表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本物のおうじとひめの物語  作者: ぬりえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

劇の後

「二年四組、優勝おっめでとーう!!」

「「いえーい!!」」


 委員長の掛け声で、飲み物を乾杯。


 いまいちポイントが伸び切れていなかったクラスの出し物アート展。

 とはいえ思っていた以上にお客さんが入って、クラスの出し物では一番じゃなかったけど、劇で巻き返せるところまできていたの。

 それで、劇でなんと!


 優勝!!


 と、いうわけで、わたしのクラスは三年生をも押さえて、優勝になったのです!


 賞金って話が聞こえてた気がしたけど、おかしと飲み物がプレゼントされて、全体の片付けが免除されるってことなんだって。

 そんなわけで、おめでとうのお祝いが、今、カラオケボックスで行われております。

 あ、一回目の乾杯は、もうクラスでやってきたのよ、カラオケでは二回目。

 なんでわたしもここにいるんだろ。


「広瀬、残念だったね。足大丈夫?」

「うん、歌でポット婦人になったし、おっけー!」

「ごめんね、ずっと置物役させて」


 広瀬さん、体も柔らかいからって、クラスの出し物で人間彫刻をずっとやってもらってたの。そしたら、筋を痛めちゃったみたいで、直前でダンスができなくなっちゃったんだ。

 できるといえばできるんだけど、部活に支障が出たらだめだもんね。


 それで。


「どうする?」

「やるよあたし!」

「だめだよ、大会も近いんだし」

「えー、あんなに練習したのに。でも、大会大事だよね」

「比米にパントマイムやってもらう? コメディになって笑いとれるよ」

「それもあり!」

 みたいなかんじになってたところ、

「それなら王子さんができるじゃん!」

 いらんことを演劇部長が言った。

「え?」

「ほら、ずっと練習してたんだから、台詞も覚えてたじゃん」

「そういえば、広瀬が忘れてたところ、カバーしてたよね」

「ダンス教えてくれたのも王子さんじゃん」


「「やって!!」」


「いや、わたしは木の役で……」

 みなさまの期待のまなざしに勝てなかった。ってか聞いてくれる人いなかった!

 あのときの比米さんの気持ち、よくわかります!!

 衣装どう? 木の役、誰が代わりにする? ってもう話が進んじゃってさ。

「王子、諦めな……」

 ぽん、って肩に手が乗った。比米さんの。

「うう」


 ってなわけで、わたしがやったのヒロイン役!


「おかげで生徒会長のハートをわしづかみだね!」

「たしかにあれは広瀬より王子さんがやったほうがよかったな」

「練習でも、観てるこっちがきゅんきゅんだったもん~」

 ははは。まぁ、久々でわたしも楽しんじゃってたのはある。

 生徒会長、かわいかった。



 ここはカラオケボックス、大音量で歌が流れて誰かが歌って、きらきら光ってる。

 先生がおめでとうって資金をこっそり預けてくれたおかげで、食べ物もたくさん並んで、わいわいしながらはしゃいでる。

 不参加の人には、先生が今度購買のお昼ごはんごちそうするって。いい先生だな。


 それはいい。

 こういう賑やかなのは慣れてる。でも問題は、ここは共学ってとこ! 女子高とわけが違うの! 距離感がわかんないの!

 だからわたし、最初こそ二人ともおつかれーってなったけど、途中からはしへはしへと移動して、空気になってきた。比米さんはずっとわっしょいされてる。嫌そうだけど、嫌そうでもない。


 もういいや、そろそろ購買分くらいのスナック食べたし、ちょっと外の空気吸ってこよ。


 こっそりと外に出る。


 あー、だめだ、距離感とかそういうんじゃなくて、みんな絆が深まって、わたしは浮いてる。花の高校生のはずなんだけどなぁ。

「はぁ」

 溜息も出るってもんよ。

「疲れたの?」

「わっ」

 どこから湧いて出た?!

「あー、外出るの見て、オレもそろそろ疲れたから、ついてきた」

「そ、そっかぁ~」

 誤魔化し笑い~、で誤魔化す~、

「あのさ、」 ぎく、



「ごめん」



「いや別にわざとじゃないのもわかってるしあれは事故だし気にしてないし大丈夫です!」

「その早口と顔で気にしてるの丸わかりなんだけど」

「う」


 だってぇ。





 遡ること、起きろと頭突きするシーン。


 直前で役が変わったから、当然ながらぶっつけ本番だったの。全部。

 まぁ、ダンスは練習でやったけどさ。


 あの頭突きシーンで、わたしと比米さんは、キスしてしまったの。

 いやその、ちょっと触れる、みたいなね、そういう程度なんだけどね、

 かする、程度なんですが、ね、

 でもその、やっぱさぁ、しちゃったのよ!


