↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、あざと転生ヒロインの「推し活」を始めたら、王子もろとも社会的に抹殺してしまった件  作者: 紺木羽ノ歌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/4

第1話:運命の瞬間に立ち会う


 シャンデリアの眩い光が降り注ぐ、王立学園の大講堂。


今宵の卒業パーティーは、国中の若き貴族たちが一堂に会する華やかな社交の場……となるはずだった。


「静粛に!!」


静寂を叩き割ったのは、第一王子レオン・フォン・アルカディアの金切り声に近い怒号だった。


大講堂の中央、最も目立つ一段高くなった壇上に、レオン王子は立っていた。


その隣には、桃色のふわふわした髪を揺らし、可憐なドレスの裾をキュッと握りしめた転生ヒロイン、クロエ・ミリガン。さらにはレオンの背後で、重厚な甲冑に身を包んだ側近騎士カイル・ヴァリエールが、いつでも剣を抜けるよう柄に手をかけてセリスを威嚇している。


「セリス・フォン・ローゼンベルク! 貴様のような嫉妬深く、心根の曲がり切った女との婚約は、本日只今をもって破棄させてもらう! そして俺は、この真実の愛で結ばれた聖なる乙女、クロエと新たに婚約を結ぶことを宣言する!!」


レオン王子の朗々とした宣言が天井に反響する。


クロエは待ってましたとばかりに、これ見よがしにレオンの腕にしがみついた。


「ああ……レオン様ぁ……♡ 私、セリス様に教科書を破られたり、階段から突き落とされそうになったりして本当におそろしかったの……。でも、レオン様がこうして守ってくださるから……私、私……っ♡」


うるうると瞳を潤ませ、上目遣いでレオンを見上げるクロエ。


その「被害者演出」の完璧さに、大講堂を埋め尽くす生徒たちからは息をのむ音が漏れた。


「聞こえたかセリス! 貴様の陰湿な悪行の数々、もはや庇い立てなどできん! おとなしく罪を認め、この国から去るがいい!」


レオン王子がビシッと人差し指をセリスへ突きつける。


悪役令嬢として糾弾された公爵令嬢、セリス・フォン・ローゼンベルク。


本来であれば、ここで彼女は青ざめ、冤罪を訴えるか、絶望に膝をつくはずだった。


——しかし、当のセリスの反応は、そこにいる全員の想定をはるかに超越していた。


「〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!(無言の爆裂悶絶)」


「ぬ……っ!?」


セリスは両手で自らの口元を固く覆い、顔を真っ赤に染め上げてガクガクと全身を打ち震わせていた。


その瞳はらんらんと怪しい輝きを放ち、呼吸は荒く、今にも正気を失って発狂しそうな勢いである。


(て、尊い……! 尊すぎる……!! 何この神展開!!? 『身分差を乗り越えるイタいバカ王子×あざとカワイイ転生女』の王道成り上がりCPカップリングが、今まさに目の前で生えて生み出されている……!!)


何を隠そう、このセリス・フォン・ローゼンベルクには、前世の記憶があった。


前世の彼女は、コミケの壁サークルで同人誌を叩き売り、推しCPの尊さに毎日尊死していた重度の【CP厨・限界オタク】。


これまで気弱でおとなしかった令嬢セリスの意識の底から、土壇場で前世の「推しを愛でる業の深い血」が怒涛の勢いで大覚醒してしまったのだ。


「な、なんだ……? ショックのあまり、ついに頭がおかしくなったのか……!?」


予想外のリアクションに不気味さを感じたレオン王子が、思わず半歩後ずさる。


しかしセリスは、まるで光を放つ宝箱を見つけたかのようなキラキラとした熱い眼差しで、壇上の三人を見つめ直した。


「す、素晴らしい……! レオン殿下のその『俺が守ってやる』感に満ち満ちた前時代的でイタいドヤ顔! そしてクロエ様の『男を転がす計算し尽くされたあざと仕客』! 解釈一致(最高)ですわ!!!」


「は……? かいしゃく……?」


「特にクロエ様! その『上目遣い+両手で握りこぶしを胸元で作る』ポーズ、角度にして完璧な45度です! 素晴らしい、あざとさの満額回答! 100点満点中1万点ですわ!!」


「えっ……あ、ありがとう……?」


生まれて初めて体験する角度からの大絶賛に、クロエは「私可哀想でしょ♡」の表情を保てなくなり、素で戸惑いの声を漏らした。


セリスのオタク・ギアは、ここから一気にトップに入った。


彼女はドレスの隠しポケットから、高級デッサン用スケッチブックと、自作の連続インク補給型魔導羽ペンをスッと取り出した。


「ちょっと待ちなさいクロエ様! そのポーズのまま固まっていてください! 殿下も! 殿下はその角度! ああ、人差し指の角度が微妙に上すぎます、もう少し下! そうです、その『身の程知らずの愚民を見下すようなイタいポーズ』をキープしてください!」


カリカリカリカリカリカリッッッ!!!


静まり返る大講堂に、セリスが猛烈な速度で羽ペンを走らせる音だけが響き渡る。


わずか数秒で、スケッチブックの上には、完璧な構図と圧倒的な画力で描かれた「レオン王子とクロエの愛の断罪シーン」が立体的に描き出されていく。


「ちょ、ちょっと待てセリス! 私は今、お前を厳しく断罪しているのだぞ! 何を描いている!?」


「静かにしてください殿下! 今、一番光の差し込み方が素晴らしいところなんです! ああっ、影の入り方が神がかっている……! 側近のカイル、あなたもボサッと立っていないで、もう少し右に寄って『二人の尊い引き立て役(無能モブ)』感を演出してください!」


「ひ、引き立て役!? 貴様、この俺をモブ扱いする気か!?」


「いいから動かないで! アオリの構図が入らなくなるでしょうが!!」


セリスの一喝に、屈強な騎士カイルが思わず「は、はいっ!」と直立不動になってしまう。


大講堂の貴族たちは、誰もが言葉を失っていた。


断罪する者と、追放される者。


本来あるべき絶望的なシリアス空気はどこへやら、そこにはただ、「最高の一枚」を収めるために狂気的な集中力を発揮する一人の限界オタクと、彼女の圧倒的な気迫に気おされてポーズを維持させられている哀れな3人組が存在するだけだった。


「よし……勝つ……! このCPは私が歴史に刻む……!!」


セリスの瞳に怪しい炎が燃え盛る。


こうして、悪役令嬢による痛い3人組への「愛と執着の推し活(物理的社会的攻撃)」の第一歩が、華々しく踏み出されたのであった!



ここまで読んでいただきありがとうございます!

ブクマや感想、★評価、リアクションなどいただけると励みになります。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。