うちの子、最強!
「さて、どう料理してくれようか!」
アーノルドの中に入っている神が、トーマス様を天界に連れて行ってコレクションという名の男娼にするというのだ!最愛なるトーマス様の純潔を奪おうとする輩を、忠実なる下僕である私が守らないで、誰が守るというのだ!!
それに、将来の従業員である唐揚げちゃんにまで手を出して……。絶対に、許さんぜよ!
「にゃんこよ。お主なら、本当に、唐揚げちゃんを助けられるのだな」
「うん!あの子の魂は、まだ、身体から離れてないから大丈夫だよ!」
「ふむ。では、お主に唐揚げちゃんとアリシアを任せたぞ!」
「合点承知の助!」
私の肩の上に乗っていた真っ白のラグドールちゃんは、そう言いながら2人の元に走り去って行く。
「……あのにゃんこ。何歳だよ……。てか、もしや、日本人なんじゃ?」
「ちょっと〜!さっさと私の上から降りなさいよ〜!」
「あぁ?」
「私は天界の長よ〜!下賤なる者が触れていい存在じゃないのよ〜!」
「あぁ?っせーな。ゴミが喋るな」
「なっ!ゴ、ゴミですって〜!」
「あ〜、ゴミは使い道もあるけど、使い道のないお前は、ゴミ以下のクズ野郎か」
「あははは〜!クズだって〜!てかさ〜、天界の長だなんて、何言っちゃってるの〜?」
私に背中に乗られてうつ伏せで倒れているアーノルドの顔を、ペチペチと肉球パンチをしながら「うける〜!」と、非常に感じ悪く人を苛立たせる笑顔で楽しそうに笑うミケラの姿を見て、本当にミケラは神の使いなのかと疑問に思う。
しかし、アーノルドの身体からどうやってキモい奴を追い出すか。火、風、水、土属性使えてレベル99のカンストしてる私が負けるわけがないのだが、本気で殴ったらアーノルドの身体がバラバラ事件になっちゃうしな。
『真奈美〜!今からやって欲しい事を言うよ〜!』
っと、ミケラが頭の中にテレパシーで話しかけてきた。この頭の中で声が響く感覚が、キモくて好きじゃないんだよね……。
『やって欲しい事ってなに?』
『コイツの半分が今魔界あるから〜、残りのコイツも魔界に送りたいんだよね〜』
『それで?』
『……なんか冷た〜い』
『頭の中に声が響いてキモいんだよ!それに、暴れるコイツを踏みつけてるのも面倒い!』
『も〜、酷いな〜!それじゃあ、簡潔に言うけど〜。真奈美の負の感情を込めて思いっきり殴って!』
『負の……感情?』
『そうだよ〜!天界の奴らは黒い負の感情に弱いんだ〜。だから、真奈美の負の感情をアーノルドの体内に押し込んで、コイツを身体から追い出すんだ〜!』
『ふむ、ところてん方式かな?』
『そんな感じ〜!あの頃の真奈美を思い出して負の感情を、押し込んじゃって〜!』
『あの頃の、負の感情ね……』
あの頃……。ブラック企業やパワハラ・セクハラなどの言葉のない時代……。上司の言葉は絶対……。どんな理不尽な事を言われても耐えなければならない……。飲み会ではぶりっ子姫やゴマすり男子がチヤホヤされて、体育会系の私は無茶振りのオンパレード……。気の強いアヴリル・◯ビーンみたいな子が好きと言いながら、可愛らしい女の子の方が良いと浮気され振られる……。近寄ってくるのは金目当てのホストか遊び目的の既婚者達……。両親の離婚と実家の土地を売り払って引越しした事を従兄弟から聞いてはじめて知る……。
怨み、嫉み、辛み、僻み、嫌み、嫉み……。
そして、後悔……、諦め……、絶望……。
それでも、サークルの2人が居たから耐えられて、やっと夢だった自分の店を持ててこれからって時に、トラックにはねられて死亡……。私の人生ってなんだったんだろう……。
あぁ、この感覚……。懐かしいな。
こっちの世界に来てからは、アリシアとトーマス様との生活が楽しくて幸せ過ぎて忘れていた、どす黒くどろどろとしたヘドロの様に心に纏わりつく負の感情……。
「私は、神って存在が嫌いなのよね……」
「この下等生物!早くどけ!」
「超えられない試練は与えないだとか、幸も不幸も平等にやってくるだとか、ふざけやがって……」
「なにを訳のわからない事を言ってる!いいからどけ!」
「偉そうに講釈垂れるなら、お前ら神達も、私と同じ目にあえば良いんだ‼︎食らえ!真奈美の七味玉!」
タマ◯二等兵よろしく、手のひらに集めた私のドス黒い負の感情の黒い玉を、アーノルドの顔面に押し当てるた。すると「グアアアア!」と、叫びながらながら白目を剥いて頭や首を掻きむしる。力強く爪で掻きむしっているからか、血がじわじわと滲み出てくる。まあ、自己中で自己愛の強い神には刺激が強いかもね!