 なにこの本物の小説みたいな状況は!!

 その後のほうは、練習通り寸止めだったけど。


 なんとか劇は終わらせたけど、その後わたしたち、近くにいても顔を合わせられないし、ってかわたし比米さんのこと見られないし、真っ赤になっちゃうし、どうした比米、ほんとにヒロインに恋したかって男子がいじるし、比米さんに悪いくらいで、

 とにかくまぁ、そういうことなんです!


「あ、あのさ、こんなときに言うのもおかしいと思うんだけど」

「ハイ」


「王子さーん!」

「あ、いたいた、比米も一緒?」

「なんだぁ、ふたりで密会かぁ」

 なんか比米さんが頭抱えてる? 肩を落としてる?


「お願いがあって、嫌じゃなかったらなんだけど」


 お願いとは。

 わたしたち、あたしに、うちらも、


 壁ドンとキスをしてほしい!


 だそうで。


「無理」

 比米さん即答。

「うわー、自意識過剰~」

「ってか、」

「うちら頼んでるの、」


「「王子さんなんだけど!!」」


「はい?」


 カラオケの部屋に戻りました。

「えっと、では」

「待って! 制服じゃなんかぽくない」

 ぽくないとは。

「衣装置いてきちゃったよー?」

「ちょっと男子、誰か制服貸して」

「俺のでよければ」「俺のも!」「ぼくのは?」

「あー、じゃ、」

 このなかの誰でもない人を見た。

「比米、脱いで」

「はぁ?!」

「「さっさと脱げ!」」

 女子に恐喝されてる。女子のほうが強いんだなぁ。

 って、待って、このかんじだと。


「ちょっとぉ、ここで脱ぐなんて、プリンセスが恥ずかしがっちゃうじゃなぁい」

「そうよぉ、ちょっとトイレで脱がしてくるから、待っててちょうだい」

「代わりにおれ、じゃなかった、あたくしのジャージ着させておくわ」

 と裏声でわざとお姉さんみたいなしゃべりかたの男子にがっちり固められた比米さんが連れ出されていった。

 残された男は、無言でお茶をすする。手を合わせる人もいるわ。


「あのさ、王子さん」

「はい」

「あのとき、ほんとにキスしてるみたいに見えたんだけど」

「?!」

 うそでしょ?! 見てたの?! あのときって、いつ?

「どうやったの?」

 気になるのはそっちね! それなら、

「このあとやるなら、それまで待ってて……」

「あんなに堂々としてたのに、恥ずかしがってる~」

「かわいい~」


 女子のノリのおかげでわたしはなんとかなった。

 恥ずかしがってるのは、キスしちゃったあのときを思い出してるからです!



「お待たせしましたぁ~」

 裏声続く。男子高校生ってこんなんだな、ってわたしのなかで構築されてきてるけど、合ってるかな?

