三、寝床
山へ入ると様々な木々が生え、俺たちはそれらを手で振り払いながら前へ進んだ。
「やっぱりさ、水のありかを先に見つけておくべきだと思うんだけど」
蒼空が提案した。
確かにそうだ。
ペットボトルの水は、一人三本だし、おまけにこの暑さだ。
直ぐになくなるかも知れないしな。
「そうだな。どうやって探す?」
「小川とかないのかな」
そう言いながら蒼空は、更に奥へと進み、俺も後に続いた。
すると俺たちの前を、野ウサギが横切った。
「あっ!」
蒼空は野ウサギの後を追いかけて走り出した。
「蒼空!追いつけないって」
俺は蒼空を追いかけた。
「野ウサギがいるってことは、他の動物とかもいるよね」
蒼空は野ウサギを追いかけることを諦め、立ち止まってそう言った。
「そだな」
「でもさ、どうやって捕まえるかだよね」
「武器もなんもないし、それこそ素手では無理だよな」
「それより、一旦戻って寝床とか確保した方がいいかもね」
夏とはいえ、屋根がないと夜は冷えるに決まってる。
風邪でも引いたら、なにしに来たかわからなくなるしな。
「どうする?なんか探す?」
俺がそう訊いた。
「とりあえずさ、ナイフはあるんだし、細い枝を切ってそれを柱代わりにして立てて、その上になんかシート代わりになる物を見つけて被せるとか」
俺は蒼空の提案を呑んだ。
「それと段ボールの空き箱。あれを敷いて寝ればいいんじゃない?」
「おお、それはいいかもな」
俺たちは砂浜に戻る途中で、落ちている枝を何本が拾って戻った。
蒼空が早速ナイフを使って、枝の先端部分を細く削ることにした。
「なにか見つけた~?」
田地が待ってましたと言わんばかりに、俺たちの場所まで走ってきた。
「何も見つからなかったよ」
蒼空は迷惑そうに言った。
「なんだあ~、期待してたのにさぁ」
「自分で探せば?」
蒼空は手にしていた枝で、振り払うように田地に向けた。
「その枝ってなにするの?」
田地は気にする素振りもなかった。
「これを立てて、この上に何か被せるんだよ」
「ふーん。それって屋根代わり?」
「そう。わかったなら邪魔しないでくれるかな」
「なんかさ~、そんなことしなくったって、寝ころぶだけでいいんじゃないの?」
「きみは、そうすればいいだろ」
「言われなくてもそうするつもりだけど」
蒼空は「はぁ・・」と呆れてため息をついた。
「田地ってさ、なにしにここへ来たんだよ」
俺は田地を呼び捨てにした。
「またそれを訊くんだ」
「おかしいか?」
「どう過ごそうと僕の勝手だろ」
「そりゃそうだ。だったら俺たちに何も期待するな。なにか見つけても田地にはあげないし」
「そうなんだ。わかった。僕は飯島くんを頼りにするよ」
田地はある意味逆切れして、飯島のいる場所へ向かった。
「なんだろね、あの身勝手な態度」
蒼空は呆れて言った。
「んじゃ俺は、枝を切って来るよ」
俺はナイフを手にして、蒼空に手を振り再び山の中へ入った。
適当な枝を見つけ切ろうとしたが、これがなかなか上手くいかない。
斧でもあれば一発で切れるところなのだが、そうも言ってられない。
軍手もないしな。
手を切らないようにしないと・・
俺はもうナイフを使うのを止め、力任せに折れそうな枝を選んで折っていった。
「あ・・」
そこで飯島と出くわした。
「飯島も何か探しに来たのか?」
「いや、特にそう言うわけではないんだけど」
「じゃ、なにしに来たんだ」
「散歩・・というか、まあ散策だね」
「あのさ」
俺は田地のことを訊いてみることにした。
「なに?」
「田地って、どんなやつなんだ」
「どんなって?」
「あいつさ、人に頼ってばかりで自分で何とかしようとかないの?」
「さあねぇ。僕は彼とは塾が同じってだけで、友達でもないし」
「じゃあ、なんで一緒に来たんだよ」
「偶然だよ」
「そうなのか」
「それより、きみたちは屋根を拵えているそうだね」
「ああ」
「そんなことしなくったって、洞窟があるのに」
「え・・」
洞窟・・
そっか、洞窟で寝れば屋根を作る必要もないな。
「見つけたのか」
「うん」
「どこで」
「きみと反対側からここへ入る途中にね」
「そっか。悪いけど、そこ教えてくれない?」
「ヤダなぁ」
「え・・」
「これはサバイバルだよ」
「・・・」
「それこそ、人を頼りにしてたらなにしに来たのってなるよ」
「あ・・うん、確かにそうだな」
俺は少し恥ずかしくなった。
「ヒントはあげたんだから、自分で探してね」
「わかった」
俺は、とりあえず折った枝を持って砂浜に戻ることにした。