物心ついた時には家を出て1人で生きていく事ばかり考え、中高ではありもしない色んな出鱈目の噂を撒き散らかされたりもした。唯一料理をしてる時だけが無心になれて、心が癒されていく感じがした。けれど、趣味で作っている時は良かったが、初めて働いた和食屋で大好きだった料理が嫌いになっていった……。お客様から美味しかったと言われて幸せな気持ちになっても、「大将の料理は最高だね!」「真奈美ちゃんも勉強するといいよ!」の言葉に「下ごしらえから味付け盛り付けまで私が全部やってるんだ!」と言いたくても言えない。「勉強させていただき、大将と女将さんに感謝してます」と、言うしかない。
そんな辛い時でも、神達は「耐えられる試練」と吐くのだろう。
「耐えられる試練なんだろ!なら貴様も耐えてみろよ!」
「ぬあああ!くそ!離せ!」
「真奈美!開くよ〜!」
「へ?何を?」
「魔界への扉だよ〜!」
「GO TO HELL!!!」
「や!やめ……」
それは一瞬の出来事でした。さっきまでボロボロになった王城に居たはずなのに、今は絢爛豪華なパーティー会場に居るのです。
人間の姿をしているのもいれば、角が生えてたり大きな牙を生やしていたり、獣の顔をした魔物達や色々な魔界の住人が、舞踏会のようにダンスを踊っている。
「全然……、HELLじゃない……」
荒れ果て世界に獰猛な魔獣や、人の欲を貪り喰らうおどろおどろしい悪魔達がいると思っていたのに……。なんや、このキラキラした世界は……。リア充ばかりやんけ!いてこますぞ!
「待っていたぞ!コーデルハイム嬢」
なんとも胸に響くバリトンボイスのイケボが、私の聴覚を刺激した!前世を通してここまでのイケボは聞いた事がない!
ダンスホールから声がした背後に顔を向けると、そこには一段高い玉座があった。金色に輝く大きな椅子が3脚あり二回りは大きい真ん中の椅子には、艶やかに光り輝く漆黒の糸の様に綺麗な長い髪を、陶器のように滑らかな白い綺麗な肌がより美しさを引き立たせている。そして、私を射抜くように見つめる、赤と黒が混じったような色をした宝石の様な瞳を宿した切れ長の目は、寒気を感じる程に美しい。
そんな美しい男の人が、真っ白な人の様な物を踏み潰しながら足を組み、背もたれにもたれながら下々の者を見下す様は、まるで神様の様に神々しい……。
「……神だ。神が、ここにいる!」
「ほう!神とな!まあ、間違いではないな」
「魔界にも、神はいたんだ……」
「そうだ。我が名は、ウィルスティル・ランベルトだ。魔界の神であり、魔王である」
「はぅわー!魔界の神様、めっちゃイケメンじゃん!天界より魔界の方が天国だったりして!」
この魔王様は確かに超絶イケメンだけどもね〜。
「う〜ん。でもね」
「どうした?コーデルハイム嬢?」
うん!それでも、私の推しの方が断然カッコいいね!うちの子最強伝説よ!
「うちの圭ちゃんと、トーマス様の方がイケメンね!2人が最強よ!」
お読みいただきありがとうございます♪




