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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二章 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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80.表裏一体のトルシア――古き雷竜の暗躍

◆視点:トルシア◆


バタン――


扉が閉まり、部屋に誰もいないことを確認してから、

アタシは一緒に入ってきた小僧――レオリクスへと振り返った。


「さてと、詳しく聞こうか?

 あんな茶番をさせたんだし、さぞ面白い話なんでしょうね?」


言いながら、さっきまでの会議を思い返す。


この小僧は、魔法陣を自分で開発したなどと抜かした直後、

何かの魔道具――おそらく自身の体内の竜力と魔力を撹乱するタイプを停止させ、

アタシに思考を読ませてきた。


≪まったく……“庇ってくれたら、貴女も楽しめますよ”とか言ってさ。

 そんなの、気になるに決まってんじゃん!≫


もしつまらなそうなら、頭の中を適当にかき回してから、

この洟垂れとつるんでる連中もまとめて、酒の肴にしてやる。


「なにやら、物騒なことを考えていそうな顔ですね」


「べっつに~。つまんなかったらアンタら全員、

 玩具にしてやろうかなって思ってるだけだよ?」


「……やはり、気づかれていましたか」


どうやら、察してはいたらしく、

レオリクスはやれやれと肩をすくめる。


「であれば、腹の探り合いはやめにしましょう」


「腹の探り合いねぇ……。

 ま、いいや。それで? どうするつもり?」


正直、こいつが何をしようがどうでもいいし、

アタシは面白ければ聞くし、つまらなければ壊すだけ。


≪そんで興味がそそられる話だったら、気絶させて頭の中を覗いてやろう≫


そんな考えが表情に出ていたのか、

アタシの性格を考えてか。


レオリクスが意外な提案をしてきた。


「簡単です。私の頭を覗いてください」


「おや? こりゃ予想外」


「話せば興味を持つでしょう。

 どうせ見られるのなら、自分から差し出した方が影響も少ない」


「あ、バレてた?

 ま、いっか。アンタがそう言うなら遠慮なく!」


思考パターンまで読まれていたらしいけれど、

向こうが差し出すなら遠慮はしない。


アタシは、屈んだレオリクスの頭に手を置き……集中する。


しばしの沈黙。

部屋には弱い紫電の光がちらついた。


「……なるほどね」


手を離すと、レオリクスがわずかに口角を上げる。


「ご感想は?」


「あとで手ぇ洗って、洗浄魔法かけて、

 溶岩風呂に入って消毒する」


「……私は疫病か何かですか?」


「アンタの頭ン中がまさにそれでしょうが……」


これから孫娘に会いに行くのに、

洟垂れ菌が移って、バカになったらどうするつもりだ。


もしそんなことになったら、

アタシはコイツを八つ裂きにする自信しかないぞ。


“普通の竜族”ならまずやらないんだから……。


「小僧、自分が持ち込んだものを理解してんの?

 まったく、どこで拾ってきたんだか……」


そして、吐き捨てるように言う。


「――“覇天竜信仰”と“邪神教”の繋がりなんてさ」


本当なら、触れた手を切り落として再生させたいくらいだ。


アイツからも聞いていなかった話だし、後で文句を言ってやろう。


すると、何か勘違いしたのか、

レオリクスは警戒を強める。


「……では、どうするのですか?」


「何もしない」


即答するアタシが意外だったのか、

レオリクスが目を見開く。


「勘違いしてるみたいだけどさ。

 “今の段階では”何もしないってだけ」


「……つまり?」


そう聞く小僧に、アタシはわざとらしくため息を吐くと、

少しだけ、釘を刺してやる。


アタシは、古竜の中ですら一部しか扱えない【竜皇覇気】を、ほんのわずかだけ解放した。


瞬間――


「っ……!?」


レオリクスが膝を折る。


その顔には驚愕と恐怖が混ざっていて、

アタシは、小僧を見下ろしながら告げる。


「アタシのお気に入りに手ぇ出したら殺すって話。

 小僧のアンタでも簡単でしょ?」


「……家族に、という意味ですか?」


ほう。腐ってても古竜は古竜か。

たぶん今のリオ坊でも、これを直で浴びたら声は出せないだろう。


なのにコイツは、震えながらでも喋れるんだから大したもんだ。


まあ、それだけの話――。


「あれ~? 聞こえなかった?

