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悪役令嬢、あざと転生ヒロインの「推し活」を始めたら、王子もろとも社会的に抹殺してしまった件  作者: 紺木羽ノ歌


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第2話:公式(自作)グッズの全国展開と聖地巡礼

断罪イベントの翌朝。


第一王子レオンは、前夜の奇妙な狂騒から一転、爽快な気分で王立学園の廊下を歩いていた。


(フッ……セリスのやつ、昨夜はショックのあまり正気を失って絵など描いていたようだが、これで晴れてあの女との腐れ縁も終わりだ。これからは愛しいクロエと堂々と付き合っていける……)


そんな王者の余裕は、角を曲がった直後に砕け散ることになる。


廊下の向こうから歩いてくる学園の警備騎士たちの胸元に、朝日に反射して眩しく輝く「何か」が装着されていた。


「……ん? なんだそれは。騎士団の新しい階級章か?」


レオンが呼び止めると、騎士はビシッと敬礼を捧げ、胸を張って答えた。


「はい、殿下! ご覧ください! セリス様が夕べ徹夜でデザインされ、ローゼンベルク公爵家の魔法工房が総力を挙げて一夜で量産・配備された『レオン殿下&クロエ様・真実の愛(仮)公式アクリルスタンド』にございます!」


「あく……なんだって……!?」


騎士が見せてきたのは、厚さ三ミリの透明なアクリル板だった。


そこには、昨夜の大講堂でポーズを決めるレオンとクロエの姿が、寸分違わぬハイクオリティなフルカラーで完璧に印刷されている。


しかも土台のパーツには、金文字でデカデカとこう刻まれていた。


『祝・婚約破棄! 〜俺の個人所有物ターゲットになってみないか?〜』


「な、なんだこれはぁぁぁ! なぜ私とクロエが透明な板になって、胸元に刺さっているのだ!?」


「さらに、本日の給仕および侍女一同は『公式痛バッグ』を着用して公務に当たっております!」


「痛バッグ……!?」


レオンが廊下の先を見渡すと、城や学園で働く使用人たちが、全員おそろいの派手な透明バッグを肩から下げてキビキビと立ち働いていた。


バッグの中身は、昨夜セリスがスケッチした二人の「顔面アップ缶バッジ」や「ポエム入りアクリルキーホルダー」でぎっしりと埋め尽くされ、「推しCP尊い」「公式に感謝」と書かれた痛々しいリボンで飾られている。


「やめろ! やめてくれ! 恥ずかし死にする! 誰だこんなものを許可したのは!」


「すべてセリス様が我が国の経済を動かす勢いで資金を投入された正規の公式グッズです! ちなみに国王陛下も『最近の若者の流行りは分からんが、我が息子の凛々しい(イタい)顔がよく撮れている』と、執務室の机に特大アクスタを飾っておられます!」


「父上ぇぇぇぇ! 騙されないでくれぇぇぇ!!」


廊下にレオンの悲痛な叫びがこだました。


だが、セリスの「公式プロデュース(推し活)」は、こんな生易しいものでは終わらなかった。


昼休み。精神的に疲弊したレオンは、クロエと二人きりで癒やしの時間を過ごそうと、学園の中庭へと向かった。


「レオン様ぁ〜……なんか今日、みんなの視線がヘンなの……『アクスタ買った?』とか話しかけられるし……」


「大丈夫だクロエ、あの女の悪あがきなどすぐに沈静化する。さあ、いつものあのベンチで……」


しかし、二人がお気に入りのベンチへ辿り着いた瞬間、レオンの言葉は凍りついた。


中庭の中央に位置するそのベンチは、立派な木製の柵で囲われ、その手前には金ピカの特大案内板が設置されていたのだ。


【聖地巡礼スポット第3号:レオン殿下が『君の瞳は僕の個人所有物』とポエムを囁いた愛のベンチ】


※注意事項:動画撮影は他のお客様のご迷惑にならないようお願いいたします。


※特別ギミック:看板下の魔導ボタンを押すと、当時の王子の音声がクリアな高音質で再生されます。


ベンチの周囲には、学園中の生徒や野次馬、さらには聞きつけた街の貴族たちまでが大挙して押し寄せ、長蛇の列を作っていた。


「きゃー! ここがあのポエムの現場!?」


「ねえねえ、ボタン押してみようよ!」


ポチッ。


『君の瞳は……僕の個人所有物……(エコー付き爆音音声)』


「「「キャーッ!! イタい! イタすぎるわ殿下ー!!(大爆笑)」」」


「な……ななな……!!」


レオンの顔面は、熟し切ったトマトのように真っ赤に染まった。


隣のクロエも、「私可哀想でしょ♡」の表情を作る余裕すらなく、ドン引きする群衆の視線に晒されて震えている。


「あ、見て! ご本人登場だよ!」


「うわぁ、本物のポエム王子だ……!」


野次馬たちが一斉にカメラ魔導具のレンズを二人へ向け、フラッシュの光がパシャパシャと焚かれる。


「ひ……ひぃぃぃっ!」


「来ないでぇぇぇ! 撮らないでぇぇぇ!」


二人は手を取り合い、悲鳴を上げながら、かつて愛を語り合った「聖地」から脱兎の如く逃げ出すしかなかった。


セリスの愛という名の社会的包囲網は、確実に二人を精神のどん底へと追い詰めつつあった。




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