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四、屋根完成




砂浜へ戻ると、蒼空はどこかで見つけたであろうビニールシートを広げていた。


「蒼空、それどうしたんだ」

「あ、航太、おかえり」


蒼空は振り向いて立ち上がった。


「さっきさ、偶然これが流れ着いてね」

「へぇ~ラッキーだったな」


そのビニールシートは、どこの家庭でも一つは持っているであろう「あの」青いシートだった。


「ね、航太。そっち持ってくれる?」

「ああ、わかった」


俺たちは互いに両端を持ち、改めて大きさを確認した。


「うん、これなら屋根の代用になるね」


蒼空はシートを置き、枝のある場所へ移動した。


「航太も一緒に削ろうよ」


蒼空はナイフを手にし、枝の端を削り始めた。

俺も取ってきた枝をその場に置き、そのうちの一本を手にしナイフで削り始めた。


「あ、そういえばさ。山の奥に洞窟があるみたいだぞ」

「え・・洞窟?」

「なんかさ、飯島が見つけたらしいよ」

「へぇ~」

「どうする?そっちへ行くか」

「ダメだよ~。せっかくこれ作ってるのに」


蒼空は意外とサバイバルが好きなのかも知れないな。

こんな面倒なこと切り上げて、そっちへ行った方が楽なのに。


「それとも航太はそうしたいの?」

「いや・・別に俺もそういうわけじゃないけど」

「じゃ、決まりだね」


蒼空は嬉しそうに笑った。


「これを何本か地面に刺して、シートに穴を開けて被れせればとりあえずはいいよね」

「そうだな。寝るだけだし高さもそんなにいらないしな」


俺たちは何なら、ウキウキと歌を口ずさみながら作業が進んでいた。


「大変そうだね」


そこにまた、田地がやって来た。


「別に」


蒼空は田地の顔も見ずに返事をした。


「そんなことしなくったって、洞窟があるのに」

「きみはそっちへ行けば」

「言われなくても行くつもりだよ」

「だったら、さっさと行けばいいじゃないか」


蒼空は田地を見上げて睨んでいた。


「言っとくけど、洞窟は僕たちの物だからね」

「はあ?」


そこで蒼空が立ち上がった。


「な・・なんだよ」

「早く洞窟でもどこへでも行けばいいだろ!なんだよ、僕たちの物って。きみってほんとに勝手だよね」

「蒼空、こんなやつ放っとこう」


蒼空は俺を見た。


「田地、早く行けば?俺、お前を見てるとムカツクんだけど」

「なんだよ、ムカツクって。もう~~絶対に来ないでよねっ!」


田地は太い脚で、思いっ切り砂浜を踏みつけるようにズシンズシンと山の方へ向かって歩いた。


「まるで怪獣だよね」


蒼空が俺を見て笑った。


「そうだな」


俺も笑ってそれに応えた。

ほどなくして地面に刺す枝も完成し、ナイフでシートに穴を開け枝に被せた。


「おおお~~」


俺たちは不格好ながらも、屋根として完成したことに満足していた。

そして蒼空は段ボールを解体し、ベッド代わりに「屋根」の下に敷いた。


「わあ~~、これって結構いいよね!」


蒼空は早速、段ボールの上に寝転がっていた。

俺も蒼空の横に寝そべった。


「あはは、これってちょっと暑くないか?」

「ほんとだね。でも夜になるとちょうどいいかも」


そして俺たちは少しだけ水を飲んだ。


「そういえばさ、水のありか、どうする?」


蒼空がペットボトルの蓋を閉めながら言った。


「そうだなあ。今日はいいとして、明日にでもまた探しに行くか」

「そうだね」


そして俺たちは暫く昼寝をした。


目が覚めると俺はびっしょり汗をかいていた。

それは蒼空も同じで、俺たちは服を脱いでまた海に入った。


「ああ~~!気持ちいいね」


蒼空は平泳ぎをしながら、少しだけ沖へ行った。

俺はあおむけになり、海面に体を浮かせて空を眺めていた。


「晩飯はどうするかなあ」


俺は独り言を呟いた。


「缶詰、食べようよ」


戻ってきた蒼空が言った。


「缶詰3つだろ。今夜一つ食べると、明日はマジで獲物を獲らなきゃいけないよな」

「じゃ、明日は朝から銛を作ろうか」

「銛か。それより夜になると真っ暗だよな。灯りはどうする?」

「よーし、じゃあ今から火おこしをしよう!」


蒼空は立ち上がり、そのまま海から上がった。

そして俺たちは、火おこしの道具になるような木の板や枯れ草などを集めた。


「さーて、やりますかー!」


まず蒼空は、板と固い木の枝を擦り合わせた。


「かあ~~腕がつかれる~」


五分ほど擦り合わせてみたが、全く煙が立たない。


「よし、じゃ交代するよ」


俺は蒼空から枝を受け取り、擦り合わせてみた。

しかし全く反応がない。

こうして互いに疲れた時点で交代し、繰り返しやってはみたものの全く、うんともすんとも反応がなかった。


「ああ~僕、もうダメだあ」


蒼空は手のひらを「フーッ」と吹いていた。


「俺もマジ無理だあ」

「仕方がない。今夜は諦めるかあ」

「そうだな。じゃ、晩餐といきますか!」


俺たちは陽が暮れる前に、缶詰を開けて食べた。


「飯島くんと田地くん、全く見かけないけど、ほんとに洞窟に行っちゃったんだね」


蒼空が水を飲んで言った。


「そうだな。ま、別にいいんじゃないか」

「考えたら洞窟ってさ、コウモリとかいるんじゃないの」

「だよな。他に恐ろしい虫とかいそうだし」

「田地くん、今頃ぎゃ~とか言って大変だったりして」


蒼空がくすりと笑った。


「でもあいつさ、食料、全部食べたって言ってたけど、明後日までどうするつもりなんだろな」

「さあねぇ。飯島くんにもらってるんじゃないの」


俺たちは他愛もない話をしながら、何もすることがなく時間が過ぎていった。


「それにしても退屈だよね」


蒼空がそう言った。


「電気もガスも水道もないって、こんな生活なんだなあ」

「昔の人って、こんなだったんだよね。原始人とか」

「一日中、なにしてたんだろな」

「男は狩り、女は子育て?」

「それだけか。現代じゃ考えられないな」

「さてと、もう寝ますか」

「そうだな」


そして俺と蒼空は並んで横になり、サバイバル生活一日目が終わった。

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