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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第二章 強者尊ぶ竜皇国-ヴァルゼリオン

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100.【見識】の名前と、深まる絆

「さてさてぇ、セリィちゃん。

 私たちは、しばらく席を外しましょうかぁ~」


そう言って立ち上がったエルシェに、セリィが「え!?」と声を上げる。


それは俺たちも同じだったが、

彼女は俺とシアを順番に見て、口を開いた。


「これから少しの間、席を外しますのでぇ~。

 主様はぁ、“名付け”をしてあげてくださいねぇ~」


「エルシェ姉さま!?

 どういうことか説明してください!」


「外で話してあげますからぁ、行きますよぉ~」


そう言って、二人はそのまま部屋を出ていった。


ポカンとした表情で見送るシア。

……たぶん、俺も同じ顔をしていると思う。


だけど――“名付け”という言葉で、彼女の意図は理解できた。


≪そういえば、【見識】に名前をつける話……エルシェにしてたっけ≫


あの事件のあと、時間を見つけては考えていたが、なかなか決まらなかった。


そんな俺を見て、心配してくれたエルシェに相談したら――


『それはぁ、シアちゃんと二人で決めた方がよろしいですよぉ~』


――あのときの、呆れたような声音を思い出す。


≪もちろんシアにも聞くつもりだったけど……。

 あそこまで冷ややかな目で言われるとは思わなかった……≫


俺としては、ある程度案を出してからにしようと思っていたのだが――


それを口にした瞬間、

エルシェの視線は“哀れむもの”へと変わった。


≪……たぶん、悩む前にシアと一緒に考えろってことなんだろうな≫


思わず苦笑しながら、

軽く咳払いをして、シアへと視線を向ける。


「えっと……シアに相談があるんだけどさ」


「え! なになに!?

 なんでも相談して!」


予想通りの反応に、俺は【見識】との約束や、これまでの経緯を説明していく。


すると――


シアの表情が、みるみる明るくなっていった。


話し終えたころには、その瞳はきらきらと輝いている。


「それって、もう私とユウトの子供みたいなものだよね!?

 ユウトの中に私の竜力が入ったことで生まれたんだもん!

 もっと早く言ってほしか――」


そこで言葉を止めると、シアは真剣な表情に変わる。


「……もっと早く、私が気づけばよかったんだ。

 だって、意思があるなら……感情だってあるはずだもん」


そう言って、彼女は俯く。


「寂しい思い、させちゃったよぉ……」


≪……あれ?≫


そう言われて、ようやく気づく。


≪俺の方が、よっぽどひどいことしてないか……?≫


ずっと助けられてきたのに、

ただの“スキル”としてしか見ていなかった。


その事実が、胸に重くのしかかる。


≪エルシェが呆れるわけだよ……。

 自分とシアの間に生まれたような存在を、他人にも相談しようとしてたんだから≫


そこまで考えているかは分からない。

それでも――ちゃんと向き合わないといけない。


そう思ってシアを見ると、

彼女もまた、真剣な――それでいてどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。


「よし、シア」


「うん。

 全力で【見識】ちゃんの名前、考えよう!」


そうして俺たちは、話し合いを始めた。


そして――


「【見識】あらため――これからは“ノエル”って呼ぼうと思うんだけど、どうかな?」


シアにも伝わるよう、口に出して問いかける。


名前の由来も説明した。


この世界の知識の精霊“ノエリース”。

そして、俺のいた世界の知恵の天使“ウリエル”。


そこから取った名前だ。


すると――


――報告――


この感情がどのようなものか、整理がつきません。

よって、休眠を実行します。


――。


その言葉が脳内に響いた直後、

【見識】からの反応は途絶えた。


「あれ?」


「ど、どうしたのユウト……?

