると窓の水滴に反射して、光が大きくなるので、カーテン必須。まあ昼間もカーテン閉めているけども。

 部屋そのものも暗くしておく。きっと近所の人からは引きこもりの家だと知られているだろうから、長起きしていると、いらん噂も立てられる可能性があるので。なんせ田舎なんで。なんというか、国道沿いの良くあるチェーン店が並んでいるほうの田舎じゃなくて、マジの、最寄りのコンビニが二キロ先の田舎なので。

 僕はスマホでアプリを開いて、五分前からいわゆる全裸待機だ。実際に全裸なわけではない。変なネットミームだ。最初に言ったヤツ、さすがにセンスが良過ぎないか? 絶対全裸じゃないのに。絶対正座待機のほうが理に適っているのに、そこを全裸にするなんてさ。そんな脳内の反芻はどうでもいいと思いませんか、思います、集中します。

「長谷川遼太朗の! 長谷川ブックスー!」

 遼太朗の明るく楽しそうな声が響く。

 即座に翔也が、

「ぼくたちもいるから!」

 と少し高めの声でツッコんだところで、圭が動く。

「おれは缶詰じゃないよ!」

 翔也の声とは違い、幼くて声が高いみたいな感じで声を荒らげる。

 圭のツッコミはいつもズレている。今回のズレは嫌なズレときたもんだ。心地良くないズレ。

 それに対して翔也が、

「閉じ込められた存在じゃないということねっ、ちゃんといるってことね」

 と相槌を打つわけだけども、よく分かったな、それがきっと真意なんだろうな。

 そんなスタートから滑稽なラジオ配信、それが長谷川ブックスだ。

 遼太朗が高めのテンションで、

「最近出た、成山シリーズの新作最高に面白いね! 三部作で終わりってマジぃって感じ!」

 翔也も唸り声をあげながら、

「そ~だね~、本当はずっと続いてほしいよねぇ~」

 遼太朗と翔也は本屋なので、本の話題が多めだ。特に小説。

 圭は小説に関心が無いらしく、そもそもあまり会話に入ってこないし、相槌すら打たない。多分ボーッとしている。

 でもそれでいい、漫才トリオの三人目って大体そんな感じだし。

 遼太朗が饒舌に、

「あとアニメ映画の小説版とか出てるけども、あれめっちゃ面白いよね!」

 翔也も流れるように、

「そうそう! ちょっとエピソード追加しているところがまた憎いというかね!」

 遼太朗が「はいはい」言ってから、

「ちゃんとそのエピソードがね! 原作者がアニメの尺に入りきらなかったエピソードを執筆者に書いてもらっているんだよね! ちゃんと打ち合わせしてんの!」

 と言ったところで圭が割って入ってきた。

「忙しいな!」

 翔也が矢継ぎ早に、

「そういうもんなんだって!」

 すると遼太朗が軽くボケるように、

「もうそんな打ち合わせ打ち合わせで来客が多いと、実家のコーラが無くなるよな」

 翔也がすかさず、

「実家で打ち合わせしないよ! 仕事の打ち合わせにコーラとか出さないし!」

 圭が「えっ」と言ってから、

「美味しいだろ!」

 とツッコむように言い、翔也がすぐに、

「美味しいけども、仕事の打ち合わせにしてはジャンク過ぎるよ!」

 遼太朗が「はー」と声を出してから、

「じゃあ翔也は仕事の打ち合わせになったら、絶対巨大なハンバーガー食べないんだな? 言ったな? そういうことだよな?」

 と詰めるようにボケて、翔也が、

「食べないよ! 手がソースでベタベタになりながら打ち合わせしないでしょ! 紙の資料触れないじゃん!」

 また圭がツッコむように、

「資料で拭けるだろ!」

「拭いちゃダメだよ!」

 とまるでその場にいるような速度で翔也がツッコむ。

 遼太朗が「うんうん」言ってから、

「まあ紙の資料はさすがにダメだね、納品した小説ならOK」

 翔也が「ちょ!」と言ってから、

「絶対ダメだよ! 本屋さんにとって小説は神聖であれよ!」

 遼太朗が「まっ」と口に出してから、

「神聖経典、めっちゃ面白かったね」

 翔也が溜息交じりに、

「そこからそこに繋げるぅ~? トリックめっちゃ最高だったけども!」

 遼太朗が楽しそうに、

「ミステリーの王道なんだけどさ、文章は比較的平易で読みやすいんだよな」

 翔也も頷いてから、

「そうそう、小説読み慣れていない人には是非読んでほしいよね」

 僕はあまり小説は読まないほうなんだけども、長谷川ブックスでオススメされた本だけは買うようにしている。

 ただし今回の”神聖経典”という小説の熱量は、買うほどでもないなって、ヘビーリスナーだからこその判断だ。

 この三人のラジオは基本的に小説をけなすことは無い。全て褒める。だからこそ、熱量に若干の差がある。

 いつも飄々とボケる遼太朗は本気でテンションがあがると声が裏返るし、翔也は一発の台詞が長くなる。

 だから今回はほどほどといった感じだろうなぁ。ちなみにハイシーはほぼ全部買うらしい。ハイシーはあまりお金を使わないほうらしく、三人のラジオで話題になった本を買うだけなら余裕があるという話をこの前LINEでしていた。

