感情
その一
「シリアン! 下りてこい!」父さんが下の階から叫ぶ。
こんな朝っぱらから、何の用だ?
まだ日も昇ってないぞ。
「今行く!」叫び返して、ベッドから出て服を着る。
階段を下りて、ダイニングというか、キッチンというか、何だかよくわからない場所に行く。食卓があって、すぐそばに料理する場所がある部屋だ。
すると、テーブルに父さんが座っていて、その隣に――ジルの親父さん?
「どうも!」手を振りながら、父さんの後ろまで歩いていく。
「起きてきてくれてどうも」父さんが皮肉っぽく言って、俺のために椅子を引く。
「で、何の話?」椅子に座りながら言う。
「さあな、どうやらお前、昨日この人の命を救ったらしいじゃないか」
「そんな大げさなもんじゃないよ、ちょっと……まあ、命は救ったけど。それが何?」
「それで、恩返しがしたいんだ。俺にできることなら何でも」ジルの親父さんが、決意のこもった目で切り出す。
「タダの牛乳? 一生分?」
「……いやいや、それじゃ全然足りないだろ」
「俺には足りるけど」
「命を救ってもらったんだ。もっとずっと大きなものを返さなきゃならない」
「牛乳より大きいものって何?」
「わからんけど、金とか、家とか、ぎ、牛乳以外にもいろいろあるだろ!」
「俺、牛乳めっちゃ飲むよ」
「わ、わかった、牛乳はやる、だから他にも何か受け取ってくれ、頼む!」
「じゃあ、ろうそく作って」
「は!?」
「いや、常夜灯がほしいんだよ。だからろうそく」
「……もういい、わかった。ろうそくは作ってやる。牛乳もいつでも取りに来い」そう言って立ち上がり、帰ろうとする。
「はーい、良い一日を、おじさん!」
「ああ、助けてくれて本当にありがとな」そう言って、ドアから出ていく。
父さんが、ただじっと俺を見ている。
「何? 他にほしいものなかったんだよ」
部屋に戻ろうとすると、父さんにすぐ引き戻される。
「お前が外で何をしてるのか、じっくり話し合うぞ。俺の部屋だ、今すぐ」
「……」
「今すぐだ」
その二
人生で一番長い話し合いを父さんとした。でも、たぶん……誇らしく思ってくれてた、と思う。たぶん。
あれから二週間が経った。
ジルの鍛錬も順調だ。柔術なら青帯の四本線くらい、極真空手なら茶帯くらい。今はムエタイを教え始めたところだけど、ジルなら大して苦労しないだろう。
今は父さんと稽古中なんだけど、なぜかジルもいて、俺の稽古を見ている。普段ならそこまで気にしないけど、あの事件以来、ジルはいつも以上に俺のそばを離れない。
まあいいか。
「ねえ父さん、そろそろ俺と組手してくれてもいいんじゃない?」
「だめだ」笑いながら言う。
「今じゃないなら、いつ?」
「いいか、シリアン」父さんが俺の頭をぽんと叩く。「俺はお前よりずっと強いんだ。わかるか? 手加減しても、お前は死ぬ。だから、十五歳くらいになったらな?」
そういえば……。
この世界、年齢は数えてるのに、誕生日は祝わないんだよな。
どういうことだよ。
「お昼できたわよ! みんな入って!」家の中から母さんが叫ぶ。
「はーい! 今行く!」そう言って、木刀を片付けに行く。
「稽古、まだ終わってなかったんだがな……」父さんが布を取って汗を拭きながら言う。
「あとで続きやろうよ……」そう言って、木刀を他のと一緒に放り出す。木刀はいつも、岩のそばに一山にして置いてある。
ジルが俺たちの隣に来て、三人で家に入っていく。
「わ、私も食べていいの?」
「なんでだめだと思うんだよ?」
「わかんない……」
「お前ほんとバカだな」
「そういうこと言うな、シリアン」父さんが俺の後頭部をはたく。
「ごめん……」後頭部をさすりながら言う。
その三
家に入って、いろんな料理が並んだ食卓にみんなで座る。
