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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二章 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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81.鬼畜なトラップスター・ノクティア

◆視点:悠斗◆


竜の天秤とのいざこざ――

もとい、お披露目式から数日後。


俺は地面に大の字になって倒れていた。


「ぶはぁ~……。

 マジでしんどい……」


「お疲れぇ~ユウト君!」

「お疲れ様ユウト! 凄くすごくカッコよかったよ!」


俺はこちらへ歩いてくる、鬼畜美女と一緒にやって来たシアに、ありがとうと礼を言う。


すると――


黒銀のような艶のある長髪を揺らしながら、仰向けになっている俺を見下ろし、不満そうな顔をする。


「えぇー、アタシにはないの? ひっどいなぁ~」


「ないもなにも、ノクティアのトラップが鬼畜過ぎるんだよ!?」


「うわっ、自分が弱いことをいいことにそんなこと言っちゃうの!?

 命の危険がない安全仕様なのにヒドイ!」


「肉体的にはな!

 精神的に死ぬって言ってんの!」


文句を言われ、ぶぅぶぅと唇を尖らせているのは、

セリィとエルシェの姉――ノクティア・ヴァルティエル。


裏の家業を司る方の双竜家だけあって、この方面の攻撃がかなりヤバい。

特に、罠を使ったものは悪魔と呼んでいいレベルだ。


「そんなに文句を言われると、お姉さんすごくショックだよ!

 もう悲しくて悲しくて、特製の消臭剤を作ってあげないんだから!?」


「やめてくださいお姉さま!

 俺が悪かったので作ってください!」


命の危険はないけど、この人のトラップに引っかかると――


激臭ガスが噴き出すんだ。


しかもオマケとばかりに、飛んでくるペイントボールに当たると、

その激臭がさらに強化される!


≪初日なんてマジでヤバかったからな≫



――――



ノクティアとの訓練初日――。


セリィとエルシェの代わりに、

黒銀のような髪を伸ばした美女を連れたシアが、訓練場にやってきた。


どうやらエルシェは、セリィの訓練をするため、しばらくはお休みするらしい。

その代わりの護衛兼、訓練の師匠として連れてきたのが彼女だ。


「初めまして、勇者君! 私はノクティア!

 あ、敬語とかは抜きでいいよ!」


そう言って、人懐っこそうな笑みを浮かべながら差し出された手を握り返す。

俺も「わかった」と答え、自分の名を告げた。


「ふんふん……なるほど、君がセリィの未来の旦那さんかな?」


「……初耳なんだけど?」


いきなり意味ありげな目でこちらを見たかと思うと、唐突に変な爆弾を落としてきた。


確かにセリィに好意を向けられているのは知っている。

けど、決定事項みたいに言うのは違うのではなかろうか?


いや、普通に嬉しいけど。

まだシアのことも――


「えぇ~、そうなのシンシア様~?」


「私もセリィもアピール中だから、かき回さないでって言ったのに……。

 ノクティア、あまりしつこいようだとエルシェに言うよ?」


そうシアが言うと、ノクティアはあからさまに顔を青くした。


「ね、ねぇシンシア様?

 エルシェってどこまで勇者君のことを?」


「う~ん、結構好意は持ってるんじゃないかなぁ?」


「よし! 私、これから極秘任務に志願してくるよ!」


「そうしたら、実家での居場所がなくなるんじゃないかな?」


「仕事なのに?」


「こっちもお仕事だよ?」


どうやら昔、ノクティアがセリィにイタズラをして泣かせてしまったことがあるらしい。

そしてエルシェから、それはもう苛烈な報復を受けたのだとか。


「あ、あれが再現されるとか……え?

 私の命日っていつ?」


「ユウトの訓練を頑張ってくれたら、

 エルシェもセリィも喜ぶんじゃないかな?」


このシアの発言がトリガーになり、

激臭トラップ祭りが開催された。


そのあまりの臭いのひどさに、

あのシアですら近づこうとしないほどだった――とだけ言っておこう。


しかも厄介なのは、

竜族などの嗅覚に優れた者にしか分からないという点だ。


「さぁ! 竜国で孤立したくなければ、

 必死に頑張りたまえユウト君!」


「こんの鬼畜竜!?

 俺に何の恨みがあるんだよ!?」


「セリィとエルシェがいないから、たくさん抱き着けると思ったのに!

 ノクティアのバカァ!?」


「おやおやぁ~?

 シンシア様のユウト君に対する思いはその程度なのかなぁ~?」


「な!?

 私の思いはそんなに弱くないよ!?」


「そうそう! これは秘密の特訓なのです!

