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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二章 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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101.新たな婚約者と、正妻の贈り物

――コンコンコン。


ドアをノックする音が響き、セリィが出迎えに向かった。


「お待たせしましたぁ~!」

「えっと……急なお呼び出しですが、何かありましたか?」


入ってきたエルシェはそのまま自分の席へと腰を下ろし、

シエラは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに気持ちを切り替えて問いかけてきた。


「まあまあ、こっちに来て座ってよ!」


どこに座ればいいのか分からず立っていたシエラに、

シアが隣をポンポンと叩き、シエラを自分の隣へと座らせる。


その間に、セリィが全員分の紅茶とお菓子を手際よく用意し、

エルシェの隣へと戻ると、シアが口を開いた。


「これで、ユウトのお嫁さんが全員揃ったね!」


「え!? ま、待ってください!

 話が見えないのですが!?」


「あれ?」


勢いよく切り出したシアは、話の腰を折られ、キョトンとした表情になる。


「エルシェ姉さま……。

 わざと伝えていませんでしたね……」


「人聞きが悪いですねぇ~。

 セリィちゃんはぁ、他人の口から聞きたいですかぁ~?」


「うっ……。

 確かに、私なら直接聞きたいです……」


「ではぁ、この場合で一番悪いのはぁ~?」


その言葉に、ヴァルティエル姉妹の視線がシアへと向けられる。


「私!? 私が悪いの!?」


慌てるシアを見て、俺は咄嗟に口を挟んだ。


「いや、ここで一番悪いのは俺だから!」


そう言って、みんなの視線を自分に集める。


「まずはいきなり呼び出しちゃってごめんね、シエラ」


「い、いえ……大丈夫です……。

 えっと……状況を見ると、その……」


シエラはすでに察しているのだろう。

耳まで真っ赤にし、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。


それだけで、心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、俺は口を開いた。


「うん。シエラとの婚約の話、受けさせてもらうよ。

 まだお互い何も知らないけど、これからよろしくね!」


ぎこちない言葉だなぁと思いながら、そう伝えると――


「は、はい……はい……よろしく……お願いします……!」


シエラは涙をこぼし、声を震わせている。


≪ちょ、あれ!?

 この反応は予想外なんだけど!?≫


戸惑う俺の前で、シアがそっとシエラを抱きしめる。


「彼女は幼竜ですのでぇ、

 感情を上手くコントロールできないのですよぉ~」


「年齢の割にしっかりされていますが、

 さすがに要領オーバーでしたね」


エルシェとセリィは、どこか微笑ましげにその様子を眺めていた。


≪誰か、竜族との恋愛のイロハを教えてくれ……≫


……いや、マジで。



――――



「お見苦しいところをお見せしました……」


しばらくして落ち着いたのか、シエラは申し訳なさそうに頭を下げる。


俺としては、無事に落ち着いてくれてほっとした。


他のみんなも温かい視線を向けているので、

特に気にする様子はない。むしろ――


「全然謝ることじゃないよ!

 あ、私のことはシアって呼んでね!」


「え、よろしいのですか!?」


「うん! これからユウトのことを一緒に支えていくんだし、

 仲良くしたいもん!

 敬語もいらないからね!」


「えっと……それでは、シア様と呼ばせていただきますね。

 ですが、それ以上はお許しください」


そう断られてしまい、シアは「ええぇ~……」と残念そうに肩を落とす。


その一方で、エルシェとセリィは気にした様子もなく、

シエラに愛称で呼んでほしいと伝えていた。


「ありがとうございます。

 エルシェ様、セリィ様!」


「立場的には貴女の方が上ですからぁ、敬称はいりませんよぉ~?」


「そうですね。

 シエラ様は第二夫人ですから、私たちより立場は上になりますし」


正妻となるシアとは別に、

第三夫人のエルシェと第四夫人のセリィは、

公式にはシエラよりも下の立場になる。


しかし、彼女は静かに首を横に振った。


「だとしてもです。

 ユウト様との繋がりはお二人にかないませんし、

 私はまだ幼竜の身です。

 これから教えを請う相手に、偉そうにはできません」


「教え、ですか?」


その言葉にセリィが首を傾げると、シエラは素直に答える。


どうやら彼女は――


メイドとしての作法から、会話の駆け引き、情報収集、周囲の観察まで。

力の弱い幼竜である今のうちに、戦闘以外のすべてを学びたいらしい。


「特に、シア様の制御の仕方をエルシェ様から教わりたいです!」


「待ってシエラ?