母さんが両手を前に出すと、かすかな黄色い光がその手からあふれる。
数秒後、魔法が完成して、母さんも自分の席に座る。
たぶん難しい魔法なんだろう。それでも母さんは、食べる前に毎回、料理全部にこれをかけてる。
味が良くなるんだと思う。正直よくわからないけど。
「えっと……今、何をしたんですか?」
「料理を美味しくしたのよ、魔法でね。もう香辛料を買わなくていいの。便利でしょ?」
「は、はい! 料理に香辛料なんて、ほとんど使ったことないですけど……」
「そうなの?」
「ジルんち、貧乏だからさ」
「シ、シリアン!」母さんが俺の後頭部をはたく。「そんなこと言わないの!」
「いてっ……」後頭部をさすりながら、ぼそっと言う。
「食卓で騒ぎを起こさせないでちょうだい……」母さんが鋭い目でにらむ。
「はいはい、わかったよ……」
「ごめんなさいね、うちの子ったら無神経で。ジリアちゃん」母さんが、まだ俺をにらみつけたまま言う。
「だ、大丈夫です……」
父さんはもう眉間をつまんで、ため息をついている。
俺は食べ始める。今日の母さん、気合い入ってるな。
「せめて、いただきますくらい言ってから食べなさい……」母さんが食べ始めながら言う。
「いただきます、ゼナ」父さんがいつもの調子に戻って、微笑んでから食べ始める。
「え、えっと、い、いただきます」ジルが、ゆっくり慎重に、食べたいものを選び始める。
「い、いただきます!」口いっぱいにステーキを頬張ったまま言う。
「お行儀悪いわよ、シリアン」母さんが、飲み込んでから言う。
「ご、ごめん」口いっぱいのまま言う。
その四
しばらくして、父さんとの稽古を終えたあと、俺はジルと人目につかないあの場所にいる。
ちょっと暇だったから、またジルと組手をしようと言い出した。
「ジル、組手するなら、ちゃんと殴ってこないとだめだぞ」
「で、でも、殴りたくないもん」
「そういうもんじゃないんだよ。ほら、殴れ」
「で、でも――」
「文句言うな」
「……わかった……」
ジルが俺の顔をまっすぐ殴る。でも、まだ全然手加減してる。
これはずっと前からの問題だ。でも、手加減するなと言ってもまだするとは思わなかった。
「手加減してるの、わかるんだぞ?」
「シ、シリアンをケガさせたくないの」
「本気でお前が俺をケガさせられると思ってるのか?」
「……えっと……」
ジルの腕をつかんで、ぐいっと引き寄せる。ちょっと乱暴だけど、こいつにはちゃんと言うことを聞いてもらわないと困る。
「殺すつもりで殴れ」
「わ、私、シリアンを殺したくなんかないよ……」俺から逃れようとしながら言う。
つかむ手に力が入る。
「じゃあ、殺したいふりをしろ」
「い、痛いよ……」
「じゃあ、俺を痛めつけろ」
「わ、私、そんな――」
ジルを地面に投げ倒して、押さえ込む。
「三」
「お、お願い――」押さえ込みから逃れようとしながら言う。
「二」
「わ、私、絶対――」今度は俺を押しのけようとしながら言う。
「一」
「ま、待って――」
ジルを地面に叩きつけるように殴り始める。もちろん手加減して。
こいつは学ばなきゃいけない。
「や、やめて!」
ついに、ジルが手加減なしで俺の顔を殴る。鼻血まで出た。
「よくやった……」
「ご、ご、ごめんなさい……大丈夫?」
自分がケガしてるのに、俺の心配をしてる……。
学ばせる必要はあった、それは本当だ……でも、こんな目に遭わせる理由はなかった。
それでも、また同じことをするだろうけどな。
ため息をついて、ジルを抱き寄せる。
「大丈夫か?」ジルの顔の血を少し拭いながら言う。
「う、うん……」ジルが言う。目が少し震えている。
その五
数週間後、俺とジルは森の中の人目につかない場所で組手をしている。