「はい、制服」

「あ、ありがとうございます、でも、ほんとに」


「「いいの!!」」


 と言うのは本人じゃないんだな。女子たち。ってか諦めてるよね比米さん。

「じゃ」

 預かったそれを着ようと思って、わたしがカーディガンを脱いで、ネクタイ外して、ボタンに手をかけたとき、


「ちょっと待った!!」


「あ、そうですよね、比米さん、やっぱり嫌ですよね」

「ちがうから!!」

 隣で男子たちがこくこく。顔を隠している人もいるんだけど。

「目の前で着替えるつもり?!」

「え、はい。……あ」

 ここ、男子いるんだった。

「あー……」

 しばし沈黙。

「ごめんなさい、女子高のときの習慣が残ってて」

「女子高の習慣って?」

「えーっと、どこでも着替える。体育の前は、すぐ着替え始めるから先生がそそくさと逃げるように教室出ていきましたね。生理の話も普通にします」

「へぇー」

「イケメン女子はほんとにいて、それこそヅカみたいな。バレンタインはチョコの山ができます。そのへんの男子高生とか、かっこいいと思わなくなります」

 イモにすら見えん。

「へぇー」

「ってことは王子さんさ、うちのクラスの男子、かっこいいと思ったことないの?」

「……あ、うー。」 誤魔化すぞ。

「あ、着替えても? 普通にブラトップなんで、インナーじゃないやつなんで、見られてても気にならな」


「気にして!」

「俺たち、お年頃の男の子なの!!」

「そうよそうよ!!」

 男子が裏声オネエまだやってる。


 ってことで男たちは出ていくか、壁を向いているかのどっちかになった。トイレに行かないのは、ほかのみんなが話聞きたがったから。

「で、かっこいい人、うちの学校いないの? 男子」

「ほら、サッカー部の部長とか」

「あの人彼女いるじゃん」

 ってなかんじが続いて。恋バナって好きなんだなぁ。花の女子高生!

 これに混ざれないわたしはもう高校生活三年間無駄にするんだろうな。

「うちの学年は? ってかクラスは?」

「うちのクラス、かっこいい人集まってるって評判なんだよ!」

「ずるいって言われるもんね~」

 そうなんだ?

「……あー、思ったこと、ありません」

 そんなことすらできない空気だったの。

「「えー?!」」

「あれとかあれとかあれとか、」

 あれって表現されてますよ、男子たち。

「それこそ比米とか!」

「!!」

「あっれぇ? 今ちょっと反応しなかった?」

「あ、あの」

「もしかしてもしかするぅ?」

「もしかしないです、でも、劇の後なので、ちょっと思い出したら、恥ずかしくて……」

「そっかたしかに」

「抱き合ったもんね」

 そう言わないで!

「比米は色々揃ってて、たくさんコクられてるし、ラブレター見るし、狙ってる人多いんだよ」

「これから気を付けてね」

 え、後ろから刺される?

「そんなこと言うなら、最初からヒーロー役にしないでくださいよぉ」

 着替え終わった。

「だってぇ、比米の執事っぽい服の姿、見たかったんだもん」

 ただ写真撮りたいだけだった!!


「着替えたよ~」

「あー、緊張したぁ」

「じゃ! 順番にやるぜ!」

 ってことで、わたしは希望者に壁ドンもなんでもやりました。

「ねぇ、キスってほんとにしてないならさ」

 ちょっと比米さん、そこで赤面やめてくれる?!

「どうやってたの?」

「広瀬、教えてくれないんだもん」

「種明かししたらほんとじゃなくなりそうじゃん」


 あれは。

 キスをしようとするところに手や指で触れておき、その上にちゅっとする。そんなけ。

 ほっぺだったら、こう手を頬に添えるかんじにしたまま、自分の手とか指に。唇は唇に指がくるようにしておいて、その指に、とか。

 見せたい人たちからは斜めとか後ろから見えるようにしておくと、脳内で勝手に想像図ができる。こう、いいかんじの角度つけるわけ。

 実感持たせるために、指に色付きリップとかしておくと、跡がついていい。生徒会長のときはしてたの。


「まぁ、そんなかんじです」

「ほんとのキスシーンは?」

「斜めに構えておいて、寸止め。してるって見せます」 見てる人がそう思ってくれる。

「顔ちっか! 想像するだけで近い!」

 きゃー、と言ってるのは女子だけじゃない。


「せっかくなら、あの衣装でしてほしかったぁ」

「ちょっと大きいもんね、男子の制服」

「そりゃ体格ちがうから」

「ってかさ王子さん、恥ずかしさはないかんじ?」

「?」 なににだろ。

「すごい似合ってるけど、ほら、ネクタイ緩める仕草も色っぽかったし」

「でもそういうのを一般に、彼シャツって言うんだよ」

「!!」

 だぼっとしてて、男の人の…… 比米さんの身体の大きさしてる。

「そう言われたら…… 恥ずかしいです! 脱ぐ!」

 ネクタイ外そうとしてたら、

「ぐぇ!」

 手、引っぱったの誰よ!

「人前で脱がないで! もう女子高じゃないんだから!」

「あ」


 とす、


「「きゃー!!」」

 かしゃかしゃと写真。フラッシュ連発。

「ほんものの壁ドン、ごちそうさまです!」

 されてるのわたしかぁ!!

「あたしにもやって~」

「アタシにも!」

 あなたは男子です。


 もう無理!