 こんな感じで三人の雑談は基本小説の話で、時折遼太朗はおふざけのスイッチを入れて、漫才のような掛け合いをする。

 そしてここからがある意味僕の本番なのだが、このラジオ配信ではメールのコーナーもあり、そこで読まれることが僕にとって至極なのだ。

 雑談はそこそこに、遼太朗が、

「じゃあ大喜利のコーナーにいきましょうかっ」

 翔也も頷いてから、

「そうしようかなっ」

 遼太朗が即座に、

「言うても選ぶのも読むのも俺だけですがっ」

 翔也が少しふてくされるように、

「遼太朗がメール独占するからじゃん」

 遼太朗が鼻高々って感じで、

「俺は唯一東京にいて、センスマックスだからな」

 すぐに翔也が、

「センスあるヤツの表現じゃないでしょ」

 と言ったところで圭が、

「センスマックスの”ンスマ”の部分かよ!」

 とツッコむように言ったところで、即座に翔也が、

「何か言葉になっている時に言うんだよ!」

 遼太朗が「はいはいはい」とリズムを作ってから、

「半笑いの時に言う襖の言い方ね、ンスマッ、つー」

 翔也が即座に、

「半笑いで襖って言う時無いでしょ! 彼女が襖にBL本隠していたの見つけた彼氏かよ!」

 遼太朗が軽くあしらうように、

「そうそう」

「そうそうじゃないんだよ!」

 と翔也が素早くツッコむ。

 遼太朗は深呼吸してから、

「というわけで、今回のお題は”炭酸のヘドロ”でしたね、まずは静江さん、でもエモい。これ短くて良いですね」

 翔也がツッコむように、

「炭酸のヘドロはエモくないけどね、クサさが飛び出しそうだし」

 遼太朗が反論するように、

「いや炭酸ってエモいシーンにしか存在しないから」

 すると圭が即座に、

「オシッコもあるだろ!」

 翔也がすぐに、

「オシッコが泡立つのは炭酸のせいじゃないよ!」

 遼太朗も矢継ぎ早に、

「オシッコのシーンもエモい時あるし」

 翔也がすかさず、

「無いよ!」

 と端的にツッコめば、遼太朗が悪ふざけの声で、

「親父と並んで立ちションして、オマエも大きくなったな、のヤツ」

「無いよ! 居酒屋で酒を酌み交わすシーンのヤツをオシッコにするなよ! 大きくなったが若干卑猥だよ!」

 遼太朗は一旦区切るような呼吸をしてから、

「次いきます、お題は炭酸のヘドロ、丸出しオムツーさん、受け止めたおむつが踊ってやがるぜ。炭酸のパワーでね」

 翔也がすぐさま、

「まずおむつで受け止めるって何だよ! 捨てて良いタオルで受け止めろよ! おむつだとちょっと高いだろ! 受け止めるのもどういう状況って感じだし!」

 おっ、翔也のリアクションから察するに、翔也的には結構ウケているみたいだ。

 遼太朗も本当にボケが面白いと思った時はあまり余計なことを言わずに、次へ行く。

「次。お題は炭酸のヘドロ、ベイルアウトさん」

 ……! 僕だ! やった! 読まれた!

 まあ僕はほぼ毎回読まれるわけだから、投稿数と読む量が全く一緒? とも思ったこともあるけども、毎回採用されるペンネームは違うし、ハイシーも常に送っているみたいだけども、あまり読まれたことは無い。