あの一件以来、ジルは手加減せずに組手をするようになった。正直、もうあんなふうに殴らなくていいと思うと、少しほっとする。
力ではもう俺とそこまで差はない。それでも、俺の方が強いし、知ってる格闘技の数も全然違う。
「俺の体重を利用しろ」ジルのパンチをかわしながら言う。
「ず、ずるい! 速すぎるよ!」ジルが文句を言って、俺の間合いから大きく下がる。
「お前が遅いんだよ」そう言って一気に詰め寄り、カーフキックを入れて片膝をつかせる。
そして、あごに拳を入れる直前で止める。
「今回は何か学んだか?」
「あんまり……」
「守らなきゃ、体のどこだって弱点になる。覚えとけ」
「うん……」
ジルを助け起こして、木のところへ行って座り、休憩する。
座るなり、ジルは自分の手にキスをして、自分の体を治す。
「そこまで痛めつけてないだろ……」
「シ、シリアンのパンチ、受け止めるだけで痛いの!」
「柔らかいわけないだろ……」ぼそっと言って、ぼんやりする。
柔らかいウェーブのかかった髪に、手を通す。
最近、これが癖になってきた。
まあ、いい髪だと思う。たぶん。長さは中くらい。でも髪を切らないから、これからも伸び続けるだろう。
「ね、ねえ、シリアン……」
「何?」
「お、大人になっても……ずっと一緒にいられると思う?」
「いや。なんで?」
……
「だ、だって、ずっとシリアンと一緒にいたいから!」しばらくの沈黙のあと、ジルが言う。
「そういうもんじゃないんだよ……」
「な、なんでだめなの?」
「……まあ、俺は自分のやりたいことをやりたいし、お前もお前のやりたいことをやるべきだ。だから、いずれ別々になった方がいい」
「い、一緒にやればいいじゃん……わ、私、シリアンと一緒にいたいの……」
ため息をつく。
あいつがここまでなついてきてるんだから、いつかこういう話になるのはわかってた……。
「じゃあ、こうしよう……本気の勝負で俺に勝てたら、一生そばにいてやる。いいな?」
「そ、そんなの絶対無理だよ!」ジルがすぐに言い返す。「も、もっと簡単にして!」
「難しいから意味があるんだよ……」ため息まじりに言う。「じゃあ、えっと……俺の腕を一本使えなくできたら?」
「そ、それもっと難しいじゃん! それに、そんなことしないもん!」
またため息をつく。
「えっと……じゃあ……本気の勝負で、俺を地面に倒せたら?」
「……それでもすごく難しいけど……わかった」
やっと終わった……どうせそこまで行けないんだから、実質断ったのと同じだ。
「この約束に期限はないからな? すぐには無理だろうけど、いつか俺を地面に倒せたら、そのときはちゃんと守る。いいな?」
「う、うん、すっごく頑張る、いい?」
ジルがポケットから硬貨を二枚取り出す。
「こ、これ、神様の硬貨っていうの、いい? これを持ってれば、約束を忘れないんだよ」
ため息をついて硬貨を一枚受け取り、ポケットにしまう。
「なくさないようにする」
「わ、私も」
「よし……そろそろ帰る。また明日な」
「もう?」
「もうやることないし、お前も疲れてるだろ?」
「まだ練習できるもん……」
「練習するのに俺がいる必要はないだろ、わかってるよな?」
「そうだけど……」
「じゃあな」
「ば、バイバイ、シリアン……」
歩き去る。
森は本当に綺麗で、日没の一時間くらい前だから、空はまるで写真家の夢みたいだ。座ってのんびり眺めていたいけど、もちろん日が暮れる前に帰らなきゃいけない。
この世界、好きだな。
いや……この人生が好きなんだ。まあ、この世界も悪くないけど。
見た目だけは、な。
この世界にも悪い奴は確実にいる。でも、それも人生の一部だ。
……
ふと思う……。
あいつは将来、本当に俺を探しに来るだろうか?