「お手洗い行ってきます!!」

「ちょっとま」


 て、まで聞く前に、ぴゅー、と出た。


「あ」

 着替える制服置いてきた。仕方ない、取りに帰るか。

 しゅっと着たつもりでも、たしかになんか、だぼっと感がぬぐえない。うーむ、男役として悔しいな。

 トイレを出て部屋に戻る。いや、戻ろうとしたんだけど、


「あれ、君、彼シャツ?」

「似合うねぇ、おれの着てみる?」

 うわぁ、面倒なのが。これはイモ以下だ~、お顔ぼんやりして見える~。

「あー、遠慮します」

 かわそう。

「連れないな」

「ちょっとくらいいいでしょ」

 ジャケット脱いでるよほんとに着させるつもりかよこの人ぉ。そっか、わたし、部屋にブレザーも置いてきたんだ。

「はぁい」

 どーぞ、とせまるジャケット。こういうのされるなら、男役の先輩からされたかったよぉ。


 ぱし、


「すみません、オレのがあるんでいりません」

「はぁ?」

「行くよ」

 手を引っぱられて、そのまま走る。ほんとに運動もできるんだな。足早い。

 ついていけるわたしもそこそこだろうけど、さすがに男性の運動能力についていくのは難しい。


「はぁっ はぁっ」

「ごめん、早かった?」

「ちょっと、息切れ。さっきはありがと、お、ござ、います、ふぅっ」

「うん、忘れてたから、持ってきたんだけど」

 あ、わたしの制服ね。

「姫なんだから王子様に持って行きなってみんながさ」

 顔、ものすごい嫌な顔してるかと思ったのに。おかしい、そうでもないな。

「では着替えに」

「トイレ行ったらまたあいつらに出くわすから」

「じゃ、別の階に」

「さっさとここで着替えて」

「?!」

「反対向いてるから」

 たしかにここ、非常階段だけど。


 ま、いっか!


「はい」

 ぬぎぬぎごそごそ。

「あのさ、さっきの話なんだけど」

 さっきってなんだっけ。


 しゅっ

 ネクタイ外します。


「途中で一回部屋抜けたとき」

 ああ、あのときね。


 ずり

 シャツ脱ぎます。


「言いたかったのは」

 そういえば話、途中だったっけ。


 しゃり

 ブラウス着ます。


「そのぉ、もっかい」

 なにをだろ。演技?


 しゅっ

 ネクタイします。


 ここでネクタイを、わたしは比米さんのと取り違えたのだった。

 見た目が同じで、前の制服にはネクタイなかったから、違いわかんないし。仕方ないよね。


「してみていい?」

 なにを?


 よっし着替え完了!


「着替え終わりました」

 あとはこの制服を畳んでお返し。あ、洗ったほうがいいのかな、こういうとき。


「キス」


 こっちを見た比米さんは、すばらしい速さでわたしが持ってた比米さんのワイシャツを、わたしと自分にかぶせた。


 え?


 あのときは、ほんのちょっと、かする、くらいだったけど。


 きちんと、くっついた。


「……へ」

「うん」

「な、な、な、」



「なにが“うん”なの?!」


 ってかわたし、OK言ってないと思いますけど?!


「オレ、モテるからさ」

 おいおいこんなときに自慢ですかぁ?!

「けっこう迫られるし生々しい言葉も浴びせられてきて、こういうの考えるのも嫌だったんだけど」

 あー、女子からぐいぐいきたわけね。


 って、そんな話じゃなくて!!


「劇のときの事故、なんも思わなかったんだ」

「劇だからじゃない?」


 れいせいにレイセイニ冷静に冷静にれいせいレイセイ


「そう思ったんだけど。でも練習で、別の人とやったときは、仕方ないってかんじだったのに」

 広瀬さんって言わないところ、この人のやさしさだなぁきっと。

「オレのこと、色眼鏡なしで見てくれる王子さんが、なんか、いいなって思って」

「転校生だからでは? わたしみなさんのこと知らないし」

「生徒会室教えたときも、お礼を理由にくっついたりしてこないし」

「ああ、今まで大変だったんだね……」

「真面目に聞いてくれる?」

「すんません」

「オレ、王子が、」


 てーんてーんてーん


 無言、続く。


 おいおい、恥ずかしがってるの?

 ってことは今逃げるか!

 多分これは、劇の影響! 感情移入タイプ!