 もしかして、気に入らなかったの……かな?」


不安そうに尋ねるシアに、俺はそのまま内容を伝えると――。


「もしかして……照れてるのかな?」

「少なくとも、不満って感じではなかったかな」


シアの素直な感想に、俺も小さくうなずく。


チクタク、と時計の音だけが響くが、

それも長くは続かず――。


「ぷっ……」

「ククク……」


「「アハハハハハハ!!」」


俺とシアは吹き出した。


「ゆ、ユウト! 笑っちゃだめだよ……アハハハ!」

「シアだって……クハハ!」


ひとしきり笑った俺たちは、顔を見合わせ笑みをこぼす。


「ねえ、ユウト?」

「ああ――喜んでくれるといいな」


俺の言葉に、シアは満面の笑みで「うん!」と頷いた。


それから少し会話を楽しんだあと、エルシェとセリィを呼び、二人にも話す。


「なるほどぉ~、ほとんど答えは出ていそうですねぇ~」

「そうだけど、まだ決定じゃないからさ」


「しばらくは【見識】ちゃんって呼ぶことにしたよ」


「エルシェ姉さまから聞いたときは驚きましたが……。

 私も気づけず、申し訳ありません。


 ユウト様、シア様。

 決まりましたら教えてくださいね。

 改めて歓迎パーティをしましょう!」


セリィの言葉に、俺たちは笑顔で頷いた。


特にシアは大はしゃぎで、

「国をあげてパーティーをしよう!」などと言い出したのだが――


エルシェにそっと耳打ちされた瞬間、固まった。


「え、エルシェ?」

「なんでしょうかぁ~?」

「なんで知ってるの……?」

「ここで言ってもぉ~?」

「絶対にダメ!?」


いったい何を言われたのかと、セリィに視線を向けたが、

彼女も分からないのか、首を横に振った。


≪……うん、きっと俺のことも何か握られているだろうな≫


エルシェには逆らわない――そう心に誓った、そのとき。


「よし!」


シアが勢いよく立ち上がった。


「エルシェがいじめるから、私も反撃する!」

「おやおやぁ~、どうするおつもりですかぁ~?」


楽しげに見つめるエルシェに対し、シアは挑戦的な笑みを浮かべる。


「フッフッフ!

 ユウトのお嫁さんが増えるから、

 ここで正妻候補の威厳を見せようと思うの!」


「そこは言い切らないのですね」

「主様からぁ、お答えが返ってきてませんからねぇ~」


セリィのツッコミにエルシェがそう返すと、

二人が揃ってジトーっとした視線を向けてくる。


もちろん、そっと視線を逸らしたさ。


≪いや、もう決心はしてるんだよ?

 でもさ……タイミングってあるじゃん?≫


ヘタレと言われても仕方ないが、

こっちは彼女いない歴=年齢の陰キャなんだ。許してほしい。


すると――


「ズルイよ!

 私も混ぜてほしい!」


「いや、なにか宣言してたよね!?」


そうシアにツッコミを入れると、彼女は「あっ!?」と声を上げ、コホンと咳払いをする。


「えっとね……その前に、エルシェにはシエラを連れてきてほしいんだけど……」


「かまいませんよぉ~。

 それとぉ、何を遠慮しているのかは分かりませんがぁ――

 シアちゃんも魂約者なのですからぁ、遠慮なく命じてくださいねぇ~?」


エルシェにとっての主はあくまで俺だ。


それでも、シアをきちんと認めるその言葉に、彼女は嬉しそうに頷き、

エルシェは柔らかく微笑んでから、シエラを呼びに部屋を出ていく。


扉が閉まったあと、シアがおずおずと声をかけてきた。


「あのね、ユウト……。

 本当は、こういう意味でやろうと思ってたわけじゃないの」


「こういう意味って……威厳がどうのって話?」


俺の言葉に、シアはこくりと頷く。


何をするのかは分からないが――


「シアのやりたいようにやっていいよ」


そう言うと、彼女はぱっと表情を明るくした。


「ユウトも楽しみにしててね!」


満面の笑みで言うシアに、思わずこちらも笑みがこぼれる。

そうして俺たちは、エルシェとシエラが来るまで談笑して過ごした。

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