ハイシーのペンネームはそのままハイシーなことは知っているので間違いない。だからまあちゃんと選別しているんだろうな。

 遼太朗が一呼吸置いてから読む。

「ドリンクバーでコーラとコーンポタージュを混ぜた結果」

 翔也がすぐに、

「ドリンクバー混ぜるヤツいるけども! 炭酸とコーンポタージュはさすがに合わないだろ! そしてちゃんとヘドロになっちゃった! もったいな!」

 翔也のツッコミも長いし、悪くないみたいだ。

 そこで圭が喋り出した。

「飲むけどね!」

 遼太朗があしらうように、

「まあ自業自得だからね」

 圭は何か負けじと、

「いやいや! 普通に飲める!」

 すると遼太朗が、

「味覚バカ過ぎる。あとコーンポタージュのどろどろ感をヘドロと表現しているボケだから」

 とこっちの意図をしっかり汲んでくれていて嬉しい。

 遼太朗は「はい!」と元気に言ってから、

「めっちゃ面白い回答だったのに圭が邪魔してゴメンね! 次いきます!」

 と言ってくれたことがすごく嬉しかった。むしろこれを引き出してくれて圭には有難うという気持ちだ。

 その後も、三答くらい読みあげて、今日の一位は僕の回答になった。

 これだ、この喜びだけでまた三日間頑張っていける。

 そう、この配信ラジオは遼太朗の残業程度によって変わるけども、基本的に今日である水曜日と土曜日の二回配信なのだ。

 水曜日はまちまちだけども、土曜日は必ず配信されるのでまた三日間は本当に頑張れる、とは言え、頑張るようなことは無いけども。

 そろそろこのくらいのタイミングで、と思ったところで、いつも通りハイシーからLINEが届いた。

『ベイル! めっちゃウケてたな! 俺も誇らしいよ! 伝説の祠石だよ!』

 僕は素早く返信する。

『有難うハイシー。誇らしいを祠石にするボケ、何回でもするんだね。』

『何回もしていたっけ! じゃあ俺はいつも俺ということで!』

 分かっていなかったらしい。ポジティブだ。その明るさも相まって、ハイシーは学生時代”ちょいバカ”とイジられることもあった。でもそれはバカにするニュアンスは一切無く、むしろ自ら「俺はちょいバカだからなー!」としきりに言うもんだから、周りも言ってみたらハイシー本人が喜んだみたいな感じだ。あだ名を自称しているに近い。

 そこから長谷川ブックスの感想戦をして、今日の夜が終わった。

 僕は眠りにつこうとするが、なかなか眠れない。いつものことだ。きっと睡眠障害とかだと思うけども、病院に行くことは怖いので、行こうとは思わない。

 というか昼間に動いていなさ過ぎるだけという可能性もあるし。夜にしっかり寝るためには昼間にしっかり体を動かしていないといけないらしい。ネット情報。どうせ使わないネット情報。

 そんなことより、ハイシーはハンドルネームも芸名もハイシーで本名はハイということを改めて反芻するほうが余程有意義だ。僕が安心する関連のことを反芻するほうがリラックスできる。


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