表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獅子の英雄―語られなかった真実と、小さな騎士の物語―  作者: ぽぷら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/18

第零話 英雄の誕生

 視界が、赤い。


 ぼやけている。音も遠い。鼻の奥に、かすかに血の匂いがした。こんなにも血に濡れているのに、不思議と、その匂いは薄い。


 右手を動かそうとする。

 けれど――長年握ってきた剣の感触すら、もうほとんど分からなかった。


 ……ああ。

 これも、握れないのか。


 無理に動かした体が悲鳴を上げる。それでも構わず、腕に力を込めて起き上がろうとした。


 ──駄目だ。


 力が抜ける。

 そのまま地に倒れそうになったときだった。


「……っ!」


 両側から、体を支えられる。


 右には、苦しそうに顔を歪めた友人。

 左には、さっきまで襲われていた少年。


 少年は泣きながら、私にしがみついている。

 ――けれど、その感触すら、もうよく分からない。


 遠くに見える影は、きっと後輩たちだろう。


 思わず、口元が緩んだ。


 ああ――いい気分だ。


 誰も失わなかった。

 仲間も、この少年も、守れた。


 これ以上の結果なんて、ない。


 この歳になっても、力を求め続けたことも。

 自分の理想を追いかけたことも。


 ──間違いじゃなかった。


 そう、思える。


 ……それでも。


 もう少しだけ。

 ほんの少しだけでいい。


 この景色を、見ていたかった。


 こんなふうに願うなんて、初めてかもしれない。


 ああ、神様。


 もう少しだけ、この時間をくれないか。


 けれど――


 瞼が落ちる。


 世界が、静かになっていく。


 ──そして、すべての感覚が消えた。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

次話から物語が動き出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