……来てくれたらいいな、とちょっと思う。
その六
――ジリア視点――
今日も、毛布にくるまったまま、自分のベッドで目を覚ます。
私、自分のベッドが大好き。お父さんが私のためだけに作ってくれたから、大きさもぴったり!
でも、朝は動物たちの世話をしなきゃいけないから、ベッドから出て台所に向かう。
「おはよう、お父さん! お母さん!」
「おはよう。朝ごはん、もうすぐできるわよ」お母さんが、いつもの素敵な笑顔で言う。
お母さんはすごく綺麗。髪が長くて、さらさら。時々泥だらけになっちゃうけど、お母さんは世界で一番綺麗だと思う……。
「ほら、座りな」お父さんが隣の椅子をぽんと叩く。
「う、うん」そう言って、お父さんの隣に座る。
お母さんが朝ごはんを作り終える。今日は、パンと牛肉。
「あ、ありがとう……」そう言って食べ始める。
「いただきます」お父さんも食べ始める。
「どういたしまして、二人とも」お母さんが満足そうに笑って座り、食べ始める。
食べ終わったら、外に出て動物たちの世話をする。
豚に餌をあげて、牛に餌をあげて、鶏に餌をあげて、納屋を掃除して、畑の世話をする。でも、もちろん全部じゃない。お父さんが、私には多すぎるって言うから。
農場のお手伝いは本当に好きなんだけど、お父さんは、まだ小さいからできないことがたくさんあるって言う……でも、シリアンに鍛えてもらってから、私、強くなったんだよ!
シリアンにいっぱい鍛えてもらったから、筋肉もついたし、強くなるためのものは全部身についた。
でも、覚えるのはちょっと大変……教わった技のことね。シリアンはいつも「よくできてる」って言ってくれるけど、信じられない……だって、シリアンはなんであんなにいろんなことを知ってるのに、私は教わった基本すら覚えるのに苦労してるの?
……シリアンみたいに強くなりたい。シリアンみたいに頭がよくなりたい。シリアンみたいな何かになりたい。
でも、シリアンのことは本当に好き……私の親友だし、私もシリアンの親友だったらいいな。シリアンには、私以外にも友達がいるのかもしれないけど……でも、私の友達はシリアンだけだから、失いたくない。
うーん……。
あっ、そうだ! お父さんに神様の硬貨をもらって、シリアンに、ずっと一緒にいてってお願いしよう!
「ね、ねえ、お父さん……」
「ん?」お父さんがこっちを向く。壊れたテーブルを直してるところだ――たまにこういうことをしてお金をもらってるんだと思うけど、よくわからない……。
「か、神様の硬貨、二枚もらってもいい?」
「何か約束でもするのか?」
「う、うん……」
「ほら……」お父さんがため息をついて、神様の硬貨を二枚取り出す。
「あ、ありがとう」そう言って受け取り、ポケットにしまう。
「一枚は、あのシリアンって子にあげるのか?」
「……う、うん……」
「自信を持つんだぞ? 自信がある方が、うんって言ってもらえるからな」そう言って、お父さんは納屋の奥へ歩いていく。
「う、うん、頑張る!」
「ちょっと待て」お父さんが、蝋のろうそくを持って戻ってくる。「これもシリアンに渡してくれ。ずっと渡そうと思ってたんだが、忙しくてな」
「……ろうそく?」
「ほら、行け」そう言って、私の背中を押す。
「う、うん! い、行ってきます、お母さんに出かけたって言っといて!」
「ああ、またあとでな」
いつも待ち合わせてる森の場所まで走っていく。
少しくらい一人で待つのは平気だったけど、シリアンはもう来ていた。
「や、やあ、シリアン」
「よう、ジル」懸垂していた木の枝から手を放して、肩越しにこっちを見る。「お! 俺のろうそく!」
「な、何がそんなに特別なの?」
「気にすんな、お前の親父さんとちょっと取引しただけだ」汗をかいたまま近づいてきて、私の手からろうそくを受け取り、地面にそっと置く。
それから、いつも通り、シリアンが私を鍛え始める。鍛錬は好き。でも最近は、シリアンがそばにいてくれるから好きなんだと思う……。
「大丈夫か、ジル? 顔が赤くなってるぞ」蹴りの手本を見せるのをやめて、シリアンが言う。
「う、うん」
わ、私、お母さんがお父さんを好きみたいに、シリアンのこと好きなわけじゃない……と思う、けど……もしかして?
