日曜日 ボランティア部
忙しい者は仕事に追われる。探偵たちはティータイム。
日曜日の捕り物は最後に和やかな雰囲気になり、大団円となった――と思いきや、ワンゲル部は生徒会の審議にかけられることになった。
「見逃してくれよー」というワンゲル部の悲鳴は松前さんによってあっさりと無視された。
「やったことの責任はとらなければならない」
米をあちこちにばら撒いたのは事実だ。騒ぎになってしまった以上有耶無耶にすることはできない。
それに密かに無届けのワインセラーを学校外に持ち出して証拠隠滅を図ったり、それを咎められると暴れたり走ったり、何の処分もないのはおかしいだろう――と松前さんに言われ、ワンゲル部の男たちはシュンとなった。
九時半、何の用もない僕は家に帰れるはずだったのだが、どういう訳かボランティア部の部室にいた。
松前さんと中等部生徒会の東矢さん、渋谷くんは生徒会の仕事をするために生徒会室へ行った。山縣さんと須磨は新聞部だ。ワンゲル部のひとたちは帰った。
ボランティア部の部室にいるのは、明石さん、舞子、僕。そしてボランティア部の部長である前薗さんだった。
日曜日でも部活で登校してくる生徒は多い。九時を過ぎたあたりからたくさんの生徒が登校しているようだった。
「お疲れさまでした」
前薗さんが淹れてくれる紅茶はいつも美味しい。市販のティーバッグとのことだが淹れ方が違うのだろうか。それとも前薗さんが淹れるからか。紅茶はその場の雰囲気も合わせて飲むものなのかもしれない。
「ただのダージリンだと思うがこの一杯は絶品だね」明石会長もご満悦だ。「さすがはプリンセス」
「ありがとうございます」前薗さんは慎ましやかに頭を下げた。
「結局のところ」明石さんが語り始めた。「金曜日の米バラマキはワンゲル部の仕業で幕を引くのだろう。月曜日のバラマキとは無関係だ。松前はいっそのこと月曜日のバラマキもワンゲル部のせいにして幕引きしたかったようだが」
確かにそういう顔をしていましたね、松前さん。さすがに冤罪を押しつけるのはワンゲル部が可哀相です。
「月曜日に見つかった米にはワンゲル部に保管されていた米も混じっていた。その他にもち米も混じっていたし、複数の人間があちこちから持ち寄ったのだろう。家から持ってきたとしたらかなり計画的だな。いや――ワンゲル部に侵入したヤツもしくはその仲間が他の部室にあった米を盗んでばら撒いた可能性もあるな。だとしたらこれは侵入者たちによる告発だ。いくつもの部室に学校側が認めない食料が隠し持たれていることを告発したのだ」
相変わらず想像力はたくましい。
「ごめんなさい。ボランティア部もお菓子やらを隠し持っています」
前薗さんが涼しげな微笑を浮かべる。
この紅茶もお菓子もいちいち許可を得て置いている訳ではないのだろう。
「これくらいは許されるだろうよ」明石さんが言った。「プリンセス率いるボランティア部はどこの部活より学園に貢献している」
「ありがとうございます」
「となると――」明石さんは立ち上がった。「侵入者たちの正体を掴まないことにはこの事件の解決にはならないな。それが座敷童子にせよ裏生徒会にせよ、呼び方が違うだけで実体は同じだ」
明石さんは何だか滾ったような顔をして「ごちそうさま、プリンセス」と言って出て行った。
風のようなひとだ。
「お忙しいのですね」前薗さんが呟くように言う。
「ある意味――学園で一番忙しい人かもな」舞子が笑った。
そんなのを聞いたら松前さんは怒るだろうな。
「この件はこれ以上明らかになることはないかもな」舞子は真顔になる。「きっと愉快犯や模倣犯も出ない」
それはまるで真相が明らかになることを望んでいないような言い方だった。
「そうだと良いですわ」
前薗さんが言った。
時:二度目の米ばらまきがあった日の二日後――日曜日九時半
場所:ボランティア部部室
ここの登場人物
明石透 ミステリー研究会会長
舞子実里 ミステリー研究会会員
芦屋憲勇 ミステリー研究会会員 僕 語り手
前園純香 中等部三年生 ボランティア部部長 御堂藤のプリンセス