 セリィや他の強敵と、ユウト君をかけて戦うための!」


「わかった! 私、頑張るからねユウト!」


「絶対そんなこと考えてないぞこの悪魔は!?」


「余計なこと言う子には消臭剤、作ってあげないぞぉ?」


「え!? 持ってるんじゃないの?」


「こういうのは、後で作るからこそ価値が生まれるものなのだよ!」


そう言ってニヤニヤしながら見てくるノクティアに、

魔法で攻撃しようとした――その瞬間。


目の前にノクティアが現れ、俺は上空へと蹴り上げられた。


しかも、いつ設置したのか。

蹴り上げられた先で魔法陣が光り、強い衝撃とともに地面へ叩きつけられる。


「痛くはないけど、衝撃が中まで通るでしょ?」


「ゲホッ……ゲホッ!?」


俺は咳き込みながらもなんとか立ち上がる。


「今日はここまでかな!」


そう言ったノクティアが、俺のみぞおちに掌底を入れる。。


「ユウト!?」

「大丈夫だよシンシア様! 気絶してるだけだから!」

「ノクティア……?」


「そう睨まないの!

 怖くて、ユウト君にしか分からない激臭をシンシア様にこっそり仕掛けちゃうぞぉ?」


「陰湿過ぎるよ!?」



――――



という感じで、初日からずっと気絶させられるまでしごかれていたわけだけど……。


≪今日は初めて気絶しなかったなぁ……≫


そう思いながら起き上がる。


すると、それに気づいたノクティアが少し感心したように口を開いた。


「ほうほう、だいぶ強くなったねぇ!

 さすが勇者様!」


「その勇者って呼び方やめてくれない?

 それに、今日はたまたま気絶しなかっただけだし……」


「ふ~む……。

 君は本当に自己評価が低いなぁ~……」


そう言うとノクティアは、訓練場の端へ視線を向けた。


「エルシェから見てどう思う?

 たぶん君の言葉の方が刺さると思うんだよね!」


その視線を追うと、

エルシェとセリィがこちらへ歩いてきていた。


どうやら彼女たちの方が先に訓練が終わり、

俺たちの戦闘を見学していたらしい。


≪あれ、セリィの様子がいつもと違うような?≫


少し思い詰めているようにも感じる彼女の雰囲気に、

なにかあったのかと心配になる。


エルシェの方も、いつもと変わらない穏やかな笑顔だが、

なんとなく硬い印象を受けた。


≪これは踏み込んでいいことじゃないよなぁ……≫


そう思っていると、近くまで来たエルシェが、

ふむふむぅ~と観察するように見たあと、感想を口にする。


「恐らくですがぁ~、エリオス様と互角……。

 いえいえぇ~、それ以上になってそうに感じますねぇ~」


「あ、やっぱりそう思う?」


「姉さまぁ、これはノア様にお伝えするべき案件かとぉ~。

 エリオス様はぁ、最近執務に追われ過ぎですがぁ、

 このままではよろしくないのではぁ~?」


「そうだねぇ……。

 わかった。伝えとくよ!」


「あのですね皆さん?

 俺、全然ついていけないんですけど……?」


「大丈夫ユウト!

 私も全然分かんないから!」


そう自信満々に言うシアはそっとしておくことにして、

俺はノクティアたちに話を聞く。


すると、そう難しい話ではなかった。


ノクティアが俺に気づかれないよう、少しずつ訓練のレベルを上げていき、

今日ついに、エリオスさんですら気絶するレベルの訓練を、

気絶することなくクリアをした――はいいけれど、国の思想上よろしくないそうだ。


≪強者至上主義の竜皇国にとって、これは確かに面倒ごとの予感がするなぁ……≫


順当にいけば、皇族のシアと結婚することになる俺が、

次代の竜皇であるエリオスさんより強いと広まるのは良くない。


「まあ、シオリの前例もあるからね。

 勇者が早熟なのは知られているし、そこまで大きな問題ではないかな!」


「短命な人族だからという点で言うとぉ、

 弟君は当てはまりませんよぉ~?」


「ああ、そっか!

 魂約してるから存在の格が上がって、寿命も延びるんだっけ!

 そうなるとやっぱ“竜盟の盃”かなぁ……」


ん?


さらっと日本人っぽい名前が出てきた気が……。


いや、それよりも――


「竜盟の盃って……なに?」


俺がそう聞くと、どうやら若くても強力な――

そして権力に興味を持たない竜は、一定数いるらしい。


しかし、その竜が国にいると、


竜皇に従わない者が現れたり、

逆に竜皇に押し上げようとする者が増えたりする。


そうした煩わしさから、国を出て行ってしまうことも多いのだという。


そうした問題を解決するために作られたのが、

竜皇と盟友であることを周囲に公言する制度――


“竜盟の盃”らしい。


≪それはいいんだけど、その解決案を出したのが

 シオリっていう先代の女性勇者って……≫


この竜皇国に来て、

見え隠れする先代勇者の痕跡。


いったい、どれだけこの世界に影響を与えているのか――

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