鍛錬が終わったあとは、いつも通り、木にもたれて並んで座る。
シリアンはいつも静かだけど、気にならない。私が何か言えば話してくれるし、気まぐれに話しかけてくれることもあるから。
でも、シリアンはいつも何か考えごとをしてる……きっと、何かかっこいいことを考えてるんだと思う。シリアンみたいに。
でも今は、どうやったらずっと一緒にいてもらえるか、考えなきゃ……。
うーん……。
その七
あとで、話が終わったら……本当に、ずっと一緒にいてもらえることになった!
まあ、一応……。
本気の勝負で、シリアンを地面に倒さなきゃいけないんだけど……。
それができるようになるには、一生鍛えなきゃいけないと思う……でも、それしか方法がないなら、やる。
シリアンのために。
地面で腕立て伏せを始める。
毎日シリアンにたくさんやらされたから、腕立て伏せはすごく楽になった。
日が沈むまでに、たくさんできた……正確な数はわからないけど。
数の数え方、覚えたいな。でもお父さんは、まだ覚えなくていいって言ってた……。
シリアンなら知ってると思う……教えてもらえないか聞いてみようかな。
暗くなってきたから、走って家に帰る。
外、すごく怖い……暗いのは普段そこまで苦手じゃないけど、森の中だとすごく不気味。
でも、なんとか息を切らしながら家にたどり着く。
中に入ると、お父さんとお母さんが晩ごはんを食べている――野菜と牛肉。
「ちょうど晩ごはんに間に合ったわね」お母さんが口元を拭きながら言う。
「おかえり」お父さんが口をいっぱいにしたまま言う。
「た、ただいま」そう言って座り、食べ始める。
最近、お母さんが晩ごはんを一緒に食べてくれることが多くなって、うれしい……。
お父さんが十分稼げるようになったから、お母さんはそんなに働かなくてよくなった。それでも、まだたくさん働いてるけど……。
たしか、シリアンが私を助けてくれた次の日からだったと思う。お母さんが一緒に晩ごはんを食べてくれるようになったのは……。
シリアンが助けてくれたあの日から……全部、よくなった気がする。
その八
――シリアン視点――
全部、退屈だ。
殺しがしたいわけじゃない……マジで。
今、自分が何をしたいのかわからない。
暇だ……。
ジルと本気の勝負でもするか?
いや、それはまだ取っておきたい。
もっと鍛えるか?
いや、どうせ全部同じだ……。
何もかも同じだ。
なんで殺したいと思わないんだ?
気持ちいいはずなのに……。
ただ、そういう気分じゃない。
「大丈夫、シリアン?」
「ああ……なあ、ジル、お前って遊ぶとき何してる?」
「えっと……シリアンと話して……シリアンと鍛えて……うーん……それくらいかな……あっ、農場の動物たちも面白いよ!」
「お前、ほんと子供だな」そう言うと、自然と小さな笑みが浮かぶ。
こいつは、俺を笑わせることができる。
こいつが親友で、よかった。
「そ、それって悪いこと?」
「いや、悪くない」
ジルを引き寄せて、髪をくしゃくしゃにする。
「ずっと子供のままでいろよ。いいな? 俺のために」
「う、うん、シリアン」