 アタシはさ、“お気に入り”って言ったんだよ?

 ……洟垂れ小僧」


最後の言葉を言うと同時に、

圧力をもう少し増やしてあげた。


「ぐ……。お気に入り、と言われましても……」


忘れているのかと思い、仕方なく補足する。


「竜皇族関係者は全員だよ。

 あとは自分で考えな」


名前を並べるのは面倒だし、

丸投げして問題ないでしょと、【竜皇覇気】を解く。


すぐに床に両手をついたレオリクスは、荒い呼吸を整えていたが、

どうでもいいので、アタシは扉の方に歩いて行った。


≪あれ? これってもっと面白くなるんじゃない?≫


アタシは振り返ると、

息を整え、立ち上がろうとしている小僧を見る。


「それとさ、勇者君いるでしょ?」


「……はぁ……」


「もし何かするならさ。

 ちゃんと“成長するようなこと”にしてあげなよ」


「……どういう意味ですか?」


「そこは考えなよ。それができたら、

 ちょっとくらい手ぇ貸してあげるからさ!」


アタシはそう言葉を残して、今度こそ部屋から出て行った。


≪ふふっ。

 あの子が伸びたら、面白くなるかもねぇ~♪≫


勇者君は、アタシがスキル化させていない【竜皇覇気】を

小僧にピンポイントで放ったにもかかわらず、反応を示した。


若い竜族ではまず気づかない。

この世界に来たばかりの、それも人間ならなおさら。


「どう伸びるかなぁ~?

 お婆ちゃん、楽しみにしてるよ。勇者君♪」


そこで名前を聞きそびれたことを思い出す。


≪確かエルシェが勇者君のメイドしてっけ?

 それなら、今度会いに行って教えてもらっちゃお~っと!≫

 

ついでにエルシェと遊ぶのもありかな、と思いつつ静かな廊下を歩きながら、

アタシはこれからのことを考えてくくっと笑った。


しばらく進んだところで、足を止める。


「隠れてないで出てきなよ。

 周囲に“耳も目も”ないのは確認してるからさ!」


するとアタシの後ろにある物陰から姿を現したのは、

青みがかった銀髪の筋肉質な男――ガルディアだ。


「それで?」


「お前は口下手か!?

 もう少し言葉を足しなよ!」


あまりの淡泊すぎる内容に、ツッコミを入れるが、

今に始まったことじゃないと本題に入る。


「あの小僧に“増禍薬”渡したの、アンタでしょ?」


「ああ」


「理由は?」


「強くなりたいと言っていたからだな」


その淡々とした返答に、少し苛立ち、

アタシは【竜皇覇気】をわずかに漏らす。


「そう怒るな。これをやる」


しかしガルディアは特に反応も示さず、

代わりに小瓶を投げてよこしてきた。


それをパシッと受け取り、睨む。


「アタシは子供か?」


「いらんのか?」


「……いるけどさぁ~」


気が削がれてしまったアタシは【竜皇覇気】を止め、

小瓶から“増禍薬”を三粒取り出し、口へ放る。


「……お前もよく食べるな。

 本来は噛まずに飲み込むものだぞ?」


「ん? 最初は不味いなぁって思ったんだけど、

 酒のツマミで食べてたらなんか癖になっちゃって!」


意外にコレと合う酒が多くて、

何が一番合うか試しているうちに、単体でもいけるようになった。


≪邪神の力の一部を練った丸薬って言われても、

 古竜であるアタシらに、影響があるとは思えないけどねぇ≫


確かに、内側で黒い何かが生まれる感覚はある。


だが、すぐに霧散するからつまらなくて、

最近は食べる頻度を増やしている。


「強くなれるって話だけど、実感ないんだよね。

 酒のツマミとしてはまあまあって感じだけど」


「そう思うのはお前くらいだ。

 酒で流し込む程度でいい」


えぇ~?

噛み砕くからいいんじゃん、とアタシは思う。

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