希望と幸運の
「ミケラ様、少々やり過ぎました?」
ミケラ様いわく、神にかけられた呪いを解呪する為にはお姉様の力が必要、その力とはお姉様の中にあるアムラ様の神力である。使うにはお父様に協力が必要なのです。なにやら、お姉様はその力を無意識に使っているらしく、それも、失神する程お父さんに萌えた時に、その神力が発現するらしいですわ。
そして、その神力でルーシーにかけられた呪術を解呪する為に、お父様に協力してもらったのですが……。
どうやら、やり過ぎたみたいですわ。
お姉様がルーシーの口の中を覗き込んだら、後ろから抱きしめて耳元で応援してあげてとお父様にお願いしたのです。お父様は私のお願い通りに、お姉様を後ろから抱きしめて「頑張って」っと言い頭をヨシヨシと撫でたのです。流石はお父様!っと思っていると、お姉様は身体から白い光を爆発させて気を失ってしまったのです。
今は、お父様の膝枕でと思ったのですがミケラ様がどうしてもと言うので、狐姿のミケラ様を枕にして寝かせております。
「やり過ぎじゃないよ〜!」
「まさか、気絶するとは思いませんでしたわ!お姉様は直ぐに目を覚ますのですよね!」
「大丈夫だから安心して〜!すぐに夢から醒めるよ〜!まず今は、ちゃんと解呪できたら確認しないと〜」
なんだか、ミケラ様に誤魔化された気もします。気を失っているのお姉様がミケラ様の側が1番安全だとは思いますが、釈然としませんわ。でも、無事に解呪できたのかを確認しなければならないのは確かです。
何が起きてるのか分からず目をパチクリさせながら戸惑っているルーシーの前にしゃがみ込み頭をヨシヨシと撫でると、頬を赤ながら幸せそうに笑うルーシーを笑顔を見た瞬間に、私の心臓は撃ち抜かれ、お姉様みたいに失神するかと思いましたわ!
早く口の中の刻印が消えているかを、確認しなくてはなりませんわ!
「ルーシー。お口を開けてくれるかしら?」
コクコクっと頷き大きく開いた口の中を覗き込むと、喉の奥で光っていた刻印が消えていますわ!
流石はお姉様ですわ!これでルーシーの可愛い声が聞けるのですね!
「呪いが消えてますわ!ほら、ルーシー!私の名前を、読んでみて!」
「……、ア…、アリ…、シア、様…」
声を出すと激痛に襲われる呪いのせいで、恐る恐る震えながら私の名前を呼んでくれたルーシーの目から大粒の涙がポロポロと溢れると、不安気な表現だった顔は喜びと嬉しさで満ちた笑顔に変わりましたわ!
やっぱり、ルーシーには笑顔が1番似合いますわね!
「アリシア様‼︎」
「ルーシー」
「アリシア様‼︎アリシア様‼︎」
「ルーシー。本当に、良かった…」
「アリシアさまぁ‼︎」
本当に解呪出来て良かったですわ!こんなにも可愛い声が聞けるなんて!
ルーシーが泣き崩れながら私に抱きつこうとした瞬間、パン!っと乾いた音が鳴り響きました。
そして、可愛い声で私の名を呼んだ口の端から、ツーっと、真っ赤な線が伸びるました。
「……ルーシー。」
「アリ……、ガハッ!」
ルーシーの口から飛び出した大量の真っ赤な血が、私の薄い水色のワンピースに広がり赤紫色に変わっていくのを、何が起きたか分からずに呆けて見ているところに、ルーシーがドサッと力無く倒れてきた衝撃で我に返りましたわ!
「ルーシー!どうしたの!?」
なにが起きたの!?ルーシーに一体何が起きたの!?