「頭冷やして、もう一回、考えなおしたほうがいいと思います」

「え」

「感情移入しちゃってるんだと思う、ヒーローに。なんとなく似てるし、あんなこともあったし」

「そんなことない」

「演劇部長さん、比米さんがヒーロー役だからどっぷり比米さんの性格に寄せたんだって」

 だからなんでもできちゃう人間で顔も良し。

「そうじゃ」

「ないって、言える?」

「っ……」


 よし、これで万事解決。

 なんか下向いて、複雑そうだな。かわいそうだし軽く終わらせよ、こういうときは、

「ま、虫よけがほしかったら偽造の恋人にでもなってあげますけど?」

 なぁんてね、ってかんじで冗談でーす!

 わたしがヒーロー、あなたがヒロイン。ダンスのリーダーはわたしだぜ!


「うん、じゃ、それで」


「え?」

「よろしく」

 にやり、と笑った。さっきまで下向いてたくせにぃ! 今度は見下してくる!

 性格悪い! どこが三拍子そろってるだぁ?!


「「おめでとぉぉぉぉぉぉ!!!」」

「「カップル爆誕じゃーん!!」」

「「結婚式には呼べよなぁ~」」



「「?!?!?!」」



 うそ、なんで階段の上にみんながいるの?!


「ど、どこから、ってかいつから」

「えー、どこからだっけぇ?」

「うーん、着替えてるときは女子に目を塞がれてたからなぁ」

 最初からじゃん!

「ゲーセン行こって階段使ったら入って来たから驚いたわー」

 やっぱ最初から!

「いやぁ、ワイシャツのおかげでうちらの視線が届かなくてよかったねぇ~」


 にやにやしてる、


「あ、あの、偽造、偽造ですから!! 冗談ですから!」

「王子さん?」

「は、はい! 委員長!!」

「よく見て、比米を」

 ん?

「逃がしてくれると思う??」


 ちらと見て見る。


 えー、なんかものすごい自信に溢れて意地悪な顔だけど!

 多分この人に恋する女の子だったら、キラキラに溢れて見えるんだろうな、でもわたしには!!


 悪魔の角としっぽが見えるよ!!

 それとも獰猛な肉食系の鳥類!!


「がんばって」

 ハートマークついてる!!

「おれたちはお邪魔だから、退散しよっか」

「しかたねぇ、ヒーローとヒロインだもんな、くっついて当然か」

「比米があんなやつとは、思ってなかったわー」


 待って待って待って、


 ふたりにしないでー!!!


「じゃ、夜のデート、楽しんでね」

 がしゃん、と閉じた非常階段のドア。


「あ、あ、あ、あのぉ」

「行こっか」

 に、と笑った。こいつぅ!


「王子のくせに、なんか初心なんだね」

「そちらこそ、姫のくせにやさしさが足りない!」

「なに言ってんの、最近はお姫様のほうが性格悪い小説多いじゃん」

「自分のこと姫側って肯定したな!」

「姫はぐいぐい迫るもんなの。頭脳と身体で」

 からだ?!

「へんな想像してない?」

「し、してません!」

「こっちだから」

 ちゅ、とほっぺに。

 ちょ、ちょっと!

「こらしめてやる、ってか偽造の恋人っていうのは冗談だったんだけど!」

「そうだろうね。でも今更、それが通じると思う?」

「通じさせます!」

「はい」

 みせられたのはクラスのメッセージグループ。

「うそ」

「ほんと」

 わたしたちのことが、流れまくってる! 既読多い!!!

「誰写真撮ったの!」

「音聞こえなかったもんね」

 ワイシャツで遮断されたの?!

「この上からで見えないけど、逆にしてます感があるのが真実味があるよね」

「うそぉ」


「今は偽装でもいいけど」

 あ、いいんだ。じゃ、いいかんじに期間経ったらさよならに、

「はやいうちに、落とすから」


「覚悟しとけよ!」


 わ、爽やかな笑顔。こんな顔もするんだな。


 高校生活、無駄にはならないかもしれない、なぁんて思ってしまった瞬間。








「ねぇねぇ、そういえば王子のネクタイ、男子用じゃない?」

「あー、そうなんかね」

「いいよねぇ~、文化祭がきっかけでラブラブに、なんておとぎ話じゃん」

「好きな人に近づくのって、やっぱイベント必要だよね」

「……ネクタイ交換するとか?」



 これがきっかけで、カップルはネクタイを交換する、という慣習が生まれたのだった。

 めでたしめでたし。



 王道まっしぐらです。ゴールデンウイークの暇つぶしに、さらーっと読んでいただけたなら、嬉しいなと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