13
見慣れない天井、見慣れない寝巻き。腕には点滴がつながれている。
真っ白で清潔な病院のベッドの上に、私は寝かされていた。
目を開けた私を見て母親が泣いた。父親は「よかった、よかった」と笑顔を見せた。
窓の外には夕暮れの空が広がっている。私は修二に頭を叩きつけられて、しばらく意識を失っていたらしい。
「あんたの会社の上司だって人が頭を下げたわよ。息子のことはこれで勘弁してくれって、私たちに金を差し出して……だけど母さん言ってやったわ。冗談じゃない、娘をこんな目に遭わされて訴えてやるってね」
母はベッドの脇でそう言った。私は修二のことを想って「やめて」と言った。
「私は自分の意志で彼の部屋に行ったの。逃げようと思えばいつでも逃げられたけど、私がそうしたかったからそこにいたのよ」
母が私の、やせ細ってあざだらけの腕を怪訝そうに見つめる。
「とにかく今日は何も考えないでゆっくり眠りなさい」
父は今まで聞いたこともない優しい声でそう言って、母と一緒に病室を出て行った。
私はベッドの上で目を閉じる。
修二のことを考えようと思ったけど、すぐに眠りに落ちていった。