ルーシーの口から零れ落ちる血を止めようと両手で押さえても指の隙間から滲み出る血よりも、口や鼻から掛かるはずの息が…、息が…、私の掌に感じられないのです……。
「駄目よ…、ルーシー死んじゃ駄目よ!」
「あ〜あ、や〜と死んだんだね〜!」
「なんですって!」
声がする方を振り返ると、私のすぐ背後までアーノルド殿下が近づいて来ています。けれど、様子が変ですわ……。性格はアレでも纏うオーラには王族の証である聖属性の金色をしているのに、何故か銀白色をしているのです。そして、なによりも、王様に似た深い海の色をした碧眼が真っ白な瞳で、まるで天界人の様ですわ……。
まさか…………。
「アリシア!下がって!」
お父様の姿をしたミケラ様が、私とルーシーを守る様に立ち塞がると、結界を張ってくれました。
「危ないから、結界から出ちゃ駄目だよ!」
「……」
「久しいわね〜、アムラのペットちゃ〜ん!」
「はっ!お前は相変わらずなドブ臭だな!」
「やだやだ〜!これだから底辺の種族って嫌よね〜!高貴な香りが分からないのだもの〜!」
え?ちょと、え?待って下さい、ミケラ様?
「よく言うだろ?自分の臭いは分からないってね。お前、天界の奴等にもドブ臭だの、ゲロ臭だの言われてるぞ?」
「なっ!あの子達がそんな事言うわけないわよ〜!みんな私に夢中なのよ〜!」
「はいはい、さいですな…」
「ミケラ様が普通に喋ってる!」
ちょっと!ミケラ様ったら普通に話せましたの!?いつも馬鹿みたいな話し方だったのに!
それよりも、一体何が起きているの?ルーシーは助かるの?お姉様は何処に行ったの?私は何も出来ないの?
「ちょっとね、ふざけていられない状況でね…。アーノルドの身体からアイツを切り離さないといけないけど、魂が完全に侵食されて、気を抜いたらアーノルドを殺しかねないね……」
「そんな……」
振り向かなくても分かるほどに、ミケラ様の声から切羽詰まっているのが伝わってきます。お姉様が居たら……、ルーシーもこんな目に合わなかったはすだわ……。私に力が無いばかりに……。前世であんなにエルと修行しても、少女1人も守れないなんて……。
無力な自分に悲しくなり涙が頬を伝うい、ルーシーの閉じている瞼を濡らします。まるで、痛みに涙している様ですわ……。
絶望感に襲われた私は力なく「お姉様……、助けて……」と、小さな声で呟くと「呼んだ?」っと、明るくて優しい大好きな声が聞こえましたわ!
項垂れていた顔を上げると、うつ伏せで横たわるアーノルド殿下の背中の上に、仁王立ちで立っている姿が見えて、嬉しく涙が溢れてきますわ!
「お姉様!」
そして、左肩には私の大好きな、ケサランパサランの様なふわふわな真っ白くて大きな毛球が、前足を垂らして乗っているのです!ずっと、会いたかったあの子が!
「アリシア!麗しのお姉様と幸運のにゃんこが、今助けるからね!」
「待たせたね!アリシアの希望と幸運のにゃんこが、帰って来たよ!」
「エル!?本当にエルなの?」
「そうだよ!アリシアを助ける為に、帰って来たよ!」
「唐揚げちゃんどうした?何があったの?」
「お姉様!エル!ルーシーが!血を吐いて、息をしてないんです!ルーシーを、助けて下さい!」
「その子は、僕が助けられるから大丈夫だよ!だから、安心してそこで待っててね!」
「ああ!ありがとう、エル!お姉様!」
「ちょっと〜!真奈美の肩は僕の特等席なんだぞ〜!お前離れろ〜!」
お姉様とエルの登場にミケラ様も安心したのか、いつもの口調に戻ってますね。
私も2人を見たら、絶望感に襲われた心が落ち着いて温かな気持ちになりましたわ。やっぱり、お姉様とエルは私の希望の光ですわ!
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