09 知らぬ間のクラスチェンジ
「ゴブリンと狼を合わせて十七匹討ち取れたか。疲れた」
僕は急に身体が熱くなり、痛みを感じた所で意識が暗転した。
ゴブリンと狼の襲撃は村人に被害が出ることなく終了した。
レインとビリーの弓で多くの魔物に傷を負わせたことが最大の勝因だった。
殆どが村の柵まで来ることは無かった。
ただゴブリンが五体だけだったが、村の柵にまで達してしまった。
ただゴブリンは力は強くてもリーチが短かかった。柵を越える前に鍬や角材で武装した大人達が、一斉に攻撃して正にたこ殴り状態だった。
四人で一体に殴り掛かったので、柵まで来たゴブリンたちはそこで絶命した。
その光景を見ていたゴブリン達はリーダーも居なくなっていたこともあってか、そこで逃げ出した。
村がゴブリンの撃退で湧く中で、レインの姿が見えずに心配したグラス達が見張り台に駆け上がると其処には倒れたレインがいた。
何処か怪我をしたのか? 心配をしていた最中レインが寝言を呟いた。
「お腹空いた」
グラスは笑いながらも寝言でも食いしん坊な息子に呆れながら、それでも今回頑張った息子を優しく抱えると見張り台から下りていった。
見張り台から下りると先程まで歓声を上げていた村人たちが心配してレインを見つめる。
グラスは笑いながら先程レインが言った言葉を皆に伝えた。
「お腹すいたって寝言で言ってた」
その瞬間、村人達は爆笑した。
レインは最近〔ノンビリ屋のレイン〕から〔韋駄天のレイン〕にクラスチェンジをしていた。
ただ今回のことで知らぬ間に〔食いしん坊のレイン〕にクラスチェンジしたことを後で知ったレインはガクリと肩を落とすのだった。
スンスン 凄くいい匂いだ。そして僕は目が覚めた。
「お腹すいた」
グゥ~と鳴るお腹を擦りながら、いつの間にかベットで寝ていた僕は身体を起こして台所に向かった。
「どうしたのこれ?」
テーブルには見たことのない量の料理や果物がいっぱいに並べられていた。
「良かった。レイン起きたのね」
母はゆっくりと僕の正面に歩いてきて優しく抱きしめた。
まだ思考が働かない僕に笑いながら、魔法の言葉を掛けてくれた。
「全部食べていいわよ」と。
あ、これは夢だな。これだけの量が家に有るはずは無い。
「いただきます」
ちゃんと食事に感謝して料理をドンドン口に運んでいった。
食べても食べてもお腹が空くので、何て夢だ!
そう思いながらもやっぱり食べ続ける。
八割程食べきったところで、漸くお腹が満腹になった。
「ゲプっ。あ、失礼しました。」
ゲップを謝罪すると母は食べた量に目を丸くしていたけど、笑顔だった。
「やっぱりレインは食いしん坊だったのね。」
そう言って頭を撫でられた僕はまた違う夢の世界へと旅立つのだった。
SIED レイニー
わぁーっと村の入り口の方で歓声が湧いた。
「きっと勝ったんだわ」
「よかったわ」
「誰も怪我をしてないといいけどね」
そう周りの奥さん達と話しているとグラスがレインを抱えて帰ってきた。
私はまさかと身体が冷たくなっていくのを感じながらレインとグラスに駆け寄った。
「レインは無事だよ。」
そう言って笑うグラスを見て漸く安心した。
「どうしてレインは寝ているの?」
「たぶん緊張し過ぎたことが原因だと思う。こいつの弓がかなりの魔物を倒したんだ。本当に凄いやつだ。でもな・・・くっくっく」
何がそんなにおかしいのか?含み笑いをするグラスに首を傾げてみせた。
「こいつは寝言でお腹すいたって言ったんだ。その時に、こいつの生まれてきた時を思い出してな。」
ああ。私はそれを聞いて納得した。
「食いしん坊ね」
私は笑って答える。
「ああ」
グラスも笑った。
私は家に戻ってからレインがいつ起きても良いように食事の支度をする。
料理を並べ始めようとしたところに来客があった。
グラスが対応してくれていたけど、ほとんどの村人からレインに感謝して料理が持ち込まれた。
「うちの村を救った食いしん坊な小さな英雄にやってくれ」
それはそれは凄い量だった。
テーブルに乗り切らず台所にいくつか置いておくとレインが呟きながら起きて来た。
「お腹すいた」と。
いつもはシャキッとしているレインには珍しく、ボケーっとしているレインをまずは優しく抱きしめてあげた。
「良かった。レイン起きたのね」
その間も鼻をスンスン動かしている食いしん坊のレインに声を掛ける。
「全部食べていいわよ」
そう告げると嬉しそうに席に着いた。
「いただきます」
そう言ってから食事をしだした。
何処にその量がはいるの?
そんなレインのお腹は大きく膨らんでいく。
そしてほとんどを食べ尽くしたレインはゲップをすると何かを言ってから、また目がトロンとしていた。
私が優しく撫でてあげるとそのまま私にもたれかかって寝てしまった。
「こう見ると子供だから安心するわ」
そしてベッドに運ぼうと持ち上げるとずっしりとした重みがあった。
「重くなったのね」
息子の成長を嬉しく思いながら、ベッドに運ぶと私はもう一人の息子のことを考えはじめていた。
SIDE END
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