 それだと私が問題児みたいに聞こえるよ?」


「事実ですからねぇ~」


エルシェの一言に、シアは「ガーン!?」と分かりやすく落ち込む。


その空気を区切るように、シエラがコホンと咳払いをした。


「ところで……。

 私が呼ばれた理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「確かに、だいぶ脱線してたな」


俺がそう言うと、シエラは慌てて首を振る。


「いえ、泣き出した私にも原因がありますので……」


そう言ってから、エルシェへと視線を向けた。


「私が聞いているのは、シア様がお呼びだということだけです」


「私たちもぉ、詳しくは教えてもらっていないのですよぉ~」

「シア様からは、“威厳を示したい”としか……」


エルシェとセリィの言葉に、自然と全員の視線がシアへと向けられる。


すると――


「ふっふっふ……」


どこか得意げに笑ったシアは、アイテムボックスを開き、

ひとつのネックレスを取り出した。


そこに嵌め込まれていたのは――


晴天の空を閉じ込めたかのような、深く澄んだ瑠璃色の宝石。


すべてを包み込むようなその輝きに、

この場にいた全員が思わず息を呑んだ。


「これって……」


俺の言葉は途中で途切れ――


「……竜玉」


代わりに、シエラの声が静かに響いた。


「シア様……。

 まさか、これは……?」


「うん! 私の竜玉だよ!」


「なるほどぉ~……これはこれはぁ~」

「とても……美しいです……」


エルシェもセリィも、見入るように呟く。


そのネックレスを胸元で大切そうに持ち直したシアが、

ゆっくりとこちらを見つめてきた。


白磁のような肌は耳まで赤く染まり、瞳はわずかに潤んでいる。


「えっとね……?

 これを、ユウトに付けてもいいかな?」


期待と不安が入り混じったその表情に、

俺の心臓は早鐘のように鳴り始める。


――そして。


俺は小さく、うなずいた。


その瞬間、シアの表情が花が咲いたようにパァッと輝く。


彼女はすぐに俺の後ろへ回り込み、

そっとネックレスを首に掛けてくれた。


柔らかい感触が後頭部に当たったのは――言うまでもない。


だが、それすら覚えていないほどに、俺は緊張していた。


ネックレスを掛け終えたシアは、「えへへ♪」と満足そうに席へ戻り、

こちらを見た瞬間――


思わず『デレェ~』とでも言いそうなほど、

とろけた表情を浮かべていた。


「えっと、ごめん。

 もう何から聞けばいいか分からないんだけど……竜玉って何?」


胸元で輝く瑠璃色の宝石に目を落としながら問いかけると、

シエラが少し考えてから口を開いた。


「そうですね……簡単に言うと――


 竜力が結晶化したものが“竜石”で、

 それがさらに高密度になると、“竜玉”へと変わります。


 つまり、竜族にしか生成できない、高純度のエネルギー結晶です」


ちなみに、魔力が結晶化すると“魔石”になるが、

こちらは宝玉のような丸みは持たないらしい。


そして何より――


竜石や竜玉は、“自分の意思”でしか生み出せない。


「ってことは……シアが、俺のために作ってくれたってこと?」

「えへへ~♪」


シアは照れたように、こくりと頷いた。


その一方で、エルシェ、セリィ、シエラの三人は、

何やら考え込むような表情を浮かべていた。


「みんな、どうしたの?」


そう問いかけると――


三人は揃って、大きくため息を吐き。


ジトー……とした視線を向けてくる。


≪そんな呆れた目で見ないでくれませんか……?≫


恐らく、常識を知らないことへの軽い非難なのだろうが――

教わっていないものは、どうしようもない。

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